高校生の周りにある「進路選択のための情報」は偏っている?

マイスターです。

■高校の教員が「進路指導」で抱いている悩み

↑先日の記事では、リクルート社が実施したアンケート調査の結果をご紹介しながら、

「一人ひとりに対し、本当の意味での進路指導を十分に行うのは、多くの高校の現場では、難しい」

……という個人的な意見を、書かせていただきました。

■「高校の進路指導に関する調査 [PDF document 315Kb]」(リクルート)

この調査結果に関して、もうひとつだけ。

【先生が進路指導を行ううえで、生徒にどのようなことを伝えることが多いですか】
・将来のことや職業のことを考えなさい:78.5%(98.8%)
・自分のやりたいこと・向いていることを探しなさい:67.7%(95.8%)
・自分の進路なのだから自分の責任で決めなさい:35.3%(85.7%)
・専門学校よりも大学に行った方が良い:20.7%(61.0%)
・私立よりも国公立の学校に進学した方が良い:15.5%(58.2%)
・少しでも偏差値の高い大学に入れるよう努力すべきだ:8.7%(50.2%)
・やはり日本では学歴がものをいう:5.1%(47.8%)
・将来のことは進学してから考えなさい:2.0%(20.0%)
※赤数字は、「常日頃そのように指導している」と回答した回答者の割合
※( )内の数字は、上記に「口にすることもある程度」という回答の数字を足したもの。

「高校の進路指導に関する調査 [PDF document 315Kb]」(リクルート)より)

メディアではあまり取り上げられていないのですが、リクルート社が行った調査には、上記のような質問項目もあります。
リンク元のPDFでは、見やすくグラフにまとめられていますので、よろしければぜひ、そちらをご覧下さい。

「先生が進路指導を行ううえで、生徒にどのようなことを伝えることが多いですか」という設問。
上記のような質問項目を挙げ、それぞれに対して

「常日頃そのように指導している」
「口にすることもある程度」
「ほとんどそのようなことは指導していない」
(無回答)

……の4つの回答がどのように寄せられたかを示したものです。
集計結果を見てみると、

「将来のことや職業のことを考えなさい」
「自分のやりたいこと・向いていることを探しなさい」

といった項目が上位に来ていて、ほっとします。
進路指導で、一番優先されているのは、こういったものなのですね。

一方、

「私立よりも国公立の学校に進学した方が良い」
「少しでも偏差値の高い大学に入れるよう努力すべきだ」
「やはり日本では学歴がものをいう」

……といった項目について、「常日頃そのように指導している」と回答した教員の割合は、そう高くありません。
それでも、「口にすることもある」を含めると、実に半数近く、あるいはそれ以上の教員が指導の場で生徒に伝えていることになります。

しかし、ここで思うことが。

「将来のことや職業のことを考えなさい」や、「自分のやりたいこと・向いていることを探しなさい」といった指導は、これだけでは、非常に漠然としています。

こう言われてすぐに、これにもとづいた大学選びを、生徒はひとりで実現できるものでしょうか。

こうした指導を行うには、

・大学の学びの内容
・大学の学びと、その先の職業との関わり
・社会の現状

……といったことに関する情報や知識、あるいは体験を、ある程度、生徒の側が持っておく必要があるように思います。
一度も大学の教員の講義を受けたことがない、あるいはシラバスも見たことがないというのに、やりたいことを探す大学選びをしろと言われても、生徒の側にとっては、難しいでしょう。

たまたま身近にロールモデルとなる大人や先輩がいれば、その分野についてはイメージも持てるかもしれません(実際、理系の女性研究者などによる講座などを行い、女子生徒に理系進学のイメージを持ってもらうような取り組みも、様々なところで行われています)。
しかし現実的には、そういう機会に接することができるケースばかりではありません。

(大学が実施するオープンキャンパスの模擬講義などは、かなり最近は充実してきていますので、使い方次第では役立ちそう。ただ、大学情報ゼロの生徒が進路選択のきっかけにするには、難しい面も少なくありません)

前回の記事でもご紹介したように、高校教員の方々は、実は大学で行われている教育や研究のことを、あまねく網羅されているわけではありません。

したがって、ご自身の専攻分野を中心に、ある程度の大枠は伝えることができても、

「将来のことや職業のことを考えなさい」
「自分のやりたいこと・向いていることを探しなさい」

……といった指導を、実際に一人ひとりに展開することは難しいと思います。

もちろん中には独力で、あるいは教員の優れたガイドによって、自ら行動を起こし、様々な取り組みにチャレンジしたり、大学とコミュニケーションして情報を集めたりしながら、進路を具体的にしていける生徒もいるでしょう。

ただ、何度も言うように、多くの高校においては、これを全生徒に行うのは難しいです。
そして日本の場合、大学の学びに関する具体的な情報が高校の中には乏しく、アメリカのようなカウンセラーもいません。

「将来のことや職業のことを考えなさい」や、「自分のやりたいこと・向いていることを探しなさい」といった言葉と、受験を念頭に置いた実際の大学選びとを、具体的に橋渡ししてあげる人が不在になってしまいがちなのだと思います。

その一方で、「私立よりも国公立」や、「少しでも偏差値の高い大学に」といった指導は、かなり具体的。
高校生にも、あるいは保護者にも、すぐにイメージできます。

それに、これらの指導に具体性を持たせる仕掛けも、高校内のいたるところに存在しています。
「どういった大学が望ましいか」という情報が、予備校による模試の偏差値ランキング表の形で、校内の廊下に貼られていたりします。
あるいは、生徒全員に、冊子などの形で配付されていたりもします。
先に合格した先輩達の名前が、大学の偏差値順にそれとなく並んでレイアウトされていたりもします。

自分が何に関心を持っているかも、それがどの大学のどういった分野での学びに繋がるのかも、わからずに受験に突入する生徒が、日本では少なくないようです。
でもその一方で、大学の偏差値難易度的な序列などには、かなり早いうちからイメージを持っています。

上記に挙げたような、高校生を取り巻く情報の環境にも、その原因があるのではないでしょうか。
少なくとも、彼らを偏差値などでの大学選びに誘導してしまっている要素の一つなのではないかと、マイスターは思うのです。

もちろん、それだけが、日本の偏差値ランキング的な進路選びの原因だとは思いません。
しかし、彼らの周りが今とは違う、学びのわくわく感を伝えるような情報で充ち満ちていたら、事態はもう少し違っているような気がするのは、マイスターだけでしょうか。

昨日の記事でご紹介しましたが、【進路指導の難しさの要因】として、高校の教員が、「(生徒の)進路選択・決定能力の不足」を理由のトップにあげていたことを思い出してください。
進路選択ができないのは、生徒だけの責任でしょうか。マイスターはそうは思いません。

考えて、最終的に決めるのはもちろん生徒ですが、そうやって考えるための前提となる、様々な環境や機会を作り出すのは、大人達の責任だと思うのです。
そういった情報のひとつひとつから、出会いの機会、様々な取り組みに飛び込むチャンスが子供達の周りにないことが、日本の教育の、最大の問題の一つだと思います。

では、どうすればいいでしょうか。

昨今では、大学は様々な方法で、大学の教員を身近に感じられるような場を提供してきています。
研究者を高校の教室に派遣する取り組み。それにオープンキャンパスでの講義・実習やゼミ体験など、生徒がその気になれば、アクセスできる機会はたくさんあります。

ただ、そういった大学側のアプローチが、高校現場での具体的な進路指導とつながっていないケースも多いことでしょう。
出張授業で教員が自分の専門を語ってくるだけではなく、「大学の学び」について考えるきっかけになるような仕掛けをつくることを目的すると、教員派遣の仕方も、もう少し変わってくるかもしれません。

(たまにこのブログでご紹介させていただいているように)早稲田塾でも、様々な出会いの機会を作っています。
毎月のように、校舎で教授にご専門の話をしていただいたり、あるいは逆に高校生達を大学に連れて行ったりしています。

各地で行われている高大連携の取り組みも良いのですが、その高校の生徒しか参加できないという大きな弱点もあります。参加の機会が最初からかなり制限されているのですね。
その点では、どの高校・大学からも均等に距離を置いた民間教育機関だからこそ、たくさんの種類の「出会い」を、多くの高校生達にあまねく提供できることもあるのかなと思います。

他にも様々な「出会い」のあり方を考え、実際に様々な大学と実践していますが、それらをご紹介していると、とてもここには入り切りませんので、止めておきます。

(ご興味のある方は、メールなどでお問い合わせ下さい。マイスターなどのスタッフがお伺いします。
何かできることを形にしていきましょう)

長くなってきましたので、このくらいにしたいと思いますが、
上記の他にも大学側が本気で乗り出せば、できることは結構あるのではないかと思います。

このブログでも、大学や高校の皆様と一緒に、そんなことを考えていきたいと思います。

以上、調査の報道を見て、そんなことを改めて思ったマイスターでした。

※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。

2 件のコメント

  • 経済危機+団塊世代教員の退職→安定的職業で、仕事もありそう→今年は教員養成系に人気!(大学受験ご意見番分析) このような選択を鵜呑みにして教員になったものが、どんな進路指導をするのでしょうか?個人の知識・経験には限りがあります。高校の先生方、所詮「塾」がやっていることだから、と言わず、高校でやりたくても出来ないのであれば早稲田塾さんに任せたらいかがですか?    

  • いつも楽しく拝見しています。
    日頃高校の先生と話す機会がないので、リクルートの調査結果はとても興味深かったです。
    自分のブログにも感想を書いたのですが、高校段階であまり将来に捉われすぎるのは一方で危うさを感じます。例えばリベラルアーツ教育では将来の職業像を描きづらいはずですが、その辺りをどう進路指導では伝えているのかが気になるところです。