「大学webマスター」によって大学の広報力は大きく変わる

マイスターです。

webサイトの企画・制作・運営に携わっていたことがあるからか、「大学のwebサイト」には強い関心を持っています。

webサイトには、その組織の特徴が少なからず反映されるものです。
広告用のポスターなどでは、外部の広告代理店などに依頼をして、実態とかけ離れたものをキレイにデザインすることも可能でしょう。しかし、組織の活動場所そのものであり、また常に組織の活動に合わせて変化し続けるwebサイトの場合、そうはいきません。
組織のありようそのものが、webサイトとして表れてしまいます。

どのような情報が発信されているのか。どのような機能に重点が置かれているのか。どのようにそれが管理・運営されているのか。そんな風にwebサイトを分析していると、サイトを通じて、その組織自体の考え方や性格、雰囲気のかなりが理解できる……とマイスターは思っています。

さて、webサイトの管理責任を持つ担当者を、一般には「webマスター」なんて呼んだりします。

組織の良い部分をwebサイトのあり方にうまく反映できるのは、良いwebマスターであり、逆に組織の悪い部分をwebサイトに反映させてしまうのは、あまり良くないwebマスターです。

マイスターは、大学のwebサイトを預かるスタッフの方を、特に「大学webマスター」なんてお呼びしています。単に、語呂が良いからアタマに大学と付けただけではありません。
大学組織の特殊な点をしっかり理解し、組織の中の「想い」をちゃんと拾って活かす視点を持っている一方で、学外で起きているweb世界の最前線の動きにも通じている……というのが、理想の大学webマスター。企業のwebマスターとはまた少し違った能力が求められるのです。

大学webマスターは、専門性の高いスペシャリスト。
そして、大学webマスター次第で、大学の力は活かされも、殺されもする、とマイスターは思っています。

そのわかりやすい例の一つが、中央大学です。

中央大学のwebサイトは、日経BPコンサルティングの「全国大学サイト・ユーザビリティ調査 2006/2007」において総合第1位を獲得したことで、業界で話題になりました。
前年度の調査では108位だったので、「一体どんなリニューアルを!?」と、皆が注目したわけです。
マイスターも気になったので、セミナーなどで色々とお話を伺ったりしました。

■中央大学

中央大学のwebサイトは、情報を探しやすいユーザーインタフェースが非常に優れているサイトです。
ユーザビリティ調査で1位になったのもよく分かります。

大学のように大きく、かつ各部署の独立性が強い組織では、放っておくと各部署が独自のページやコンテンツを立ち上げます。
そうすると、デザインの統一性が崩れるだけでなく、情報発信の頻度や内容、文章のトーン、公開する情報の種類などなど、あらゆることがバラバラになってきてしまうのです。これは、一見するとなんだか盛り上がっているように思えますが、実際にはユーザーが情報を探しにくくなるだけでなく、組織のブランドを弱めてしまいます。
そのために大きな企業などでは、CMS(Contents Management System)と呼ばれる仕組みを整備したりして、トーンの統一を図っているのです。
中央大学のwebサイトは、大学業界でもいち早くそういったことを徹底して設計されたもののひとつでしょう。

ただ、セミナーで話を聞き、マイスターが何よりも驚いたのは、各学部や部署によるリリースを吸い上げ、適切な場所に掲載するために考え出された、更新システムでした。

大学の特徴の一つは、「広報課による広報が難しい」ということです。
大学には通常、数十から数百、ときには数千人もの研究者が在籍しています。そのそれぞれが独自の研究を進めているわけです。こうした研究の成果を、広報セクションが完全に把握し、適切に外に発信するというのは、簡単ではありません。

加えて、大学教員の側も、大学の広報セクションを利用することに慣れていなかったりします。学会の発表と同様、自分自身で関係各所にリリースを送ったりする人も多いでしょう。
それを見た外部の方が大学の広報に質問をしてきて、広報が対応できない、というのは大学業界では良くある光景です。

中央大学では、webのニュース更新システムを利用して、各セクションが自分達の判断でニュースをどんどん配信する仕組みを構築しています。必ず広報課が承認をする流れになっているので、情報はすべて広報に集まります。わかりにくかったり、情報が不足していると思われる場合は、広報が関係者に問い合わせをし、手直ししてから配信すればいいわけです。
しかも、学内からニュースを集約する過程で、「これは大学のトップページに出すべき」とか、「○○事業のページにも出すべき」といった検討がなされるようになっています。外部のメディアにリリースとして配信される流れもできているようです。

民間企業でも聞いたことがないとても先進的な事例だったので、驚いたのを良く覚えています。
ただ進んでいると言うだけでなく、大学という組織の特性をちゃんとふまえた上での問題解決法だったので、感心しました。
というか、「サイトを変えることによって、組織のあり方そのものを活性化させてやる!」という野望を感じさせる、刺激的な実践例だと思います。
「大学webマスター」の重要性を感じさせるケースです。

ただし中央大学の例はいちケースでしかありませんから、同じ取り組みが、他の大学でも有効かどうかは分かりません。
大学それぞれに合ったやり方を考えるのも、大学webマスターのミッションです。
大学でwebサイトの担当をされている方は、ぜひ、その辺りも含めてサイトを良くしていっていただければと思います。

ところで、こんなwebサイトをつくったのはどんな方だろう、ということで大学関係者から注目を集めたのが、当時、入学センターで担当課長をされていた、渡邉純一さん。
さすが、外部のメディアも放っておかなかったらしく、セミナーの他、↓色々なところで取材されています。

■「かわちれい子のウェブマスターのお仕事:中央大学ウェブマスター 渡辺 純一氏」(Web担当者Forum)

■「Forefront:『大学にとってWebサイトとは何か』 渡辺 純一氏(わたなべじゅんいち)」(株式会社アートスタッフ)

■「産学官連携ジャーナル:渡辺 純一・中央大学 入学センター事務部 担当課長」(独立行政法人科学技術振興機構)

最後に、その渡邉純一さんが、ご自身のブログで、webサイトや大学の現在について、情報を発信されていますので、ぜひご紹介しておきたいと思います。

【今日の大学関連ブログ】
■「渡邉純一の大学Web日記」

大学webマスター必読! のブログです。
webだけに限らず、入試の最前線で活躍されてきた経験もふまえ、様々な情報やご意見を発信されていますので、ぜひご覧下さい。

以上、マイスターでした。

※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。