マイスターです。
さて、日曜日になりましたので、今週も一週間の教育ニュースの中から、いくつかを選んでご紹介します。
【「国際水準か否か」参加大学募集。】
■「第1希望『工学』で報告 OECDの大学版学習評価」(47NEWS)
中教審のワーキンググループは30日、大学などを対象に経済協力開発機構(OECD)が計画している「高等教育の学習成果評価」(AHELO)の試行調査に、日本からは「工学」を参加分野の優先希望第1位として報告することを決めた。
2位以下の分野は、卒業生が企業でどの程度の成果を出しているかなどを測る「背景情報」、批判的思考力や問題解決能力などを含む「一般的技能」、「経済学」の順。
(上記記事より)
↓経済協力開発機構(OECD)が、国際的な高等教育の評価基準を作成しているということは、以前の記事でもご紹介しました。
(過去の関連記事)
■OECD、国際的な大学教育評価方法の策定に向けて
これを受けて文部科学省が、それに参加する分野として、優先希望第1位に「工学」を、2位以下として「背景情報」、「一般的技能」、「経済学」などを選んだということです。
工学系には既に、「日本技術者教育認定機構(JABEE)」という団体による、技術者教育に関する認定の仕組みがあります。工学系の学会や大学関係者、企業などによって自主的に運営されているもので、海外諸国の技術者教育機構とも積極的に連携し、「国際水準の技術者」を育成するカリキュラムなどを認定することに力を入れています。
このような基盤がある上、工学系ではもともと国際水準を意識する教員も多く、スムーズに物事を進めやすいと判断されたのでしょう。
OECDは本格実施に向け、各国の希望を調整し、2010年までに試行調査をする考え。各分野には4カ国前後から、大学など10機関程度の参加を想定している。
文部科学省は日本の参加分野が決定した後、各大学などに参加を募る方針。
(上記記事より)
とあります。おそらく、JABEE認定に力を入れている大学が手を挙げることになるでしょう。
ただ、JABEEは学科やコース単位での認定だからいいのですが、外部の認定を「工学部」という単位で受け入れることになるのだとしたら、簡単ではないと思います。
大学の場合、学科によってカリキュラムも、教育方針もバラバラであることが少なくありません。機械工学科は外部の認定を受けるのに積極的だけど、電気工学科は消極的、なんてこともあり得ます。
学部単位での参加募集には、課題もありそうです。
【「建学の火」。】
■「東海大『建学の火』を採火 清水区の鉄舟寺」(静岡新聞)
東海大は4日、大学ゆかりの静岡市清水区の鉄舟寺で「建学の火」の採火式を行った。建学の火は全国の東海大系列の大学、短期大学に運ばれ、11月に各キャンパスで開かれる「建学祭」でともされる。
採火式は建学祭を前に実施している恒例行事。東海大の前身の航空科学専門学校が同区三保に開校した当時、鉄舟寺の一部を学生寮として使っていたことが縁で、長年続いている。
(上記記事より)
東海大学の「建学の火」。
毎年、建学祭のために静岡市の鉄舟寺で採火され、各キャンパスに運ばれているのだそうです。
オリンピックの聖火がギリシャのオリンピアで採火されることはよく知られていますが、それに倣ったものでしょうか。
東海大学のキャンパスは北海道から熊本まで存在するので、火を運ぶのも大変そうです。
【立教大学は甘酸っぱかった。】
■「学生が企画シフォンケーキ 甘酸っぱ~い『立教味』」(読売オンライン)
“立教風味”のケーキおひとついかが?――立教大学(豊島区西池袋)の学生らが、大学のイメージを見た目や味で表現したシフォンケーキ「セントポール」を商品化した。キャンパス近くの店で24日に発売を始めたところ、連日売り切れの人気。アイデアを出し合った学生らは「ケーキの味を通して母校の魅力を知ってもらいたい」と話している。
商品を企画したのは、同大経済学部・広江彰教授のゼミに所属する吉田旭宏さん(21)ら2年生5人。同ゼミは地域活性化を研究し、これまでも「池袋味」の地ビール開発や池袋をテーマにした写真展などを開いてきた。
広江教授から「立教大学のオシャレな魅力を形にしたら」とのテーマを与えられた吉田さんらは、今年2月から過去10年分の雑誌記事や映画を調べ、母校がどう描かれているかを分析。「伝統的な建物と、季節ごとに変化する景色」というキャンパスの魅力を商品で表現することに決めた。
(略)創設当初の大学の通称から名付けたケーキ「セントポール」は、赤みがかったイチゴ風味の生地をキャンパス全体に見たて、よもぎの葉やピスタチオナッツを練り込んで夏の緑を、さらにラズベリーをちりばめて秋のキャンパスに絡まるツタの紅葉を、それぞれ表現している。甘さと酸っぱさがほどよく絡み合った風味が自慢だ。
(上記記事より)
大学のゼミが商品を開発することはたまにありますが、こちらは立教大学のシフォンケーキ。
↓既に、東京ウォーカーのサイトにも登場している人気ぶりです。
■「おみやげにも! 立教生が作った池袋の新銘菓とは?」(東京ウォーカー)
地域活性化を学ぶ中で誕生した商品だとのこと。
どうやら、良い事例になりそうですね。
【インド:学生会の選挙が国政に影響?】
■「学生会役員選が過熱『総選挙の前哨戦』 インドの名門大」(Asahi.com)
インド有数の名門デリー大学で学生会の役員選挙があり、国政を担う与党国民会議派と最大野党インド人民党傘下の学生組織が先月激突した。会長は6年ぶりに人民党が奪還したが、副会長、書記長など残る3ポストは国民会議派が占め、両陣営が「勝利宣言」する結果となった。
デリー大は市内に系列カレッジなど85のキャンパスがあり、うち51キャンパスが学生会に所属。「有権者」は8万5千人に及ぶ。過去の役員から政府の閣僚や党幹部が輩出していることから、各政党は現役役員を政治家候補と期待。今回の役員選挙は、来年前半の総選挙の「前哨戦」としてメディアも注目し、地元テレビのシュウェタ記者は「年内のデリー首都圏議会選などに向けた党勢を測る物差し」と話す。
国民会議派系組織のクリシュナ報道官は「デリー大は全国から学生が集まり、インドの縮図。結果が全国の支部の活動を刺激する」と言う。
(略)会長ポストを譲った会議派側は「我々の方が多くの票を得た。協力するかどうかは相手次第」。会の運営は呉越同舟の駆け引きが続く気配だ。
(上記記事より)
日本ではちょっと見られない風景です。
記事によれば、各陣営の選挙費用は500万ルピー(約1120万円)にのぼるともいわれる、とのこと。
なんだかこの記事を読むだけだと、大学のことよりも、その後ろに控えている政治団体の利害の方が優先されているような気配を感じないでもありません。
【アメリカ:50年間記憶に残り続けた独自単位「スムート」。】
■「MIT独自の長さ単位『スムート』誕生50周年 米国」(CNN)
マサチューセッツ州ケンブリッジ(AP) 米マサチューセッツ工科大学(MIT)の学生が編み出した独自の長さ単位「スムート」が今年、誕生50周年を迎えた。MITでは4日、スムート50周年を記念して、単位の基準となったオリバー・スムートさんが出席する式典を開催した。
オリバー・スムートさんは、1958年に所属していた学生の社交クラブ「ラムダ・カイ・アルファ」の中で最も身長が低かったことから、クラブの他メンバーがスムートさんの身長を基準に、街に架かる橋の長さを測ることを計画。
スムートさんが橋の上に寝転がり、頭と足先部分に印をつけて橋を測り、マサチューセッツ・アベニュー橋の長さが「364.4スムート」だと確認した。
当時、スムートさんの身長は5フィート7インチ(約171センチ)だった。橋には現在も、スムートで測定した後が残っており、MITの新入生が毎年、描き直し続けているという。
スムートさんは卒業後、社会に出てから工業分野の標準化組織、米国規格協会(ANSI)の会長を務めた。記念式典では、橋に埋め込まれる予定の記念盾が贈られ、スーザン・ホックフィールドMIT学長からは、「この盾は、橋を渡る歩行者の気分を明るくさせるでしょう」と祝福の言葉を受けた。
(上記記事より)
MITには、「MIT hack」と呼ばれる伝統文化(?)があります。
学生達が、大学に無断でキャンパス内に仕掛けるいたずらの数々のことです。
(参考)■「ハック」(MIT Sloan 101)
上記の記事で紹介されている、橋に描かれた「スムート」も、元々はこのMIT hackのひとつ。そんな他愛もないいたずらが、50年も維持されてきたというのは、面白いです(地元の警察の方々にとっては迷惑だったかもしれませんが)。
エリートであるMITの学生達の、愛すべき一面かもしれません。
そして、それを公式に祝福してしまうMITも、ちょっと素敵です。
この単位の元になった「スムート」さんが、工業分野の標準化組織である米国規格協会(ANSI)の会長を務めたというのは、偶然なのでしょうが、あまりにも出来すぎのエピソードですね。
以上、今週のニュースクリップでした。
今週も一週間、本ブログを読んでくださいまして、ありがとうございました。
来週も、お互いがんばりましょう。
マイスターでした。
※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。