地元酒造メーカーと連携した「企画実務論」の授業 活水女子大学

マイスターです。

企業が大学と連携して行っている教育の事例を、何度かご紹介してきました。

■「『コーオプ教育』をご存じですか?」
■プロスポーツと大学(1) Jリーグと大学の連携
■プロスポーツと大学(2) プロ野球チームと大学の連携
■「地元の紙産業を担う人材を大学院で育成 四国の産学連携事業」
■「高知大学 『いなかインターンシップ』の取り組み」
■「明治大学国際日本学部とフロリダ州立大学が連携 米国ディズニーリゾートでインターンシップも」

企業が大学の授業に入ることに抵抗を覚える方も、大学関係者の中には少なからずおられると思います。

確かに、企業活動を通じて学べることと、大学で学ぶ学術的な知識体系は同じではありません。
「実践」や「体験」を重視するあまり、熟考したり、議論したり、悶々と悩んだりする時間が失われてしまったら、大学教育の意味合いは失われてしまうでしょう。
産学連携も、万能ではありません。

ただその一方、企業やNPOなどの学外組織と連携することにより、キャンパスではなかなか得難い経験を積むことができるのも確か。
教員が全体の舵取りを行いながら、学生にとって良い刺激になるような機会を連携して作り出すことができればいいのかな、と個人的には思います。

企業にとっても、大学の授業を介して学生と触れあうことにはメリットがあります。

・学生の発想による商品企画のアイディアが得られる
・(若者を対象とした商品の)マーケティングリサーチを行える
・教育への関わりを通じて社内の活性化が行える
・学生の採用を見越した、企業ブランドイメージのアップが見込める

……等々。
学生から企業の社員達が刺激を受けるというメリットは、実は学生側以上に大きいと思います。

マイスターは大学との連携事業などに関わる上で、大学の教職員の方はもとより、大学生や大学院生の方とも(当然ですが、高校生とも)日常的に関わる機会を得られていますが、これは自分にとって、とても大きな意味を持っていると日々感じます。様々な刺激を受けますし、教えられることも非常に多いです。
他の多くの業種の方も、もっとそういった機会を得られたら、大学に対する世の中の見方は変わってくるのではないか……? と、思ったりもするくらいです。

そんなわけで、大学の教職員を介し、企業人と大学生が関わる場をつくるということを、積極的にオススメするマイスターです。

というわけで、今日はこんな話題を見かけました。

【今日の大学関連ニュース】
■「プレゼンや利き酒会 日本酒復活へ女性狙え 酒造メーカーほんのり手応え」(西日本新聞)

酒造業界を取り巻く環境は厳しい。福岡国税局長崎税務署によると、県内の酒類消費量は01年度に11万100キロリットルあったが、年々減少し、06年度は9万3800キロリットルにまで落ち込んだ。特に日本酒は9900キロリットルから6600キロリットルへ3分の1も減った。
危機感を募らせる酒造メーカーが注目しているのが、若い女性に日本酒を売り込むプレゼンテーションを企画する活水女子大の「企画実務論」の授業だ。
昨年から始まった授業では、3人前後の学生グループが、日本酒の特徴や若い女性のお酒に対する志向を調べた上で販売戦略を考案。(1)化粧水のようなボトルを使う(2)女性専用の居酒屋を経営する(3)地域情報誌と提携する(4)「艶酒(アデージュ)」と名付ける‐など、ユニークな企画を次々提案している。
授業を見学した前県酒造組合会長で杵の川酒造社長の瀬頭昭治さん(64)は「ネーミングやボトルなど発想が面白い。職人気質が強い酒造業界は従来の手法にこだわりがちだが、若い女性の考えを商品化につなげていきたい」と語った。
(上記記事より)

企業と大学との関わりにも色々な形がある……。
というわけで、こんな取り組みをご紹介します。

日本人の酒離れが進んでいるとしばしば言われますが、これはデータ上も明らか。
ご興味のある方は、↓このあたりをご覧下さい。

■「酒類市場データ」(KIRIN)

この10年だけでも、お酒の消費量が減っているのは明らか。
お酒全体の消費量も減少の一途を辿っていますが、さらに内訳を見ると、新ジャンルのカクテルやリキュールなど、アルコール度数の少ないものがシェアを伸ばし、日本酒やウイスキーなどが急激に飲まれなくなっている様子が分かります。
この背景として、特に「若者の酒離れ」が大きいとメディアは報じています。

大手メーカーなどは、アルコールの薄い発泡酒やカクテルを代わりに開発すれば良いかもしれませんが、日本酒を長く専門でつくってきた酒蔵や中小企業にとっては、これは大打撃。
そこで、なんとか若者に日本酒を飲んでもらおうと、様々な手を打っているわけです。

上記の記事は、活水女子大学の「企画実務論」の授業に、地元酒蔵メーカーが熱い視線を送っているという話題ですが、これも市場縮小に対する危機感から生まれたものでしょう。

「消費者として、大学生にもっと日本酒のことを知って欲しい」

という意図と、

「若者市場に対して日本酒を展開するにあたり、若者の意見を採り入れたい」

という意図と、両方が込められているのかなと思います。

他の大学にもいくつか事例があると思いますが、商品企画を学ぶ授業においてこのように地元の企業と連携し、地元発の商品を教材にするというのは、良いアイディアだと思います。
大学が地元産業の活性化に貢献する機会ですし、学生にとっては地元に目を向けるきっかけにもなるでしょう。良いアイディアが得られれば、企業にとってもメリットになります。

特に上の例の場合、若者に日本酒が売れなくて困っているわけですから、大学生にその理由や、どうすれば飲むようになるかを考えてもらうというのは理に適ってもいます。

ただ、活水女子大学の授業がどうであるかはわかりませんが、実際にはこういった取り組みの中で、本当にそのまま使えるアイディアが出てくることは稀でしょう。
企業の側から見たら、企画が荒削りに思えたり、安易な発想だと感じられたり、調査のアラが目に付いてしまったりということも、あるかと思います。
その結果、1~2回、取り組みを行って、「もう十分」と企業が降りてしまうというケースも、全国いたるところで、おきているのではないでしょうか。
(企業にとって新しい取り組みをスタートさせるのは容易く、それをずっと継続させるのは困難。大学と逆です)

その辺りをどのように考え、設計するか。これは大学側の役割だと思います。
本格的に企画のカリキュラムを体系立てて組み、最終段階では企業を唸らせる企画を出せるようにするというのも一つの考え方ですが、これはなかなか大変です。
そうではなく、「学生と関わる」こと自体に意味合いを感じてもらうというのも方法でしょう。常に同じ企業と組むのではなく、毎年違う企業と連携するというのも手です。
いずれにしても、「これは教育なのだ」ということを理解してもらい、そこに企業側のメリットを見出してもらうということが、継続のためには大事なのかなと思います。

例えば、企業の2年目社員の研修の一環として、この授業自体の講師・進行役を任せるとか。
お互いに、自分達を成長させる場として大学を活用できるなら、長く続く取り組みになるのではないかと思います。

以上、マイスターでした。

※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。