ニュースクリップ[-5/24] 「学生募集を停止 松嶺福祉短大」ほか

マイスターです。

さて、日曜日になりましたので、今週も一週間の教育ニュースの中から、いくつかを選んでご紹介します。

今回は、学部の新設や廃止に関する話題が多めです。

【福祉系短大が閉校に。】
■「学生募集を停止 松嶺福祉短大」(東京新聞)

学校法人群馬常磐学園は二十一日、運営する群馬松嶺福祉短大(太田市、園田健司学長)の学生募集を二〇一〇年度から停止すると発表した。介護福祉専攻と児童福祉専攻の在籍者九十一人の卒業とともに一一年三月で閉校する予定。文部科学省によると、他大学への統合などを除き、短大が閉校になるのは県内では初めて。
同短大は一九九九年四月開校。〇八年度までの卒業生は千七十九人で、就職先は社会福祉施設や保育園など。
会見した常見隆・法人理事長は「社会情勢の変化で募集停止のやむなきに至った」と述べ、少子化による進学者数減のほか、介護報酬の引き下げや給与が低いイメージが広まったため福祉分野への希望者が減少したことなどを原因に挙げた。
国は定員50%以下の私立大・短大に補助金を交付していない。同短大は〇八年度、入学者が定員の42%と初めて五割を切り、昨年十二月、介護福祉専攻の定員を八十人から四十人に半減。しかし、本年度入学者は介護福祉専攻が二十二人、児童福祉専攻が十四人で総定員九十人に対し、40%にとどまっていた。
(略)開設に際し、三年間で計約六億三千九百万円の補助金を出した太田市の清水聖義市長は「地域貢献や福祉の人材育成を期待していた。非常に残念」とコメントした。 
(上記記事より)

群馬県にある福祉系の短期大学が、募集停止を決定しました。

入学者が定員の半分を割り、定員を半分にしたところ、さらに入学者がその半分を割り……と、国からの補助金交付も厳しくなってきた中での決断です。
記事では少子化による進学者数減と、福祉分野への希望者減少が理由に挙げられていますが、福祉を学べる四年制大学の増加も、影響したかもしれません。

開設にあたり多額の支出をした市としても、残念な結果でしょう。
ただ、いたずらに四年制大学化するという選択よりも、募集停止の方がダメージが少ないこともあるでしょうし、手を尽くした結果であるなら、この判断を評価する向きもあるかと思います。

【これから設立する新学部の定員を絞る動き。】
■「南九州大:新学部定員80人に減、27日に再申請--都城キャンパス /宮崎」(毎日jp)

南九州大を運営する南九州学園は22日、都城キャンパス(都城市)に来年度設置予定の人間発達学部の定員を当初予定の130人から80人に縮小する方針を明らかにした。学科名も人間発達学科から「子ども教育学科」に変更する。長谷川二郎理事長が市議会大学問題対策特別委で説明した。27日に文部科学省に設置申請する。
定員減の理由について長谷川理事長は「子ども教育学科は(教育分野の)焦点を絞ったため」と説明した。既存学部の最近の厳しい志願状況なども考慮した。
(略)4月開学の都城キャンパスは、人間発達学部の設置が先送りとなったため環境園芸学部だけでスタート。定員130人に109人が入学した。
(上記記事より)

南九州大学は学生募集をしやすくするため、開学後、40年間活動していたた「高鍋町」から「都城市」に移転しているところです。
その際、高鍋町で移転反対の署名集めが行われるなど、大学が地元から去ることを恐れる高鍋町と、移転を歓迎する都城市を巻き込んで、様々な議論や、批判合戦が起こりました。

大学による経済効果は、人口約2万2000人の高鍋町にとっては、大きな収入源でした。
それが失われることは避けたかったのでしょう。

一方、都城市の市長にとっても、大学誘致は最重要公約だったそうです。
南九州大学都城キャンパスが移転したのは、2004年に定員割れで閉鎖された宮崎産業経営大学のキャンパス跡地。市長は初当選した直後から、跡地への大学誘致に奔走していたと聞きます。

結局、南九州大学は、都城市に移転することになったわけですが、結果は上記の通り。
移転後に開設した環境園芸学部は初年度から定員割れしており、続く人間発達学部も、開設前から定員を絞ることとなりました。
このままでは、数年以内に廃校になる可能性も否定できません。

両自治体、および地元政治家の方々の行動も含め、大学経営のあり方について色々と考えさせられるケースです。

【芸術系大学に看護学部。】
■「宝塚造形芸大、看護学部の設置を届け出 」(読売オンライン)

宝塚造形芸術大(兵庫県宝塚市)は21日、看護学部の設置を文部科学省に届け出た。大阪市北区の梅田キャンパスに来年4月、開設される見通し。看護学科のみで定員は1学年100人。芸術系大学が看護学部を置くのは、全国的に珍しいという。
(略)大学側は看護学部新設について「看護には豊かな感性が必要と考えた。芸術系大学独自のカリキュラムを通じて、体も心もケアできる人材を育てたい」としている。
(上記記事より)

現在、様々な大学が医療系、特に看護系の学部を新設しています。
しっかりした内容を備え、医療現場に人材を送り出そうとしている大学もありますが、中には「学生が集まるから」というだけの理由で開設をしているように思われる大学もあるように思われます。

そんな中で、ちょっと変わった事例になりそうなのが、上記の宝塚造形芸術大学。

■「宝塚造形芸術大学 大阪梅田キャンパスに『看護学部』開設予定」(宝塚造形芸術大学)

これまでにもアートセラピーコースを持っていた同大ですが、「看護学部」となると、また違ったカリキュラムや教員の整備が求められることになるでしょう。

大胆な計画ですが、画期的な成功事例になれるでしょうか。
数年後の姿に注目したいと思います。

【教養学部の復権?】
■「香川大、教養学部を新設へ/国立大で3校目」()

香川大(一井真比古学長)は大学改革の柱として、2011年度から教養学部を新設する方針を固めた。「地球市民」の育成を理念に、国際学や語学など幅広い知識と、課題解決に向けた実践力の養成を目指す。教養学部が新設されれば、国立大では東大、埼玉大に次いで3校目となる。
構想によると、教養学部は教養学科の1学科で、地球・環境、言語・地域、心理・人間、ツーリズムの4つの「主専攻」(各40―50単位)の選択制。いずれも地域社会でのフィールドワークを重視し、課題解決に向けた実践力を養う方針。
併せて幅広い知識を備えるため、歴史学や政治学、言語学、芸術・文学など10の「副専攻」(各20単位程度)を設定。学生が主専攻と副専攻2つを組み合わせ、自らカリキュラムをつくるのが特徴という。
(略)香川大は大学改革を進める中で、各方面のニーズを調査。高校生や保護者に実施したアンケートから「国際」「幅広い知識」、企業から「課題解決の能力」とのキーワードが浮かび上がったのを踏まえ、新学部の構想を取りまとめていた。来年5月に、文部科学省に設置認可を申請する。
(上記記事より)

香川大学の「教養学部」。主専攻と副専攻を柔軟に選びながら学べる、流行のリベラルアーツ型カリキュラムが計画されている様子。
かつて全国の国立大学に存在し、その後、次々に消滅していった「教養学部」とは、コンセプトも内容も、異なるものになりそうです。
狭義の専門分野に縛られることなく、広い視野と批判的な思考能力を身につける教育が、戦後の日本の大学には欠けていたように思いますので、個人的にはこうした学部は大事だと考えます。

ちなみに秋田県の国際教養大学は、徹底した英語での専門教育や、「留学必修」などのカリキュラムで、公立大学の中でも注目を集めています。
ただ一方で、「地域に貢献すべき公立大学なのに、地元に定着する学生が少ない」と批判を集めてもいます。

「国際」や「教養」、「リベラルアーツ」と名の付く学部がブームの中、香川大学の新学部には「国際」の文字はありません。
もしかして国際教養大学のような批判を集めることを恐れたのだろうか、なんてちょっと思ったりもします。

【大学生、高校生の就職内定率が悪化。】
■「大学生の就職内定率、9年ぶり悪化 高校生も7年ぶり減」(Asahi.com)

今春卒業した大学生の就職内定率は、前年度を1.2ポイント下回る95.7%で、9年ぶりに悪化に転じたことが22日、厚生労働省と文部科学省の調査でわかった。高校生の就職内定率(厚労省調査)も前年度より1.5ポイント低い95.6%と7年ぶりに減少した。
(略)大学生の内定率は、99年度に過去最低の91.1%となって以来、8年連続で前年度を上回っていた。07年度には過去最高の96.9%を記録したが、今春は一転して悪化し、男子は前年度より0.7ポイント減の95.9%、女子は同1.9ポイント減の95.4%となった。
高校生は求職者数が17万8千人と前年度より3.3%減少したが、求人数は同6.6%減の32万3千人とさらに大きく落ち込んだ。この結果、求人倍率は1.81倍と前年度を0.06ポイント下回った。
(上記記事より)

前年度は、特に後半になってからの「内定取り消し」が問題になりました。
本年度はその影響もあって企業が慎重になっているのか、内定獲得自体が難しくなってきているようです。

これまで9年間、内定率が上がり続けていたということの方が、個人的にはちょっと意外でした。

以上、今週のニュースクリップでした。

今週も一週間、本ブログを読んでくださいまして、ありがとうございました。
来週も、お互いがんばりましょう。

マイスターでした。

※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。