マイスターです。
今日は、関西のこんな話題をご紹介したいと思います。
【今日の大学関連ニュース】
■「阪神なんば線開通控え、大学受験生争奪戦が激化」(MSN産経ニュース)
平成21年3月に阪神なんば線(尼崎-近鉄難波)が開通し、阪神間と奈良のアクセスが向上することを受け、沿線の大学が新たな受験生獲得を目指したPR合戦を繰り広げている。少子化による大学間の受験生の獲得競争が激化するなか、通学圏の拡大は大学側にとっては大きなチャンス。受験会場を増設したり、鉄道広告を出すなどして受験生の取り込みを図ろうとしている。
(略)阪神鳴尾駅が最寄り駅の武庫川女子大(兵庫県西宮市)の担当者は「なんば線の開通で、特に奈良県に注目している」と力説する。
武庫川女子大は来春の受験から、これまでの東京、名古屋、福岡などの受験会場に加えて、新たに奈良会場を設置する。さらに、全国各地で行う学校相談会のうち奈良会場での開催を2回に増加。大学職員による奈良県内の高校訪問の回数も増やし、奈良在住者にとっての通学の利便性を積極的に説明しているという。
一方、大阪や奈良にある大学にとっては、阪神間が新たなターゲットに。08年度に入ってから、帝塚山大(奈良市)、奈良女子大、大阪樟蔭女子大(東大阪市)などの広告看板が阪神梅田、西宮、三宮などの各駅に設置された。
近鉄大阪線の長瀬駅が最寄りとなる近畿大学(大阪府東大阪市)は、オープンキャンパスが開催される時期に合わせ、7月と8月の2回にわたり、約1万3000枚のポスターを阪神電車とJRの車内に掲示。開通に伴うアクセス向上にふれたうえで「近畿大学への近道です」とキャッチコピーで受験生にPRした。
(上記記事より)
というわけで、新しい路線の開通に伴い、大学が沿線の受験生獲得に力を入れているというニュースです。
電車の交通広告のお得意様は、雑誌などの出版物と、学校です。
特に大学をはじめとする学校の広告は、各種の情報告知に加え、「この沿線にこんな学校があるんですよ」という認識を促す狙いもあるようで、一年中、同じ大学が広告を出し続けていることも少なくありません。今回のような形で新しい路線ができるのであれば、真っ先に自校の存在をアピールしたいところでしょう。
新しい路線がつながることでアクセスが良くなり、より遠くの大学にも同じ時間で通えるようになるわけですから、確かに大学にとっては、顧客拡大のチャンスです。
ただ、アクセスが良くなるということは、ライバルも増えるということです。
今回の例で言うと、阪神間にある大学にとっては奈良県の受験生が新たな顧客層になるわけですが、奈良県の大学からすれば、阪神間の受験生が新たな顧客層だということになるわけです。
お互いに、これまで抱えていた顧客を相手に奪われてしまうかもしれない、ということですね。
つまり、無条件に「顧客層が拡大した」のではなく、「競争が激化した」という方が正確。
この競争に勝ってはじめて、受験生増加のチャンスを掴むことができる……というわけです。
おいしい話は、なかなかないものです。
逆に、色々な点でメリットが大きいのは、鉄道会社です。
鉄道会社にとって、沿線上に学校があることほど、うれしいことはありません。
景気や天候などに影響されず、確実に電車に乗り続けてくれるのは、電車で通学する学生ですし、上記のように大学は、高い確率で広告を買い続けてくれる優良顧客でもあります。
ちなみに私鉄などでは、そのため、沿線に大学を誘致することもあります(「○○大学前」みたいな駅がいくつもある路線が、東京近郊にもありますね)。鉄道会社のグループが大学を経営してしまうことすらあるくらいです。
今回のように、新規路線開通と同時に、沿線の大学が一斉に受験生集めに乗り出したというのは、鉄道会社にとっては、どう転んでも利益につながる、願ってもない展開なのではないかと思います。
ただいずれにしても、沿線に住む高校生にとっては、進学先の幅が拡がるわけですから、いい話です。
ところで、記事の中に、こんな記述がありました。
最近の受験生は、経済的な理由や少子化傾向にともなう親の意向などにより、下宿生活を敬遠する人も増加。大学選びの重点項目として「通学アクセス」をあげる人が少なくないという。
(上記記事より)
経済的な理由はまだしも、「少子化傾向にともなう親の意向などにより」、下宿生活を敬遠する人が増えているというのは、ちょっと気になります。
「なるべく親元から離れさせたくない」と親が考えており、そのために自宅通学を子供に勧めている、ということでしょうか。
ご家庭ごとに事情は異なりますから一概には言えませんが、現代日本の教育における大きな課題の一つは、「親が一刻も早く子離れすること」だとマイスターは思っております。
その意味では、いっそ自宅からできる限り離れた場所で、寮暮らしなどをしながら大学生活を送るのが本当は一番いいのではないかな、なんて思うのですが、どうなのでしょうね。
以上、冒頭のニュースを見ながらそんなことを考えた、マイスターでした。
※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。