マイスターです。
■駒澤大学 資産運用失敗で154億円の損失
↑昨日の記事でもご紹介した、駒澤大学の損失の話題は、既に業界を駆けめぐっているようです。
↓こんな記事も出てきました。
■「教育界に金融危機の余波、駒沢大が資産運用で損失―慶応、早稲田」(ブルームバーグ)
2008年3月期決算では、慶応義塾大学の運用資産の評価損は225億円に上った。北村和夫運用担当課長は、ブルームバーグ・ニュースの取材に対して、「運用資産1000億円を超えて、現時点での評価損は約225億円で2008年3月末決算から変わっていない」と述べている。ブルームバーグ・データによると、世界の株式の時価総額は08年3月末と比較して4割近く目減りしている。マーケットが改善しないと、今年前半の評価を維持するのは難しい状況だ。
慶大では、「資産運用のアロケーション(資産配分)は大学自体で行っており、ヘッジファンド、REIT(不動産投資信託)、商品などに投資している。デリバティブもヘッジ的なものでいろいろな通貨スワップに投資しているが、どの通貨かは言えない」(北村氏)と説明した。
ほかの有名大学でも評価損を抱えている。早稲田大学の08年3月末決算書では「運用資産は約1000億円で、政府保証が付いている格付けの高い外債を中心に運用している。3月末時点で評価損が約5億円あったが、その後9月末にかけて膨らんでいる」(大出達夫資金運用担当課長)もよう。
(上記記事より)
駒澤大学以外にも、多くの大学が影響を受けていることを伺わせる記事です。
ちなみに大学教職員向けのセミナーなどで知られている、「地域科学研究会 高等教育情報センター」では、こんな事態を先読み(?)してか、2007年6月から、ズバリな連載をサイトに掲載していたようです。
【“私論公論”の場 Vol.3 大学資金運用とガバナンス危機】
■その1 学校・国公大学法人の経営財務と説明責任
■その2 重くなる現場業務と現場責任
■その3 隣り合わせになった,不測の評価損・損失リスク
■その4 その時,現場の運用責任者は説明できるか?
■その5 その時,顕在化する役員(会)の監督不行き届き
資産運用・管理コンサルタントの方が大学関係者向けに書かれている文章で、まさに今この局面に、役に立ちそうな内容です。ご興味のある方はどうぞ。
それと、この資産運用・管理コンサルタントの方を含む講師陣が、大学の資金運用のリスク管理と説明責任に関するセミナーを開催されるそうです。
これまで、あまりこうしたセミナーなどの情報はご紹介してまいりませんでしたが、これは本ブログを読まれている方々にとっても有益なのではと思いましたので、ご案内させていただきますね。
【大学関係者向けイベント情報】
■「セミナーのご案内 12月19日(金)
大学法人資金運用のリスク管理と説明責任
~今、何が焦点か/現場で起こっていること/今後の対処の基本~(PDF)」(地域科学研究会 高等教育情報センター)
ご許可をいただきまして、webの内容を一部、以下に転載させていただきます。
【2008 年12 月19 日(金)】
サブプライム金融危機下のガバナンス――
大学法人資金運用のリスク管理と説明責任
~今、何が焦点か/現場で起こって いること/今後の対処の基本~■講師陣
田辺 和秀 氏 / 日本私立学校振興・共済事業団 私学経営情報センター 経営支援室長
梅本 洋一 氏 / (株)リスクマネジメント・ラボラトリー 法人資金運用・管理コンサルタント、非営利法人資金運用研究会事務局長
竹子 立弥 氏 / MFS インベストメント・マネジメント(株) ディレクター、(財)公益法人協会 公益法人資産運用研究会委員現在進行中の“金融危機の深化”の中で、大学法人の資金運用の“失敗”が顕在化しております。
11 月中旬には「K大学が金融先物取引に失敗110 億円の損失を出す?」のネット情報が走りました。強弱はあれ、多分、2 桁の法人での同状況が想定されます。点検と対処が急務です。
小会は2006 年3 月の「学校法人の資金運用とガバナンス」以降6 回のセミナーで、ポートフォリオ運用の“基本”と“リスク管理”についての研修会を開催しております。昨年11 月には「サブプライム・ショックと学校法人資金運用」についての問題提起を行っております。
今回の金融危機の状況を、貴法人経営を支える運用資金体制のインフラ強化の機会としていただければ幸いです。
(上記PDFより)
「K大学」の情報が流れた瞬間に企画を立ち上げたのか、それとも以前から計画していたものが、たまたまタイムリーになったのかは定かではありませんが、いずれにしても図ったようにぴったりのタイミングに感心させられました。
カリキュラムの詳細は、上記のPDFをご覧下さい。
セミナーは3部構成ですが、例えば第3部の内容は↓こんな感じ。
1.サブプライム金融危機下における資金運用の現場
(1)担当者 (2)担当理事 (3)役員会 (4)取引金融機関担当者 (5)認識のギャップとそのリスク
2.リスク管理・説明責任の点検評価の視点
(1)大学資金運用の方向性を見失ってはいないか (2)あり得ない資金運用の前提とその弊害 (3)担当者・理事の説明責任(アカウンタビリティ)の喪失 (4)なぜ、想定外の損失は起こってしまうのか (5)行き当たりばったりの運用管理
3.大学資金とその運用管理の原点回帰
(1)金融・資金運用の理(ことわり)を理解する (2)大学と資金運用のミッションを一致させる (3)説明責任(アカウンタビリティ)が問われているポイントを絞り込む (4)リスクマネジメントの要諦を押さえる(5)投資政策(政策ポートフォリオ・投資方針書)を書面で説明する
4.具体的施策(アクション・プラン)の展開
(1)理事会は何から取り掛かるべきか (2)担当役員・事務局の重要な役割とは (3)運用規程の制改定 (4)政策ポートフォリオ策定 (5)投資方針書策定 (6)外部金融機関の監視・監督 (7)運用委員会、コンサルタントの位置付けと役割
(上記PDFより)
見れば見るほどタイムリーです。
ちなみに有料のセミナーなのですが、
「部長! ニュースを見ましたか? 私達も何か対策を講じる必要がありそうです!
私、さっそくこのセミナーに出てきますので、研修費を出してください!」
「よし行ってこい!」
……みたいな感じで、今ならスムーズに上司の許可がおりそうな気がしないでもありません。
というか、大学経営のガバナンスに関する内容も多く含まれているので、むしろ上司の方を誘って一緒に行くと良いかもしれません。
理事会などに関わる立場の方と、財務の担当者の方とが一緒に聞くと良さそうです。
どの大学でも大きな話題になっていると思われる、資産運用のリスクマネジメント。
逆に言うとこういうときは、危機対応の名のもとに、一気に体制を整えるチャンスでもあります。
「これまで何度もリスク管理の必要性を主張してきたのに、理事会が真剣に対応してくれなかった」
……なんていう思いを抱いている皆様は、今一度、声を上げてみると良いかもしれません。
以上、マイスターでした。
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※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。