年末年始には、必ず体調を崩すマイスターです。
せっかくのお正月なのに、おなかを壊しておかゆ生活。
今年もずっと寝込んでいます。
受験生の皆さん、くれぐれも体調にはご注意ください。
そんなわけで、ほとんど見られなかった箱根駅伝。
結果だけ後で知りました。東洋大学の皆さん、往路優勝、おめでとうございます。
他のチームの皆様も、おつかれさまでした。復路の皆さんも、がんばってください。
箱根駅伝は、母校のチームが走ることになっていたりすると、3倍楽しめます。
大学業界で働いていたりすると、色々な大学のことを知っていることもあり、さらに楽しめます。
一般的には選手の力走ぶりや、一丸となってタスキをつなぐチーム戦の様子などが魅力と思われるこの番組ですが、大学運営側の視点になって見ると、より色々なところを考えることができます。
「何もわざわざ真冬に走らせることはないのでは」とか、
「この競技のために強化選手を呼び寄せているのでは。大学スポーツの精神に合致するのか」とか、
色々と批判も聞かれます。
(実際、この2つの批判については、マイスターもちょっと同じように思います)
ただ毎年この番組が、多くの方々に支持されているのも事実。
■「東京箱根間往復大学駅伝競走(日本テレビ)歴代視聴率 【関東地区】」(ビデオリサーチ)
↑ビデオリサーチ社は、毎年の箱根駅伝の視聴率調査の結果を公表しているのですが(2009年1月2日現在では、2008年度の結果が最新)、これを見ると、視聴率が高水準で安定しているのがわかります。
視聴者も楽しみにしている上、テレビ局にとっても胸を張って広告枠を売れるという、貴重な番組のひとつなのです。
おそらく正月という放送日の設定も、大いにこの視聴率に関係しているのでしょう。もし箱根駅伝が「体育の日」あたりに放映されていたら、ここまでの視聴率が出るかどうか。
いずれにしても国民的な人気イベントであることは間違いありません。
レースそのものもさることながら、演出的にも上手いです。
「予選会」や「シード権」など、最後まで視聴者を飽きさせないシステムは、企画として見事。
大学のアイデンティティそのものであるタスキをつないでいくビジュアルも、レース中に連呼される大学名も、見る側を盛り上げます。
「関東の大学しか出られない」という大きな弱点はあるものの、それがかえって、ほどよく強豪と新顔のバランスを保っているんじゃないかという気もします。
マイスターも、いち視聴者として、楽しませていただいております。
タスキをつなぐために走る若者は、やはり応援したくなるもの。力走したランナーには拍手を送りますし、肉離れなどの予期せぬアクシデントに見舞われ、涙ながらにタスキをつなごうとする姿に、目頭を熱くすることもしばしばです。
率直に言って、毎年とっても楽しみにしています。
ただ同時に、この人気ぶりが結果として、大学スポーツの中でも箱根駅伝を「ちょっと特殊な」位置づけにしてしまっているのかな……という気もしないでもありません。
大学にとって、箱根駅伝の広報効果は、あまりにも大きいです。
たとえば箱根駅伝を通じて名前を知った大学って、皆様にもあるのではないでしょうか?
あるいは、「紫紺のタスキ」と聞いて明治大学がアタマに浮かんだり、白地に赤い「C」の文字を見て即座に中央大学だとわかったりしませんか?
箱根駅伝では、アナウンサーが「紫紺のタスキ」みたいな表現をよく使いますが、こうしたフレーズを繰り返し耳にしているうちに、自然と各校のデザインが頭に刷り込まれると思います。
ユニフォームのデザインも同様で、レースを見ている間、視聴者は「ユニフォームとたすき」で選手達を区別していますから、嫌でも自然に覚えます。
企業のブランディング戦略で使われる「CI(Corporate Identity)」の大学版として、「UI(University Identity)」という言葉がありますが、まさに箱根駅伝は、UI戦略実践の最前線なのです。
ちなみに箱根駅伝に参加するには、とにかくお金がかかります。
箱根駅伝コースの沿道に、ノボリがたくさん立っていますね。
あれは、大学の費用で用意しています。
また、沿道では、大学関係者と見られる応援団がいますよね。
選手達の父兄を始め、大学職員や、教員(!)も混じっているそうです。
あの方々をバスで輸送する費用なんてのも、実は大学の持ち出しです。
もちろん、大会規定上、そんなことをする義務はないのですが、
せっかくの広報効果を活かすために、出場校のほとんどはそうした予算をとるのです。
というわけで、大学として本気で箱根を広報に使うのなら、ちょっと考えただけでも、以下のような予算が必要になるはずです。
<恒常的にかかるお金>
○選手のスカウト費
○特待選手の学費
○監督など、指導者の人件費
○練習施設や備品の整備費(合宿施設や寮なども含まれる)
※これらは、少なくとも数年単位で投資を持続させなければなりません
<大会にかかるお金>
○ノボリや旗などの準備費
○関係者の輸送費(さすがに宿泊費などは参加者持ちだと思いますが……どうなのでしょうか?)
○サポートにまわる大学教職員の人件費
<その他>
○大学webサイトの駅伝コンテンツ作成費
○広報誌に使う記事のための取材費
上記はマイスターが思いついた限りの内容ですので、このほかにも諸々、細かな費用がかかってくるでしょう。
ちなみに、とある大学ではなんと、教員に「箱根駅伝担当」というポストがあるそうです。そんな担当者達の労務にかかっているお金も考えると、バカにならない金額が必要になってくると思われます。
さらに、取り組みを始めて1年や2年で参加できるほど箱根駅伝は甘くありません。
(箱根駅伝の予選会は、選手10人の総合タイムで競う形になっています)
どんなに短くても、計画に着手してから箱根路を走れるまでに、数年はかかるでしょう。
そう考えると、これは大変な投資額です。
箱根駅伝に参加する大学のほとんどは、スポーツや体育に関係する学部を持たない大学です。
スポーツに力を入れるのはもちろん良いことですし、大いに意義があることですが、ここまでの投資をできるのは、やはり広報効果があるからなのだろうと思います。
(「箱根駅伝担当」なんてポストを設けるのも、大学経営上、駅伝での露出が大きな意味を持つからにほかなりません)
そんなわけでマイスターは、視聴者として駅伝のレースを楽しみにすると同時に、
「どうして大学が、箱根駅伝に力を入れるのだろう」
……ということを考えながら毎年、放送を観ています。
明日に続きます。
以上、マイスターでした。
※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。