大学の管理職における、女性職員の比率

マイスターです。

今、様々な大学で教職員の方々に話を伺うと、「女子学生が元気」だとのこと。
ミュージシャンでも、男性が何人かでユニットを組んでいるのに対し、女性は単独で活躍している人が多いような。
企業でも、活躍する女性が増えているようで、あぁ、やっぱり日本全体がそうなんだなぁ、と思います。

■2015年には大学生の7割以上が女性に?

↑以前にも、こんな話題をご紹介しました。
「女性がもっと力を発揮できる社会にすべきだ」……という声をよく聞きますが、そのうち、男性を保護しなければならなくなるんじゃないかなぁ、なんて本気で思ったりする、今日この頃です。

さて、今日はこんな取り組みをご紹介したいと思います。

【今日の大学ニュース】
■「女性職員の比率、京大が目標設定 共同参画推進プラン 京都」(Asahi.com)

京都大(京都府左京区)は11日、09年度から5年間の「男女共同参画推進アクション・プラン」を発表した。19年までに職員の女性比率を5~10ポイント引き上げることを掲げる努力目標を設定。国から今年度までの助成を受け運営している女性研究者支援センターについては、来年度以降も大学が費用を全額負担して継続する。
プランでは、職員の女性比率の目標について、係長級で25%(現在約15%)、課長補佐級で15%(同約6%)、管理職の課長級以上で10%(同約5%)とした。大学の意思決定組織での女性比率を高め、幹部職員は女性職員の昇任に配慮することも掲げた。ただ、教員の女性比率については数値目標を設けなかった。
(上記記事より)

大学にもよると思いますが、おそらく日本全国の大学職員における女性比率は、もともとあまり低くないと思います。
市役所に行くと、窓口の向こう側に、広い年代の女性職員の方々がたくさんいらっしゃいますが、それとそれほど変わらないのでは、というのがマイスター個人の印象です。

この「広い年代」という点が重要で、つまり若い方から、中年の方、ベテランの方まで、けっこう均等に分布しているのですね。
定年退職される方も多く、「女性が多いと言っても、実際には若い人ばっかり」みたいなことはありません。

かつての民間企業では、寿退社が前提の「一般職」として女性を雇用するケースも少なくありませんでした。
ベテランの正社員として定年退職まで勤め上げた女性は、医療機関や出版関係、教育関係など一部の業種を除けばあまり多くないと思いますが、背景にはそんな理由もあるようです。
この点、大学という職場は、企業より先を進んでいたことになると思います。

女性が多い理由は色々でしょう。
市役所と同様、ワークライフバランスが比較的とれている、長く勤められるなどの点が、支持を集めてきたのかもしれません。「教育」や、「学生のサポート」といった業務に魅力を感じる女性が多かったのかもしれません。

いずれにしても、現在に至るまで、女性は非常に多いと思います。
若手の大学職員の勉強会などに参加しても、50人くらいの参加者がいる中で、男女比率は半々くらいですから、今後はもっと、大学という職場に女性が増えると思います。

これは、良いことだと思います。

ただ、「女性管理職」となると、ちょっと事情は違ってきます。
おそらく全体的に、女性の幹部の方はまだ、あまり多くありません。

マイスターが以前勤めていた大学でも、まだあまり女性の管理職はおられませんでした。
今、様々な大学の方々と一緒にお仕事をしても、「男性管理職 + 若い女性の部下の方」という組み合わせには頻繁にお会いしますが、その逆はまずありません。
全体としては女性が多いだけに、ちょっと違和感も覚えます。

ちなみに、大学に限らず、日本全体を見ても女性の管理職は少ないです。

■「男女共同参画白書 平成20年版:第2節 就労の場における女性」(内閣府男女共同参画局)

↑内閣府・男女共同参画局による「男女共同参画白書」によると、「女性の勤続年数は徐々に長期化しているが,管理職に占める女性割合は依然として少ない」とのこと。
現在、以下のような数字になっています。

【役職別 管理職における女性の割合】
民間企業の係長相当:12.5%
民間企業の課長相当:6.5%
民間企業の部長相当:4.1%
「男女共同参画白書 平成20年版:役職別管理職に占める女性割合の推移」(内閣府男女共同参画局)より

部長となると、4%程度にまで落ち込みます。
実際には、業種や企業規模によってかなり事情が異なるでしょうし、母数となる女性スタッフの人数も違うでしょうから、参考程度にするにしても、これは低いです。
社会全体を見ても、女性管理職の割合がかなり低いのが、日本という国の現状です。

もっとも、これには総合職の女性がそもそも少なかったことも影響していると思います。

大学では、正職員の女性が多かったのですから、若干、事情は異なるはず。
女性の正職員が多いのに、女性の管理職が少ないのだとしたら、そこには何か理由があるのでしょう。

ちなみに、今回の報道で京都大学が目指している水準は、以下の通り。

【役職別 京都大学が努力目標として設定する、管理職における女性の割合】
係長級:25%(現在約15%)
課長級:15%(現在約6%)
部長級:10%(現在約5%)
■「女性職員の比率、京大が目標設定 共同参画推進プラン 京都」(Asahi.com)より。

これだけ見ると、民間企業よりも頑張っているように思われますが、そもそもの女性の数も違いますし、単純な比較はできません。

でも、このように具体的な数字を挙げて対策に取り組むというのは、悪いことではないように思います。
一種のポジティブ・アクション(またはアファーマティブ・アクション)ですから、批判もあるかもしれませんが、長期的に見れば人材の多様化、優秀なスタッフの採用、労働環境の改善など、様々な点で良い結果をもたらすのではと思います。

ちなみに記事では、

教員の女性比率については数値目標を設けなかった。
「女性職員の比率、京大が目標設定 共同参画推進プラン 京都」(Asahi.com)記事より)

……とありますが、職員で数字まで挙げて実践することを、なぜ教員で行わないのかは、ちょっと不思議です。
↓こんな状況なのですから、本当は教員の方にこそ、踏み込んだ対策が必要だと思うのですが。

■「男女共同参画白書 平成20年版:研究者に占める女性割合の国際比較」(内閣府男女共同参画局)

ところで、これは余談ですが。

大学で働いていたときに、ちょっと不思議に思ったことがあります。

大学教員の方々にとって、身近な職員と言えば、やはり研究棟などの管理を行っている、「おばちゃん」と呼ばれる方々でしょう。

教員の方々宛の郵便物などを預かったり、お客様にお茶をお出ししたり。
共同研究室の管理や、学部・学科単位の事務作業を管理したり。

教員の方々にとっては、何かとお世話になる存在で、

「○○さんには頭が上がらない」

……なんて語る方も、少なくありません。
(大学教員の方のブログにも、しばしば出てきます)

ベテラン故、誰よりも学内の手続きや、情報のありかに通じていたりして、まさに頼れる「おばちゃん」です。

でも。

よくよく考えてみると、どうして、「おじちゃん」ではないのでしょうか。
教員の方々の周囲で、研究室業務などをサポートする部署では、なんだか妙に女性職員の存在が目立つような気がしませんか。

大学によっても違うと思いますが、こういった方々の多くは、実は派遣社員やパートさんなどではなく、正職員です。
ですから、他の職員同様、数年おきのローテーションによって部署を移る方々。
だとすると、理屈の上では、男女比率は他の部署と同じになるはずです。

にも関わらず、学部事務室や学科事務室、研究棟の管理といった職務には、なぜだか、女性職員が比較的多めに配属される傾向にあるような。

こうした部署の方は、教員にとってはある意味、「秘書」の役割を果たすと言えるかもしれません。
でも、秘書=女性というルールは別にありませんし、第一、「学部事務室のスタッフは女性でなければならない」なんて明文化して決めている大学があるとも思えません。

もちろん、大学によってこの辺りの事情は違うでしょうし、男性の職員の方もいないわけではないと思うのですが……これは一体、何でしょう? 業界の慣習とか?

どなたか、誰もが納得できるような理由をご存じの方がいらしたら、教えてください。
こういった、「明文化されない役割分担」の存在も、女性管理職が少ない理由と同様、考え出すと結構やっかいなテーマなのではないか、という気が個人的にはするのです。

以上、マイスターでした。

※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。