マイスターです。
大学というのは、何かと世間の注目を集める存在です。
毎日、大学関連のニュースに一通り目を通していますが、以前よりも、はるかにその量が多くなっている気がします。大学に関係する報道が、増えているように感じます。
大学スポーツの話題だとか、芸能人が大学に入学したとかいう話題も多く混じっていますが、学術研究の成果や産学連携の発表、あるいは奨学金や入試についてなど、大学改革に関する話題も増えています。(ちなみに一番増えたのは、学生や教職員が起こす不祥事の報道です)
以前ならマスメディアが取り扱うこともなかったような話題も、今は各紙・各メディアがこぞって取り上げているのかなと思います。
しかしその報道は、いわゆる有名大学、難関大学と呼ばれるところの話題に集中しています。
有名大学の方が広報体制が充実している……という面もあるかも知れませんが、それだけが理由ではないでしょう。
さて、今日はこんな出来事をご紹介したいと思います。
【今日の大学関連ニュース】
■「一橋大、『観光業MBA』 09年4月から新課程」(NIKKEI NET)
一橋大学は2009年4月から、観光サービス業の経営学修士(MBA)課程をつくる。ホテルや旅行会社、航空会社など観光分野の経営者を育てるのが目的で、経済産業省と共同で教育課程(カリキュラム)をつくる。外国人観光客の急増なども踏まえ、観光サービス業や地域の活性化につなげる考えだ。
新設するMBAコースは「ホスピタリティ・マネジメント・プログラム」。教育課程は09年1月にもまとめる。現在、日本には観光サービス業に特化した経営手法を学ぶMBAはない。
(上記記事より)
■「大学院に『観光MBA』、経産省と一橋大が連携し開設」(読売オンライン)
経済産業省は、一橋大と連携し、2009年度に同大大学院商学研究科に観光に特化したMBA(経営学修士)コースを開設する。
旅行会社やホテルなどの経営幹部や、各地の自治体や観光協会などで地域おこしのリーダーとなる人材を育成する狙いがある。
すでに北海道大や和歌山大、立命館大などが学部や大学院に観光コースを設置しているが、MBAは一橋大が初めてとなる。
(上記記事より)
というわけで、NIKKEI NET、読売オンラインで現在も閲覧できるこの報道。
一橋大学が来春、経済産業省と連携して、観光に特化したMBA課程を開設するというニュースです。
コースの目的やターゲット、さらにはコース名称まで報じられています。
既に日経、読売と提携している多くのニュースサイトでも同じ内容が報じられているほか、ブログ等でも取り上げられています。
確かに興味深い内容ですので、読む人はたくさんいるでしょう。
で。
どれどれと思い、一橋大学のwebサイトにアクセスしてみると、そこには衝撃のプレスリリースが。
一部の新聞およびインターネット上のサイトにおいて、来年度より本学経営学修士コースに『観光MBAコース』が設けられるとの報道がなされました。この情報のソースは明らかでありませんが、本学としてそのようなコースを設置する予定はありません。関係各位にご迷惑をおかけしましたことについてお詫び申し上げます。
(上記記事より)
事実じゃないのですか!?
「この情報のソースは明らかでありませんが」とありますが、改めてNIKKEI NETの記事を見てみると、
外国人観光客の急増なども踏まえ、観光サービス業や地域の活性化につなげる考えだ。
新設するMBAコースは「ホスピタリティ・マネジメント・プログラム」。教育課程は09年1月にもまとめる。
……などと、とても細かく報じています。
関係者に取材をせずに書ける内容とも思えません。
大学関係者が情報ソースでなかったら、いったい誰がこんなことを話せるのでしょうか。
ちなみに、上記の読売の記事は、よく見ると
経済産業省は、一橋大と連携し、2009年度に同大大学院商学研究科に観光に特化したMBA(経営学修士)コースを開設する。
……と、主語が「経済産業省」です。
大学ではなく、経済産業省のどなたかが情報元かも知れません。
2つの記事で報じている情報に重複していない部分があるので、それぞれが、それなりに信用できる関係者に取材をしたのかなと思えるのですが、その内容を大学が否定しているというのは不思議です。
一体、どこのどなたがこういった情報を記者に話したのでしょう。
(ちなみに新聞社に質問しても、取材元がどこかというのは絶対に教えてもらえません)
いずれにしても、なんだか情報が錯綜している感じです。
リークというのはどんな世界にもありますが、大学として正式にコースを立ち上げるという内容なら、さすがに普通は、記者の方も大学の広報部に一度は問い合わせをすると思います。
ただ、ここからはマイスターの実感なのですが、メディアには、大学の広報担当者をあまり信用していない方が少なくありません。というのも、大学の広報部に電話をして物事が一発で解決することがあまりないからです。
大学の各学部・学科が企画しているイベントの情報だとか、教授が開発した新しい技術だとかいったことを、大学の広報部門は把握しきれていませんので、「○○学部事務室につなぎますので、少々お待ち下さい」といって2~3箇所の部署をたらいまわしされ、結局わからない、という結果になることが少なくないのです。
大学の広報部に連絡をするよりも、知り合いの教授などに直接電話をした方が、信頼の置ける情報を確実に素早く手に入れられる……そう考えているメディア関係者は、結構いらっしゃるのではないかと思います。
そんなわけで、大学が公式に把握していない(それも事実でない)動きがこうしてメディアで報じられてしまったとしても、メディアだけの責任だとは言い難いように、個人的には思います。
大学の広報体制を考える上で、興味深い事例です。
以上、マイスターでした。
※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。