卒業研究が、科学雑誌『Nature』に掲載される

マイスターです。

ノーベル賞受賞で祝福ムードが流れる中、「受賞した研究はいずれも数十年前のものだ」という指摘も多く聞かれます。
かつてと比べると、小学校から大学院まで、日本の教育のあり方もかなり変わってきました。科学技術に対する国の政策も、今後どうなっていくかわかりません。
これから先、同じような研究成果を生み出し続ける国になれるのかどうか、それが問われています。

さて、そんな中、こんなニュースが目に入りましたので、ご紹介したいと思います。

【今日の大学関連ニュース】
■「“22歳の頭脳” 世界へ ネイチャーに慶大生の論文」(東京新聞)

日本人の相次ぐノーベル賞受賞に全国が沸く中、今春に慶応大学理工学部物理情報工学科を卒業した内田健一さん(22)=神奈川県相模原市=が世界で初めて発見した現象が、九日発行の英科学誌「ネイチャー」に掲載された。大学生の論文が同誌に掲載されるのは異例で、次代の“日本の頭脳”として期待がかかっている。
内田さんが発見したのは、磁石に引き寄せられる鉄などの金属の両端に温度差を与えると、磁気の流れ(スピン流)が発生するという「スピンゼーベック効果」。スピン流を用いると、磁気ディスクに従来より高密度の情報が記録できると見込まれており、新しい技術として利用が期待されているという。
内田さんは昨年四月、電子の持つ磁気(電子スピン)を工学的に利用する「スピントロニクス」の研究室に配属。スピントロニクスは今世紀になって注目された分野で、内田さんを指導する斉藤英治慶大専任講師らが確立したばかりの電子スピンを計測する手法を用いて、半年の実験で自らの発想を裏付けた。
さらに、半年がかりで東北大金属材料研究所と協力して理論を確立。卒業研究として、内田さんが中心になり論文をまとめ、同誌に投稿した。
(上記記事より)

『Nature』と言えば、ノーベル賞につながるような研究成果が掲載されることもある、とても権威のある科学雑誌。
世界中の研究者に読まれており、研究者にとっては、ぜひ自分の研究成果を載せたいメディアの一つでしょう。

今回、掲載された内田さんの研究は、学部の「卒業研究」としておこなったもの。
学部生の段階でネイチャー級の研究成果を出したというのは、確かに異例だと思います。

以下が、その研究が行われた齊藤研究室のwebサイト。
さっそく、ニュースで報じています。

■「慶應義塾大学理工学部 物理情報工学科:齊藤研究室」(慶應義塾大学)

10/11現在、『Nature』日本版のwebサイトには、該当する号の表紙が掲載されており、「今週のハイライト」も読むことができます。

■「Nature Asia-Pacific」

【今週のハイライト】
物性|熱の入ったスピントロニクス
The heat is on spintronics

1821年、T J Seebeckは、熱から電気が発生しうることを発見した。この熱電効果、すなわちゼーベック効果は、発電に使われたり、熱電対で温度検知に使われたりしている。熱電対では、ゼーベック係数、すなわち温度差に対する発生電圧の比で定義される値が異なる2つの金属が接合されている。理論的には、熱電対の「スピントロニクス」版が存在すると考えられるが、今回、実際にそれが見いだされた。内田健一(慶応義塾大学)たちは、最近開発されたスピン・ホール効果に基づくスピン検出技術を用いて、スピン・ゼーベック効果を初めて実証し、またこの効果を使って、数ミリメートルの距離にわたって純粋なスピン流、つまり電荷の流れを伴わないスピンの流れを得た。スピン・ゼーベック効果は、「スピン電力(spin power)」を発生してスピントロニクス・デバイスを駆動できる。これは、サーモスピントロニクスへの道を開くものである。
「10月9日号のトップニュース (PDF)」(Nature Asia-Pacific)より)

一人の学生さんの名前が、研究チームのリーダーとしてこうして紹介されるというのは、かっこいいですね。

ノーベル賞の業績はもちろんですが、こういった成果も広くメディアが紹介していくと、中・高生は科学研究をよりリアルに感じられるかもしれません。
全国の理科教員の先生方は、ぜひ、今週の『Nature』を読まれてみてください。

以上、マイスターでした。

※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。