アメリカの有力大学も、資産運用で大きな損失

マイスターです。

資産運用で大きな損失を出し、経営にダメージを受けている大学が増えているようです。

■駒澤大学 資産運用失敗で154億円の損失
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駒澤大学の話題の後、慶應義塾大学や早稲田大学などでも損益が拡大していることが報じられ、その後も新たな報道が続いています。

■「資産運用で148億円含み損=9月末、大学に金融危機の影響-立正大」(時事ドットコム)

最初の報道はやはり、氷山の一角だったようです。
今後も、同様の事実が明らかになっていくことと思われます。

さて、不景気な話題ばかりで申し訳ありませんが、資産運用のプロが集まっていると言われるアメリカの大学でも、今回の影響が出てきているようです。

【今日の大学関連ニュース】
■「空前の損失、米大学直撃 基金、寄付急減で節減策次々」(FujiSankei Business i.)

米ハーバード大学(マサチューセッツ州ケンブリッジ)の369億ドル(約3兆5300億円)に上る大学基金が「前例のない」損失に見舞われそうだ。ドルー・ファウスト学長がこのほど、教職員や学生にあてた文書で告知した。
(略)ファウスト学長は文書で「世界的経済危機」に言及し、その影響による寄付金の減少、政府助成金などの減額が必至と指摘。大学は「財政逼迫(ひっぱく)を余儀なくされる」と報告した。
ボストンを拠点とし、ハーバード大学の基金運用を行っている投資機関、ハーバード・マネジメントによると、同大学基金の今年6月末までの1年間の運用益は8.6%だった。同基金は同大学の年間運営資金の3分の1以上を提供しているという。今年前半に提供された運営資金は約16億ドルだった。同大学の広報担当は損失額の詳細については明らかにしなかった。
(上記記事より)

アメリカの大学の中でも飛び抜けた資金力・資産運用実績を持つハーバード大学の例が掲載されています。

投資のプロ集団である投資機関「ハーバード・マネジメント」を抱える、ハーバード大学。

「今年前半に提供された運営資金は約16億ドル」ということで、そもそもの扱い額が日本の常識と比べて桁違い。どれだけこの額が減ったとしても、日本の高等教育関係者からしたら、うらやましい状態であることは間違いありません。

ただ、ハーバード大学の年間運営資金の3分の1以上が、このハーバード・マネジメントからの資金提供ということですから、大学の現状に与える影響は大きいでしょう。

このほか記事では、マサチューセッツ工科大学(MIT)やダートマス大学の例も出しています。
両大学とも、今後の予算を削減し、支出を抑える旨を発表しているとのこと。
いずれも、資産運用によって得られる利益が、大学経営のための資金の一定割合を占めている大学です。

ハーバード大学を始め、こういったアメリカの有力大学でしばらくの間、研究や教育への投資が抑えられるということは、想像に難くありません。

具体的には、どのような影響が出ているのでしょうか。
記事から抜き出してみました。

■職員の採用を凍結(アイビーリーグの数校)
■新校舎の建設などを中断(コーネル大学、ダートマス大学)
■学部の閉鎖または統合を進める計画(ダートマス大学)
■学術誌660種以上の定期購読を中止(ジョージア大学)
■新規建設プロジェクトを延期する可能性がある(プリンストン大学)
■建設工事の一部延期、他分野での大幅かつ永続的な合理化計画を発表(スタンフォード大学)
(上記記事の内容から)

上記はいずれも世界的にその名を知られる大学だと思いますが、金融危機を乗り切るために様々な対策を講じているといったところでしょうか。

ダートマス大学は、アイビーリーグの中でも規模が小さい大学ですが、運転資金の3分の1以上を寄付金に頼っているとのことで、特に影響を受けているようですね。
(キャンパスを担保にしたといった話は、今のところは聞きませんが、中小の大学だとそういった事例もあるのでしょうか)

アメリカの大学関係者にとっては、今回の金融ショックは大きな関心事なのでしょう。
アメリカの高等教育専門誌「The Chronicle of Higher Education」の記事も、そういえばここしばらく、ファイナンスなどの話題が多いように思います。

■The Chronicle of Higher Education

こういった報道から、「一体どれだけ大きな資金を運用しているんだろう」、と改めて思います。
金融ショックによって大きなダメージを受けるということは、逆にそれだけ、リスクを伴う投資を日常的に積極的に行っているということでしょうか。
もっともこういった大学の場合、そもそもの資金力が強大である故、大学自体が傾いたりすることはなさそうですが。

経済状況にあわせて、大学の提供するサービスが大きな影響を受けるというのは、

「学生に対して常に安定したサービスや環境を提供する」
「常に一定の研究成果を生み出し続ける」

……という観点では、あまり良いことではないでしょう。
期待通りのサービスを受けられないとなったら、入学者からもブーイングが来るかも(?)しれません。

ただ一方で普段は、これらの大学は学生が支払った入学金に対し、相当の「プラスアルファ」を加えた教育や環境を提供しているというのも事実。
今回の不況でダメージを受けたとしても、アメリカの大学が資産の運用をやめるということはおそらく、ないのでしょう。
(一時的に運用方針が、少し保守的になったりはするかも知れませんが)

色々なことを考えさせられる報道です。

以上、マイスターでした。

※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。