この4月から、放送大学の授業を2科目、受講しているマイスターです。
通信教育課程の授業を受けるのは初めてなので、非常に新鮮です。
今回は2科目とも、映像ではなくラジオ放送による授業。
夏に試験があるのですが、その日程は既に発表されており、受講生は試験の日の自分の予定を考えながら受講科目を選ぶことが可能です。
社会人も多い放送大学ならではの対応でしょうか。とてもありがたいです。
なおマイスターは科目等履修生ですが、学位取得を目指す方は、放送ではなく実際に対面で授業を受けての単位を、20単位以上修得する必要があります。
その授業の日程も、かなり前から発表されていますし、受講するための学習センターは全国各地にあります。
普段の授業は基本的に通信教育で進めるが、試験などの肝心な部分は対面で行う、というのが放送大学のスタイル。試験まで通信で行うと、不正が容易にできてしまうということでしょう。
ただ、このように全国に学習センターを設置できるのは、放送大学だからこそです。
一般的な大学が設ける通信教育課程の場合は、試験の度に、キャンパスの所在地まで行かなければならず、人によってはこれが、かなりの負担になるはず。
北海道在住の方が、試験の度に首都圏や関西の大学に出かけていくのは、通信とは言ってもやはり大変で、こうなると結局、実質的に「遠方からの受講は難しい」ということになってしまいます。
通信教育には様々な可能性があると思いますが、どうしても対面で行う部分が残る以上、展開にも限界が出てきます。
さて、そんな「限界」をどうにかしようと、独自のシステム開発を進めている大学があります。
【今日の大学関連ニュース】
■「『成り済まし』許さず 福岡・サイバー大学が改善策 顔認証システムを導入」(西日本新聞)
インターネットで全講義を行い、通学せずに学士号を取得できる4年制大学「サイバー大学」(本部・福岡市東区)が本年度、学生の本人確認のため、顔認証システムを本格稼働させる。自宅のパソコンに向かう受講生の顔を小型カメラで撮り、大学側が映像を見て本人を確かめる仕組み。昨年、本人確認を怠ったとして文部科学省から改善指導を受けた同大学は最新のシステムで「学生の成り済まし」を厳しくチェックする。
(略)同大学の職員は、入学式などの際に対面した学生の顔写真を登録する。学生には市販のパソコン用小型カメラ(数千円程度)を各自のパソコンに取り付けてもらう。学生はネットで講義を受けようとする際やリポートの提出時に、自分を撮影。試験中は一定間隔でカメラを稼働させる。
同大学に自動送信された画像は、事前登録された顔写真と照合。目の間の幅などから画像と顔写真の一致率を分析、「他人」と判断された場合は講義画面に接続できず、試験やリポートでは単位を認めない。試験とリポートでは、担当教員も画像を見て「身代わり」がないか調べるという。
(上記記事より)
インターネットを使った「完全通信制」を目指す、サイバー大学。
その特殊な学習システムに、何かと注目が集まります。
すべての学習者にこの仕組みが向いているとは思いません。
が、こういうニーズを持っている人も確かにいるでしょう。
こういう大学が1つくらいあってもいいのでは……と個人的には思います。
ただ、何しろまだできたばかりですので、これから改善していくべき課題も多いようです。
「本人確認」の問題も、そのひとつです。
(過去の関連記事)
■「サイバー大学の単位認定報道 問題は?」
サイバー大学は、「ロケーションフリー」、「タイムフリー」、「エイジフリー」、「バリアフリー」という4つのフリーの実現を掲げています。
したがって放送大学をはじめとする多くの通信教育課程のように、試験の時だけは来なさい、とは言えません。「ぜんぶインターネットで」にこだわっています。
そんなわけで、同大が用意したのが、冒頭の顔認証システム。
記事によると、ソフトバンクが開発したそうです。
2008年夏の学期末試験に導入しており、本年度からは通常の授業やリポート提出時にも運用するとのこと。
本人確認の問題が起きたら、「全部ネットで」という原則を見直そうと考える人だっているでしょう。
それを、理念は崩さず、技術的な方法で解決しようとするあたり、ITに強みを持つグループが設立した大学らしいです。
このシステムの実物をマイスターは見ていないので、正直、これで身代わりを100%防げるかどうかはわかりません。今は完璧に思えても、抜け穴を見つけるひとが出てこないともかぎりませんし。
ただそれでも、少しずつ改善されていくでしょう。取り組み自体は非常に興味深いです。
(それに厳密に言えば、一般的な大学の出席確認やレポート評価にも、残念ながら抜け穴がまったくないとは言い難いです)
誰が見てもまあ問題ないだろう、という完成度のシステムができた際には、他の大学からも発注が来るのではないか、という気すらします。
夜間部(夜学)や、社会人を対象にした専門職大学院など、社会にとっては必要であるにも関わらず、運営コストがかさむために廃止せざるを得ないというコースはあります。
本人認証の仕組みを備えた「完全通信教育」が、そんなスキマを埋める一助になるかもしれません。
大学業界に、ニーズはありそうです。
「他大学の授業をサイバー大学の仕組みの上で運営する」みたいな連携も、アリかもしれません。
放送大学でも同じで、色々な大学が放送大学やサイバー大学のような通信制の教育機関のシステムで一つずつ授業を運営したら、それだけでもかなり贅沢なラインナップになるでしょう。
これなら各大学も、最小限の費用で、通信による授業運営のノウハウを蓄積できます。
システムの維持・開発や、運営スタッフの雇用・育成を各大学が自前でやると、設備投資などにコストがかかります。ですからその部分だけは、仕組みとノウハウを持っている通信制大学に任せ、授業の中身に専念する方が、お互いにとってメリットがあるかもしれません。
色々とややこしい部分もありそうですが、将来的には、そんな連携も面白いかと思いますが、いかがでしょうか。
以上、そんなことを考えたマイスターでした。
※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。