新潟大学 ポストドクターをインターンシップで派遣する取り組み

マイスターです。

ポストドクターという人材を、社会でどう活かしていくか。
これは日本の、大きな課題です。

博士人材を活かせない企業。
企業というキャリアを積極的に選ぼうとしない博士。
この二つをうまく結びつけられない大学、そして社会。
おそらく、いずれにもそれなりの言い分と、改善できる点があることでしょう。

さて、そんな現状の改善に、大学として乗り出したところがあります。

【今日の大学関連ニュース】
■「企業に博士派遣、新大が新事業」(新潟日報)

大学院の博士課程を修了したものの、研究者としての定職に就けない「ポストドクター」に地元企業で活躍してもらおうと、新潟大学は高学歴者のインターンシップ(就業体験)事業に乗り出した。同大で任期付き研究員として働く該当者3人を、来月上旬まで4週間の日程で新潟市などの製造業者に派遣。16日には地元企業の理解促進のためのシンポジウムを同市で開く。
国が1991年に始めた大学院生の倍増計画をきっかけに、同大でも自然科学系(理、工、農学)の博士課程修了者が91年度の約30人から2007年度には69人に増加。このうち例年十人前後が大学や民間研究機関の研究者ポストが空くのを待ちながら、短期の研究員や大学の非常勤職員として働いている。
高学歴インターンシップは、こうした人の目を研究職以外にも向けると同時に、企業側にも高度な知識を持つ「即戦力」としての存在を知ってもらうのが狙い。同大地域共同研究センターを中心に、行政や県内製造業者らが1月に設立した協議会が運営主体となり、経済産業省の補助金も活用する。
受け入れ企業の負担を減らすため、派遣される該当者が取り組む部品設計やプログラム作成などのカリキュラムは大学側が準備。企業秘密の保持に関する契約もあらかじめ交わした。
(上記記事より)

新潟大学の取り組みです。

この不況下で就職が厳しくなっているとは言え、いや、だからこそ企業は、限りある採用枠で優秀な学生を採りたいという思いを持っています。

大学院にもなると、研究活動を通じて、プロジェクトマネジメントや、様々なプレゼンテーションスキルなどを学ぶ機会も、本人次第で結構得られます。うまくすれば、企業が求める幹部候補生、あるいは現場の即戦力になれる可能性だってあるのです。
様々な問題に悩む日本を救う人材が、ポスドクの中にはたくさん埋もれていると思われます。

ただ、企業が求める職種や働き方と、本人が求めるそれとがズレていては、お見合いはうまくいきません。うまく両者をマッチングさせる役割を、誰かが担わなければ、先には進めません。

上記のニュースは、大学として、そうした事業を立ち上げようという試みです。

上記の記事では、まず新潟大学で任期付き研究員として働く該当者3人を、4週間の日程で送り出すとあります。
4週間というと、実質的には20日程度ですから、企業にとっても派遣される本人にとっても、「お試し」という感じになるでしょうか。

なかなか、いい制度だと思います。

プロジェクトの運営など、中長期的な取り組みにはあまり関われないかもしれませんが、分析力や構想力、構築力など、「普通の学部卒人材とは異なる」部分を発揮する場面は、そこかしこで得られるかも、という長さです。
もともとそうした人材を探していた会社なら、気軽に申請できる使用期間があるのだと考えると、ありがたいかもしれませんね。

「意外に使えるじゃないか!」
「さすが優秀だなぁ」

……か、あるいは、

「うーん、やっぱりうちで使うのはちょっと難しいなぁ」
「やっぱり本人は研究者になりたいんだろう、うちで本気で働き続ける気はないんじゃないか」

……なのか。
企業のベテランなら、このどちらであるかを4週間で見抜くことは、さほど難しくないと思います。

個人的には、大学院卒人材の真価がわかりやすく発揮されるのは、大きな視野で問題の根本を発見したり、既存の問題を分析したり、それに全体のストーリーを組み立てたりする部分だと思います。
なぜなら、研究を通じてそうした訓練を受けているから。
そうした人材を求める企業なら、きっとこの制度を活用できると思います。

逆に、学生の側がその企業の真価を理解する期間としては、4週間は短いかもしれません。
でも、こうしていくつかの企業をまわっていれば、見えてくるものがあるでしょうし、結果的に就職せず研究者になったとしても、大いに役立つ体験になると思います。

インターンシップの後、「こんな人材が欲しい!」と思えば企業は採用するでしょう。
やっかいなのは「まだ本人の適性がわからないから、もうちょっとインターンシップを継続して欲しい」というケース。
あんまりだらだら続けていると、一歩間違えれば、便利な派遣社員状態になりかねません。
その辺りの流れを、これから様々なケースを通じて磨き上げていく必要がありそうです。

こういった仕組みがあることを前提にすると、キャリアセンターのサポートの仕方も、ちょっと違ってくるかもしれませんね。
「インターンシップの前に身につけておくべきこと」みたいな講座が好評を博すかも。

ちなみに昨今では、民間企業の中にも、そうした市場の創造を担おうという会社が出てきています。

(例)
■「大学院生,ポストドクター,院卒社会人専門の就職紹介サービス 株式会社DFS」

自前で事業を立ち上げるのが難しい大学は、こうした企業と連携しても良いかもしれません。
大学が行う部分と、学外の組織に任せる部分で、役割分担できることもあるでしょう。

社会の中で眠っている人材を活かすために、大学ができることはたくさんありそうです。

以上、マイスターでした。

※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。

1 個のコメント

  • ポストドクターなどという変な和製英語を文部科学省やマスコミが平気で使っているうちはポスドク問題は解決しないと思います。