高校生の「数学力」、30年前とほぼ同じ?

マイスターです。

小学校から大学まで、日本では「学力低下」という言葉が流行っているようです。

引き合いに出されるのは、PISAに参加した他国の子達であったり、数年~数十年前の日本人だったりと、様々。
「学力」という部分も、国際的に行われたテストの成績だったり、国内の調査結果だったり。学力だけではなく、「学習時間が減った」なんて比較もありますね。

さてそんな中、ちょっと珍しい(?)記事を見つけました。

【今日の大学関連ニュース】
■「日本の理系高校生 『数学力』30年前とほぼ同じ」(Asahi.com)

生徒の理系離れや国の科学技術力の低下が心配されているが、理系コースの高校3年生の基礎的な「数学力」は、世界トップクラスだった約30年前とそれほど変わっていないことが、東京理科大数学教育研究所の大規模調査でわかった。24日、同大学で開かれた数学教育研究会で報告した。
ただし、調査した05~08年度の4年間で正答率がやや下がり気味なことや、記述式の問題を苦手とする傾向があることから、将来の数学力低下を心配する声もある。
調査対象は「数学III」「数学C」を履修している理系コースの高校3年生。05~08年度に延べ214校の約1万5500人にテストをしてもらい、日本が香港に次ぐ世界2位の成績だった1980年度のSIMS(第2回国際数学教育調査)の結果と比べた。
08年度のテストは1セット11問を4セット(計44問)つくり、このうち32問は80年度SIMSの問題から選んだ。
その結果、共通問題で今回の方が正答率が高かったのは19問、SIMSの方が高かったのは3問。05~07年度も同じ傾向で、「30年前の高校3年生に比べて成績は劣っていない」と結論づけた。
(上記記事より)

ダメだダメだと言っているニュースが多い中で、ちょっと新鮮な打ち出し。
理系離れだ学力低下だと騒がれている中、「実際には、基礎的な数学力はあんまり変わっていませんよ」と言っているだけでも、十分に意外性のある内容です。

ただ、よく読んでみると、

しかし、08年度で正答率が80%以上だったのは、いずれも選択式で、記述式の成績の方が全体的に悪かった。
また、4年続けて同じ問題を出した15校で年ごとの成績を比べたら、その正答率は05年度57.4%、06年度58.6%、07年度54.1%、08年度52.4%と低下傾向だった。
(上記記事より)

……と、やっぱりオチがついている辺り、罪な感じですけれど。
選択式の正答率は上がったが、記述式の正答率は下がった。
これは、ちょっとというか、かなり心配です。

ただ、こうした話は、普段からもよく耳にします。
試験などで、記述式の問題を空白にする生徒が非常に多いのだとか。
誤答というのではなく、そもそも記述・論述の問題に「手をつけていない」のですね。
これは数学に限らず、国語や英語をはじめ、すべての教科に見られる現象だそうです。

単純な点数の上下や、PISAの順位云々よりも深刻に考えて良い部分だと個人的には思います。

ところで話はかわりますが、こういった学力に関する話を聞くたびに、いつも思い出す話があります。
うろ覚えなのですが、おおむね、以下のような内容でした。

日本の子供の学力は世界トップクラスだ、ともてはやされていた30年ほど前。
日本と韓国から、それぞれの国を代表する成績優秀な子供達が集められ、交流を行う機会があった。
抜群の学力を持った日本の子供達に、韓国側で引率を務めた教授は舌を巻き、さすが日本だ、わが国はまだまだだと褒め称えた。
そしてプログラムの後、親睦を兼ねて工場や企業などを見学するツアーを行った。
すると、両国の子供達の様子は逆転した。
韓国の子供達は行く先々で、みな疑問に思う点を積極的に質問し、現地の大人達と意見交換をしていた。
一方、日本の子供達は押し黙り、ただただ大人の後を着いてくるだけだった。
見学ツアーが終わった後、別れの際、子供達の様子を見ていた韓国側の教授は「希望が持てました」と笑顔で言った。
日本側の教授は、「将来は、日韓の立場が逆転するに違いない」と、大変な危機感を抱いた……。

以上、うろ覚えなので細部は怪しいですが、おそらく大筋は違っていません。
(正しい元ネタを知っている、という方がいたら、教えてください)

ゆとり教育の見直しをはじめ、学力に関する話題を聞く度、いつも思い出す話です。
これ、なんだか非常に考えさせられる話だとマイスターは思うのですが、いかがでしょうか。

以上、とりとめのない内容ですみませんが、そんなことを考えながら記事を読んだマイスターなのでした。

※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。