ニュースクリップ[-4/19] 「東京大:入試制度改革『すぐに検討』…浜田純一・新学長」ほか

マイスターです。

30歳の俳優の方が、この春から大学に入学されるとのことで、コメントが紹介されていました。

4月から国学院大学神道文化学部に通い始めた賀集さんは、学生生活について「すごいハイテク!授業もインターネットで決めるし、出席もカードリーダーだったり」と新生活に満足げ。
「賀集利樹さん、俳優と学生の両立『頑張る』」(日テレNEWS24)上記記事より)

大学業界人にとっては、いまさらどうということはない当たり前の環境。
でも、自分も大学に入学したばかりの頃は、こうした「ちょっとしたハイテク」にどきどきしていたのを思い出して、ちょっと新鮮でした。

さて、日曜日になりましたので、今週も一週間の教育ニュースの中から、いくつかを選んでご紹介します。

【東大が入試改革?】
■「東京大:入試制度改革『すぐに検討』…浜田純一・新学長」(毎日jp)

東京大の第29代学長に1日付で就任した浜田純一氏(59)が17日、東京都文京区の同大学で就任の記者会見を行い、筆記試験で学力を測る入試制度について「公正さという意味では完ぺきだが、優れた人材をすべてすくい取れているのか。今に代わる仕組みがあるのか、すぐに検討を始めたい」と述べ、改革に着手する考えを示した。
(上記記事より)

入試が多様化する昨今。
国立大学でも、AO入試の導入が拡大するなどの動きがあります。

そんな中、東京大学の浜田純一新学長が、記者会見で入試制度改革に言及。
理科三類を除くすべての科類に進学できる後期日程(問題もユニーク)など、実はこれまでにも、率先して改革を行ってきた東京大学ですが、上記の発言には、これまでのような筆記試験主体の入試について再検討するという主旨が含まれており、注目されるところです。

【20年かけて全課程制覇。】
■「放送大教養学部 6専攻すべて卒業  81歳での達成に『自分をほめたい』」(東京新聞)

横浜市磯子区の吉田昭二さん(81)が今春、20年かけて放送大学教養学部の6専攻すべてを卒業する快挙を達成した。81歳での達成は全国4人目で、最高齢記録に並ぶ。吉田さんは「充実した20年だった。自分をほめたい」と話す。
吉田さんは東京大学を卒業後、播磨造船所(現IHI)で設計士として三十五年間働いた。放送大学入学は退職後、市内の高校で数学の講師を務めていた六十一歳の時。妻が見せてくれた大学の新聞広告がきっかけだった。「暇だったから、理系以外の学問も学びたくなった」と振り返る。
二十年の道のりは、決して順調ではなかった。理系教科は得意だが、文系教科では苦戦した。西洋文学の授業では試験に落ち続け、六回目でやっと合格した。二〇〇一年には胃がんで二カ月間入院し、胃を全摘出した。その後も、糖尿病や大腸がんを患った。
支えは大学で出会った仲間だった。定期的に授業の情報を交換し、時には飲みに行くことも。吉田さんは、年下の学生に学習面で頼りにされることも多かった。「皆と勉強するのが楽しかった。一人だったら、嫌になってやめていたかも」
(略)吉田さんは今春、同大の大学院に進学した。「ずっと放送大学と関係を持ち続けたい」。今後も「生涯学習」を貫くつもりだ。
(上記記事より)

技術系出身の方が、20年かけて放送大学・学士課程の全専攻を卒業。快挙です。

吉田さんが卒業されたのは、「生活と福祉」、「発達と教育」、「社会と経済」、「産業と技術」、「人間の探究」、「自然の理解」の6専攻(2009年度からは5専攻に改編)。
各専攻とも、親しみやすい名称がついていますが、難易度は通常の大学と変わりません。
ご興味のある方は、カリキュラムをご覧下さい。
知的好奇心の広さ、深さがなければ、とても制覇は無理だと思います。

生涯学習分野における通信教育の意義を再認識。
そして同時に、通信教育であっても、「一緒に学ぶ仲間」の存在が大事なのだということがわかります。

【普及するか、マイボトル。】
■「京大で『マイボトル』導入実験 ジュース量り売りでエコ推進」(MSN産経ニュース)

ペットボトルを削減し、環境保護に役立てようと、京都大学環境保全センターや京都大学生活協同組合などは、5月7日~6月30日の約2カ月間、学生ら530人規模で、学内でジュース用の「マイボトル」の導入実験を行う。生協2店舗でジュースを量り売りし、普及の可能性などを探る試み。これだけ大がかりにマイボトルの使用実験が行われるのは全国で初めてという。京大では結果を踏まえ、全学的な導入が可能かどうかを検証する。
京大生協では、これまでにもレジ袋削減などエコへの取り組みを進め、成果を挙げている。今回の実験では、生協に商品を納入しているコカ・コーラウエスト(福岡市)の協力を得た。
学生、教職員から530人のモニターを募り、指定のマイボトル(320ミリリットルのカップ)を提供。学内の生協店舗で指定の6種類のジュースを買う際に使ってもらう。生協はジュースを240ミリリットルあたり80円の量り売りで提供する。
(略)同センターは「ペットボトルの使用・廃棄量を減らすことで、資源やエネルギーの消費を削減できる可能性があり、環境負荷の削減効果の検証も行いたい」としている。
(上記記事より)

環境賦課金の導入や、レジ袋削減など、大学全体で環境保全に関する取り組みに力を入れている京都大学が、またユニークな取り組みを始めました。
京大生協が、「マイボトル」持参の学生に、ジュースを量り売りすることで、ペットボトルの削減を狙うとのこと。

昨今ではスターバックスのタンブラーを持ち歩く方も増えていますし、今なら普及しそうな気が。
量り売りですから、購入する量も調節できて便利でしょうし。

(過去の関連記事)
■「大学が進める環境対策」

【学費を「買う」留学生?】
■「中国人が学位買い取り フランスの複数大学で 常態化? 修了証取得100%近い学校も」(西日本新聞)

フランスの複数の大学で中国人留学生が学位を不正に買い取った疑いがあることを15日、フランス高等教育省が明らかにした。不正は大規模で常態化していた恐れもあるとみられ、司法当局も贈収賄や詐欺容疑で捜査に乗り出した。
南仏の国立トゥーロン大の教授が告発し、疑惑が発覚した。告発を詳報したルモンド紙によると、同大の経営管理学院で、4年前から数百人の中国人学生が学士・修士課程の修了証書を1枚2700ユーロ(約35万円)で大学側から「買い取って」きた。
同学院では中国人学生の修士課程修了証書の取得率が100%近くに達し、フランス人を含む他国籍の学生の60‐70%に比べて著しく高かった。一方、昨年秋に入学した中国人学生の大部分はフランス語を話すこともできず、捜査当局は「一部学生は修了証書を買いに来ている」とみている。
トゥーロン大のある教授は「中国人学生はほとんど授業に出ない。彼らは観光客と呼ばれている」と証言しているという。
(上記記事より)

衝撃のニュース。
中国国内で、学生の能力に関する証明書が偽造されていたのでは、という疑惑もあがっているようです。

能力の達しない学生に学位を授与し、しかもそれが数年にわたって発覚しなかったというあたり、フランスの大学側にも色々と問題がありそうです。
この報道では中国人留学生に限定されていますが、組織的かどうかはさておき、他の国の学生にも同じようなことが当てはまる可能性はあります。

かと思うと、↓こんな報道もあります。

【中国発、「過学死」。】
■「過労死ならぬ『過学死』続出、教育制度の徹底改善を呼びかけ―中国」(レコードチャイナ)

中国青年報によると、中国では勉学上の負担が原因で学生が命を落とす「過学死」が深刻視されている。受験のストレスによる自殺や、休息時間を削った無理な勉強などから突然死するケースが続出している。
あるネットユーザーは、ほぼすべての高校で大学進学のための課外補習が行われており、教師の中でも高校教師の忙しさは群を抜き、高校生は最も苦労の多い学生で、高校生活は人生で最悪の記憶でしかないという。
受験や進学、進級に関連する生徒のストレスがきわめて高く、人格や人間性を重視した「素質教育」のモデル校とされる学校ですら、受験対策として1 日に18時間も勉強させるケースもあると報じられた。各メディアも入試に重点を置いた「受験至上主義教育」の終結と教育制度見直しの必要性を主張する報道を度々行っている。
(上記記事より)

「過学死」とは、信じられない言葉です。
ただ、信じられない度合いでは同じくらいの「カローシ」という言葉を世界語にしてしまった日本人としては、笑っていられません。
いずれも、人を死に追いやるほどの社会的なプレッシャーを個人に与える国だという点は同じで、お互いに学ぶところがまだまだありそうです

ところで、日本にもかつて受験競争が極度に過熱化した時代がありました。今後はもう、あのときほどの「受験戦争」はやってこないかもしれません。
ただ、その頃に作られた受験序列が未だに高校生達を振り回しているという点では、実は本質的にはあまり変わっていないのかもしれない、という気もします。
高校生の緊張は緩和されたけれど、「もっと手前」で、さらなる競争が起きているかもしれませんし。

そんな色々を考えさせるニュースです。

以上、今週のニュースクリップでした。

今週も一週間、本ブログを読んでくださいまして、ありがとうございました。
来週も、お互いがんばりましょう。

マイスターでした。

※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。