10ヶ月の間、法医学教室の司法解剖医が「ゼロ」 佐賀県

マイスターです。

大学のwebサイトには、教員や職員の採用情報が掲載されています。
ともに、定年退職などで欠員が生じた際に補充する、というケースが多いでしょうか。
もっとも最近では、大学も人件費を削減しなければならないため、欠員を100%補充しないことも多いようですね。

大学職員はいま大人気で、新卒、中途採用ともにすごい倍率です。
競争率が数十倍から100倍を超えることもしばしばだとか。

教員は、「専門分野」によって状況が異なります。
博士課程を出たあとのポスドクが過剰に余っていて、正規の教員枠がない分野もあれば、必要なのに人が来ない、という分野もあるようです。

今日は、そんな人手不足で困っていた大学の話をご紹介します。

【今日の大学関連ニュース】
■「佐賀 司法解剖医ゼロ 不在状態10ヵ月 年内解消目指す 変死体は県外搬送 捜査現場に不安」(西日本新聞)

佐賀県で、司法解剖医不在の状態が10カ月続いている。県内ただ1人の解剖医だった佐賀大学法医学教室の教授が昨年末に退職、後任の補充ができていない。
(略)佐賀県では昨年まで、佐賀大法医学教室の教授だった木林和彦氏が1人で司法解剖医を務めてきた。木林氏が昨年末で佐賀大を退職、東京女子医大に移ってからは、同県警は変死体が見つかるたびに県外に搬送し、九州大、福岡大、久留米大、長崎大に、司法解剖の実施を依頼している。
(上記記事より)

佐賀大学で起きた問題です。

犯罪性のある死体を解剖し、死因などを究明するのが、司法解剖医。
ニュースなどにも、「司法解剖の結果……」なんて記述があったりしますね。

この司法解剖は通常、大学医学部の法医学教室において、法医学者が執行するそうです。
つまり、通常の医師とは異なる、専門的な知識や技術を持ち合わせた人が行うべきことなのです。
この司法解剖によって重大な事実が判明したりしますし、後の捜査や裁判にも大きな影響を与えることがあるわけですから、そのあたりの原則は、大事にされなければなりません。

ところが、この法医学、全体的に人手不足なのだそうです。

人材不足が問題となっている医師の中で、解剖医は人気がない分野。国立大の独立行政法人化も解剖医不足に拍車を掛ける。大学は経営上のメリットが薄い司法解剖の要員を削減する傾向が強いとされ、日本法医学会は「将来を不安視した若い人材の法医学離れが進んでいる」と危惧(きぐ)する。
こうした全国的な傾向に、佐賀特有の事情もある。一般に大学の法医学教室は教授や助教など3‐5人で運営するが、佐賀大は1980年の開設以来、全国で唯一の2人体制。佐賀大の木林氏は4代目教授だったが、同時期に開設した宮崎大と大分大はまだ2代目教授で、佐賀大の教授交代の早さは際立っている。
「佐賀大は規模が小さいこともあり、自分の研究すらできない負担が、法医学教室にあるのではないか。教授を補充しても、他大学によいポストがあれば、またすぐに転出する恐れもある」。鹿児島大法医学教室の小片守教授は、待遇や体制整備の必要性を指摘する。
(上記記事より)

医師が足りていないというのは全国的な現象で、各地域で問題になっていますが、解剖医も例外ではないようです。大学では、特に削減されがちな要員なのだということで、法医学離れが進んでいるとか。
佐賀大学では、もともとの人員も少ないらしく、教授の交代も早いようです。

10月21日現在、佐賀大学医学部・法医学教室のページには以下のような記述が。

■「法医空白 10カ月で解消 佐賀大に11月着任」(佐賀新聞)

佐賀大学医学部(佐賀市)は、司法解剖などを手掛ける法医学の専門医として、名古屋市立大医学研究科講師の小山宏義さん(50)を採用することを決めた。11月1日に着任する予定で、県内で1月から続いていた解剖医の空席状態が約10カ月ぶりに解消される見通しになった。不在の間、変死体の解剖を県外に依頼してきた県警も今後、時機を見て、地元で死因を調べる体制を再開する。
(上記記事より)

まずは事態が改善されそうで、良かったです。
県警も、ほっとしたことでしょう。

ただ、前述の記事で鹿児島大法医学教室の教授が指摘しているように、佐賀大学特有の事情から、これまで担当者が交代を繰り返してきたということもあるのかもしれません。
だとしたら、そこを解決しないと、また同じことの繰り返しになってしまう可能性もあります。
この新任の方が1人で佐賀県内の司法解剖を担当されるというのも大変そうですし、それこそこのままでは、遠くに出かけての講演など、難しいでしょう。安定した体制が必要のようです。

大学は、社会の中で、様々な役割を負っています。
医学部をはじめ、公的なシステムの一角を担う場面も少なくありません。その一方で、法人化などにともない、大学経営上の課題も浮上しています。
今後は、例えば県が公費で大学の特定研究分野を支えるなどの対応が必要になってくることも、もしかするとあるかも知れません。

今は色々なシステムが変わる過渡期ですから、色々な問題が起きてくるかと思いますが、それらすべてを想定しきることは困難。
結局は柔軟に対応していくなかで、解決法を積み上げていくしかないのかな、という気がします。

以上、冒頭のニュースを読んで、そんなことを考えたマイスターでした。

※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。