群馬県教育委員会 県内の公立高校に対し異例の通知

マイスターです。

ちょっと珍しい報道を見つけましたので、ご紹介したいと思います。

【今日の大学関連ニュース】
■「創造学園大:教職員給与遅配 進学『慎重に』 県教委、全公立高に文書 /群馬」(毎日jp)

創造学園大学(堀越哲二学長)で教職員への給与が遅配した問題で、県教委が「入学させないように」と指導する文書を県内の全公立高校長あてに出していることが、3日分かった。同大学を運営する学校法人堀越学園(高崎市)は撤回を申し入れている。
文書は1月30日付の県教委高校教育課長名で「合格者の手続きについては慎重に対応するとともに、他校への進学等についても検討するよう指導願います」としている。同課は「文書は、文部科学省が調査したとの報道があり、同法人の運営する学校への進学状況を把握するために出した。生徒が困ることがないようにという立場で、校長が指導してほしいという趣旨だ」としている。
(上記記事より。強調部分はマイスターによる)

■「群馬県教委『他校への進学』検討を要請 堀越学園立ち入り検査」(MSN産経ニュース)

創造学園大(群馬県吉井町)などを運営する学校法人「堀越学園」(同県高崎市)が先月29日、文部科学省の立ち入り調査を受けた問題で、群馬県教育委員会が県内の公立高に対し、同大学などへの合格者に他校への進学も検討するよう指導することを求める通知を送付し、同学園から抗議を受けていたことが3日、分かった。県教委は同日、「表現に配慮が足りない部分があった」として、通知の再送付を行った。
県教委高校教育課によると、通知が出されたのは先月30日。県内の全公立高に対し、同学園関連の合格者などの実態調査を求める文章を送付したが、その際、学園が厳しい財政状況にある可能性も踏まえ、「他校への進学などについても検討するよう指導願います」などと通知した。
同学園には多数の問い合わせが寄せられ、学園関係者が2日、県教委を訪れ、抗議。通知が営業妨害にあたるなどとし、撤回と謝罪を求めた。
県教委にも高校側から不安を訴える問い合わせが寄せられたため、同課は3日、「通知が誤解を招く恐れがある」と判断。「生徒指導上の参考にするのが目的。これ以外の趣旨を含む文章ではない」などとする通知を、全公立高に再送付した。
同課は「営業妨害の意図はみじんもない。ただ、所管も違うため、通知は学園と相談するものではない」と強調。「通知の表現に反省する部分もあるが、県教委も多くの生徒をお預かりしている。生徒の将来に影響を及ぼさないため、指導体制を整えるのが目的だった」と説明している。

(上記記事より。強調部分はマイスターによる)

心配はわからないでもありません。
教育委員会の方々は、色々と思いを巡らせた上で通知を出したのだと思います。

ただ、県の教育委員会という公的な機関が、公的なルートでこういったことをするのはやはり適切ではないでしょう。メディアなどの民間企業、あるいは個人が発信する情報とは、意味がまったく異なるのですから。

「営業妨害の意図はみじんもない」と教委は主張されていますが、教育委員会からこんな文書が来たら、大学にとって甚大な影響を与えるのは誰にだって想像できるはず。
意図があるかどうかはさておき、結果的には、進路指導の現場に、「あの学園は危ない」というイメージが少なからず行き渡ってしまったのではと思います。

「表現に配慮が足りない部分があった」
「所管も違うため、通知は学園と相談するものではない」

……と、群馬県教育委員会の高校教育課は主張しているようですが、表現ではなく通知の行為そのものに問題があるのですから、これは適切な説明ではないように感じます。
「所管が違う」というのも、教育委員会の中でしか通じないでしょう(とういか、所管が違うのなら、所管する部署に相談すれば良かったのに)。

公的な発信をした手前、県教委の側は引っ込みがつかないのかもしれませんが、個人的には不適切な通知であったと思います。

学園側は、

遅配した給料も支払った。県には事情を説明してきたが、文書を出すための調査も、相談もなかった。教職員に迷惑を掛けているが、学生に影響が出ているわけでもないのに、これでは学生が激減してしまう。
「創造学園大:教職員給与遅配 進学『慎重に』 県教委、全公立高に文書 /群馬」(毎日jp)記事より)

……とコメントしています。
県教委の通知が、学園の再起を妨げる大きな障壁となってしまいました。

ところで、教育委員会という組織が行うには問題があると思われますが、学校単位、あるいは民間企業などの間では、こういった情報の共有は今後、より頻繁に行われるようになるのかな、とマイスターは思います。

近年、メディアは大学の経営問題を大きく報じています。
資産運用で大きな損失を計上したとか、定員割れが続いているとかいった情報は、当然、進路指導の現場にいる方々も気にされているでしょう。

たとえ実際にはそこまで危機的な状況でなかったとしても、リスクがあるような印象を受けたり、ネガティブな情報が噂・口コミのレベルで流通したりするということは考えられます。
そういった情報への不安感が、学校としての進路指導方針に影響を与えることだって、起こらないとは限りません。

その際、大学として明確なコメントを出す、あるいは「実際のところ、どうなのか」という情報を公開するといった行動を起こすことは、大事です。
きちんと反論できる材料をwebサイトその他で公開し、スキのない姿勢を取っている限り、少なくともメディアはおかしな報道はしません。

大学側が、情報公開をしっかり進めることも大事なのかなと思います。

以上、マイスターでした。

※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。