エイプリルフールのネタがきっかけで、大学の環境が改善される

マイスターです。

4月1日は、おなじみエイプリルフール。
昨今では、エイプリルフールにジョークサイトを開設し、話題作りを行う企業が増えているようですね。
結構、どこも本気でやっているので、なかなか面白いです。
(こういうのは、本気でやらないと面白くないですよね)

マイスターも、このブログで虚構記事を出そうかと案をしばし考えましたが、半端にリアルで嘘かどうか微妙だったり、関係各所から怒られそうだったり、しかもあんまり面白くなかったりといった壁にぶつかり、すぐやめました。
面白い嘘をつくのにも、センスが必要です。

さて、もう2年ほど前のことですが、このエイプリルフールに関して、興味深い事例があります。

■「県立大:深夜開放へ うそから出たまこと、学生の願いに知事動く /山梨」(毎日新聞・2007/4/18)

県立大(甲府市飯田、鶴見尚弘学長)は5月の連休明けから、キャンパスのカフェテリアとパソコンコーナーの利用時間を2時間延長し午前0時まで開放する。エープリルフールの1日に、「飯田キャンパス24時間開放へ」の見出しを付けた同大の学生新聞が発行されたことを知った横内正明知事が「学生の要望があるなら」と延長を決めたという。
新聞は「遊刊ケンダイ」と名付け、国際政策学部の学生が作成。A4判4ページで、1面トップにキャンパスの24時間開放を報じた“大特ダネ”記事を掲載。「遅くまでリポート作成ができる」「友人と夜を徹しての議論ができるなどの意義は大きい」と報じたが、解説の覧で「真っ赤なウソ」と種明かし。延長には警備費や電気代などがかかり、「県の予算がないため、時間延長の希望ゼロ」とした。
記事を知った横内知事が「時間延長はできないのか」と同大に協議を呼び掛け、他県の県立大の状況もみて可能と判断、午後10時までだったカフェテリアとパソコンコーナーを午前0時まで開放することが決まった。
(上記記事より)

2007年4月の報道から。
これは、山梨県立大学で実際に起きた出来事です。

この年の4月1日、つまりエイプリルフールに、学生達が学生新聞を発行しました。
そこには、

「新知事の大英断」
「飯田キャンパス24時間開放へ」

……といった見出しが。
山梨県立大学・飯田キャンパスの施設が、24時間利用できるようになるというスクープが大きく掲載されたのです。
でも、実はこれが、エイプリルフールの「嘘記事」でした。

この新聞「遊刊ケンダイ」(既にこの名前が嘘っぽいです)は、国際政策学部・国際コミュニケーション学科の、浜崎紘一教授ゼミの学生達が制作したものです。

当時の飯田キャンパスの閉門時間は、平日は22:00。
キャンパス内でレポートを書いたり、サークル活動などを行っていたりする学生達は、21:30頃から警備員の方々によって追い出されていたそう。
当時の学生の意識調査でも、これを不満に思う学生達が多いという結果が出ていました。

でも、「24時間開放」をはじめ、深夜まで施設を開放する大学の事例も既に全国ではありました。
そこで、なかなか対応を進めない大学(および県)を、ジョークで皮肉りながら批判するという狙いも込めて、この記事は書かれたようです。

浜崎紘一教授は、元新聞記者。
学生達もこの記事を書くため、大学側に色々と取材をされたとのことですから、実践的な学びという意味合いもあったのかもしれません。
単に大学側を批判したり、糾弾したりするよりも、センスが要求される取り組みだと個人的には思います。

しかし、その後の展開は、記事を書いた学生達にも予想できていなかったかもしれません。

以下は、2007年4月17日の、県知事の記者会見でのやりとりです。

■「知事記者会見(平成19年4月17日)」(山梨県)

<発表事項>
○「県立大学飯田キャンパスの開放時間延長について」
(知事)県立大学の飯田キャンパスの開放についてでありますけれども、去る4月1日付けの県立大学の学生新聞にエープリルフール報道として、「飯田キャンパスが24時間開放されることになった」という記事が掲載されたということが、某紙の報道にございました。
このことは、学生の間に大学施設の開放時間の延長を望む声があるということと私どもは受け止めまして、大学と協議を重ねた結果として、そうした学生のニーズを踏まえて、今回、開放時間を2時間延長し、24時までとすることにいたしました。
開放時間を延長するのは、学生から要望のあるカフェテリアとパソコンコーナーといたしまして、5月の連休明けからを予定しております。
なお、教員が研究室を利用するのは24時間、現在でも可能でありますし、教員と一緒に、例えば、ゼミなどで学生が研究室を利用して深夜まで議論をするということは、教員と一緒ならば現在でも可能であります。学生が単独でカフェテリア、パソコンコーナーを利用するのは、夜中の24時まで2時間延長するということであります。
今後とも、教職員や学生の声を聞きながら、開かれた魅力ある大学づくりに努めていただくよう、大学にお願いしたところであります。
<質疑応答>
(記者)24時間開放を求めている声に対しては、さすがに24時間は無理ということでしょうか。
(知事)そういうことですね。24時間ということになりますと、管理そのものが基本的に変わってきまして、夜中は基本的には機械管理になっておりますから、常時監視員を配置しなければならないということになりますと、これは管理としては、新たに人を雇ったり、手間がかかる話になってきます。
他の大学の例も調べましたが、24時間開放している例は少なくて、だいたい夜の10時までとか、長くても夜中の12時までという大学が圧倒的に多いということがありまして、この県立大学についても24時までの開放ということにいたしました。
先ほど言いましたように、教員と一緒にゼミなどで夜遅くまで論議するというのは、教員と一緒であれば現在でも可能であります。
(記者)これは、県民も利用できるということでしょうか。
(知事)県民はどうなのですか。大学に入れるのですか。(私学文書課長に対して) 
(私学文書課長)基本的には学生ですけれども、学生が一緒に他の大学の学生とサークル活動でカフェテリアで論議しているケースもありますから、そういうケースの場合は入っているということもあります。
(記者)それは、一般の方でもいいですか。学生と一緒の一般の方は。
(私学文書課長)基本的には、学生と一般の方が学校の利用目的以外の形で入ってくるということを歓迎するものではありませんから、それはご遠慮していただきたい。学生活動の一環として、他の関係者も必要であれば、一緒になって地域の方々と話し合うことはあるわけですから、そういう場合は、学生ではないからダメだとはいたしませんが、それ以外の方だけで自由に使うということは全く想定しておりません。
(上記ページより。強調部分はマイスターによる)

関係部署の課長さん、こういうときにやはり、横で知事に付き添っているのですね。

この通り、「遊刊ケンダイ」の記事が「学生達の声」として認識され、早期の延長を実現させるに至ったというわけです。
残念ながらこのときには、24時間開放までは認めていただけなかったようですが、それでも、書いた方々は、一定の手応えを得たのではないでしょうか。

一体、どなたがこの「遊刊ケンダイ」を知事の手元に届けたのか、それはわかりません。
「知事、こんなものがありましたよ」と冗談半分で見せたのか、それとも、重要資料として届けたのか。
いずれにしても、ファインプレーでした。

そして、その記事を見て「これは学生からの要望だ」と判断し、すぐに行動に移した知事も、なかなか素敵です。
もちろん、公立大学における自治体首長という位置づけは、ちょっと特殊ですから、「知事だからできた」という部分もあると思います。
でも、同じものを見ても、「へぇ」くらいにしか思わないトップだって、いるでしょう。
学生のジョーク記事を、単なるジョークと思わずに読んだという点だけでも、すごいとマイスターは思います。

以上、エイプリルフールにまつわる、大学の話題でした。

ユーモアを持って大学に環境改善を要求する。
難易度が高い行動ですが、全国の学生の皆さん、もし大学に不満をお持ちでしたら、何かアクションを起こされてみてはいかがでしょうか。
それを、笑わず真剣に聞いてくれる人だって、いると思いますよ。

マイスターでした。

※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。