マイスターです。
各所で大きく報じられていました。
今日一番の大学関連ニュースは、やはりこちらでしょう。
【今日の大学関連ニュース】
■「大学合併:上智大と聖母大が協議 11年目指し」(毎日jp)
上智大学を運営する学校法人・上智学院(東京都千代田区)は28日、同じカトリック系の学校法人を母体に持つ聖母大学(新宿区)と11年の合併に向けて協議を始めると発表した。
聖母大は04年に開学した看護師養成の看護学科のみを持つ単科大学。合併に伴って運営母体の「聖母学園」は解散し、看護学科は上智大に継承される。
上智大には外国語学部や理工学部など8学部あるが、医療系学部はなかった。同大企画広報グループは「合併によって、教育研究を一層充実させたい」と話している。
(上記記事より)
2008年には慶應義塾大学と共立薬科大学が合併。
共立薬科大学が、慶應義塾大学薬学部になる形でスタートを切りました。
続いてこの2009年4月には、関西学院大学と聖和大学が合併。
以前から発表されていた合併でしたが、この春、正式に関西学院大学教育学部が誕生しました。
そして今回、上智大学と、看護系単科大学である聖母大学とが、合併に向けて協議を進めていることが公表されました。
注目される合併が続いていますね。
既に両大学のwebサイト、および大学プレスセンターにて、プレスリリースが公開されています。
■「上智学院、聖母学園の学校法人合併に向けた検討の開始について」(上智大学)
■「学校法人上智学院との合併に向けた検討の開始について」(聖母大学)
■「上智学院、聖母学園の学校法人合併に向けた検討の開始について」(大学プレスセンター)
上智学院は、ローマ教皇の意向を受け、1908年(明治41年)に来日した3人のイエズス会員により、1911年(明治44年)に創立され、1913年(大正2年)、専門学校令により東京都千代田区紀尾井町の現在地に上智大学を開校した。
(略)聖母学園(東京都新宿区下落合)は、上智学院と同じローマ・カトリック教会の「マリアの宣教者フランシスコ修道会」により、1948年(昭和23年)4月に聖母厚生女子学院として設立された学校法人で、聖母大学(学部、大学院)及び聖母看護学校を設置している。
(略)このたびの合併は、ともにカトリックの学校法人として、共通するところの多い教育理念に基づき、今後のさらなる教育と研究の充実を図ることを目的としている。
(「上智学院、聖母学園の学校法人合併に向けた検討の開始について」(大学プレスセンター)記事より)
ともに、カトリック系の学校法人だということが強調されています。
大学は、単に事業を行うだけの組織ではありません。それぞれの大学が持つ「理念」によって、その有り様は異なります。
特に私学の場合、建学以来の理念を守ることは、大学の存在意義にも関わる問題。
宗教系の出自を持つ大学なら、なおさらです。
大学のパンフレットやwebサイトを見ていると、大学の理念の説明に、
「○○教の考え方にもとづいた教育を」
……なんて言葉があるのをしばしば見かけますが、宗教系の大学はまさに、その宗教・宗派の教えに基づいた教育を行うために存在しているわけで、理念が重要でないわけがありません。
(ちなみに宗教系の大学では、そこで働く教職員にも、原則として教徒であることを求めているケースがあります)
その点、同じカトリック系の教育理念を持つ大学同士であるということは、合併を前進させるにあたってプラス要素のひとつになったのではと思います。
(関西学院大学と聖和大学も、同じキリスト教・メソジスト派を源流に持つ大学同士でした)
↓キリスト教系のメディアでも、合併が大きく取り上げられていました。
■「上智学院、聖母学園との合併に向けた協議を開始」(クリスチャントゥデイ)
ともにカトリック系の法人。合併が実現すれば、看護学部のない上智大が看護学科を持つ聖母大を吸収するかたちとなる。
上智学院は1911(明治44)年、ローマ教皇の意向を受けて1908(明治41)年に来日した3人のイエズス会員により創立。1913(大正2)年、専門学校令により、東京都千代田区紀尾井町の現在地に上智大学を開校した。現在、8学部と10研究科で約1万1000人の学生を擁する総合大学のほか、上智短期大学(神奈川県秦野市)、上智社会福祉専門学校(東京都千代田区)を運営している。
聖母学園は1948(昭和23)年、上智学院と同じローマ・カトリック教会の「マリアの宣教者フランシスコ修道会」により、聖母厚生女子学院として設立。現在は都内有数の看護教育機関として聖母大学(学部、大学院)、聖母看護大学を運営するほか、系列病院が隣接している。
(上記記事より)
日本におけるキリスト教系の教育を考える上でも、大きな出来事なのかも知れませんね。
上で挙げた3つの合併は、
<ブランド力のある総合大学と、歴史や実績のある単科大学との合併>
……だという点が共通しています。
また学部構成の他、学校法人のレベルでも、お互いに持っていない部分を補い合っているという側面が見受けられます。
医学部や看護医療学部、それに大学病院を持つ慶應義塾大学は、共立薬科大学と合併することで、持っていなかった薬学の教育研究機関を手に入れました。
共立薬科大学にとっても、総合的な医療に関する環境にアクセスできることになったメリットは大きいでしょう。
関西学院大学と聖和大学の場合、合併により、幼稚園から大学院までの一貫教育体制が完成しました。合わせて、関学が元々持っていた中学校教諭、高等学校教諭の教員免許の課程に加えて、小学校教諭、さらに幼稚園教諭、保育士資格の取得が可能となりました。
今回の合併も、お互いにメリットがある合併だというトーンで報じられています。
社会福祉の分野では長い歴史や実績を持っているものの、医療系の専門教育機関を持っていなかった上智大学にとっては、聖母大学のような教育機関には魅力があるのだと思います。
聖母大学の側にとっても、上智大学の教育・研究環境はもちろん、「上智」というブランドの力を得ることができるのは非常に大きなことでしょう。
なお学校法人上智学院は、上智短期大学や、上智社会福祉専門学校を持っています。
一方、学校法人聖母学園は、通信制の聖母看護学校を運営。大学には、聖母病院が隣接し、教育などで連携をしているようです。
こうした部分もバッティングしておらず、むしろお互いにとって価値を高めると見られています。
生き残りをかけ、双方が持っていない要素を得て、より強くなる。
そういった意味では、確かにこうした組み合わせは、お互いに交渉を進めやすいのかもしれません。
■「看護系大学を吸収へ=2011年の合併目指す-上智大」(時事ドットコム)
↑記事によっては、「上智大学が看護系大学を吸収」と表現しているものもありました。
大学のプレスリリースでは、合併や統合など、相互補完をイメージさせる言葉が使われていますが、「吸収」だと判断する人も多いということでしょう。
ちなみに、両大学のキャンパスは↓こちら。
■「上智大学全キャンパスアクセスガイド」(上智大学)
■「交通アクセス」(聖母大学)
現在の上智大学のキャンパスとはちょっと離れていますので、看護系学科で単独のキャンパスということになりますでしょうか。
慶應義塾大学薬学部は現在、「芝共立キャンパス」と呼ばれています。
関西学院大学教育学部は、「西宮聖和キャンパス」。ともに、合併前の大学名を入れています。
かつての学園の歴史に敬意を表し、新しい歴史の中に記憶されるように……といった意味合いがあるのかなと思います。
同じルールでいくと「上智大学 聖母下落合キャンパス」、もしくは「聖母新宿キャンパス」みたいな名称になりますが、さて、生まれ変わるキャンパスは将来、どう呼ばれることになるのでしょうか。
以上、大学合併の話題をご紹介しました。
慶應義塾大学と共立薬科大学が合併したときには、「早稲田はどこと?」みたいな報道が相次ぎましたが、大学同士の合併は、どことでもいいというわけではありません。
前述した理念の話もありますし、これまでの学生や教職員が作ってきた校風もあります。創立以来の歴史もあります。
そういったすべてを背負ってともに歩んでいくというのは、大変な決断だと、個人的には思います。
いわば、大学同士が結婚するようなもの。
今後も、大学同士の合併に関するニュースは続くかと思います。
その都度、おそらく様々なメディアが、様々な報道をするでしょう。
その背景にはそんな関係者達の様々な想いがあるということも、知っておきたいところです。
以上、マイスターでした。
※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。