北京オリンピックと大学(3):「母校の誇り」を大学で応援

マイスターです。

北京オリンピックも、すべての競技が終わりました。

■北京オリンピックと大学(1):関係者が北京へ! 盛り上がる大学
■北京オリンピックと大学(2):選手達がキャンパスで果たす役割とは

以前の記事でもご紹介したように、今回は大会が始まる前から、大学が

「本学○○学部○○学科の○○さんが、オリンピック代表選手に選ばれました!」
「みんなで、○○大学の先輩である○○選手を応援しましょう!」

……と、自校の在学生である選手、または卒業生の選手を積極的に応援する姿勢を見せていたのが印象的でした。

オリンピックの選手に選ばれるというのは、かなりの出来事。学園の仲間が世界の舞台で戦うわけですから、みんなで力一杯応援したいところですよね。選手本人やその家族も、きっと喜ぶでしょう。
在学生や卒業生などを巻き込み、こういった機会を盛り上げて学園の結束を高めるにも良いチャンスです。また、選手の活躍によって、大学の知名度やブランドイメージを向上させる絶好の機会でもあります。

さて、大会が始まってからは、各大学では同級生や恩師、後輩達などがキャンパスに集まり、競技する選手の映像を見ながら、声を枯らして応援していました。
今日は、メディアに登場した、「母校での応援の様子」を集めてみました。

吉田沙保里、伊調千春両選手の母校で、練習拠点の中京女子大(愛知県大府市)では、レスリング部の後輩ら約500人が大型スクリーンの前で陣取り、「いけいけ、沙保里」「押せ押せ、千春」と声をからした。
吉田選手の決勝戦。フォール勝ちで金メダルが決まると「やった」「2連覇だ!」という叫び声とともに後輩らがハイタッチ。レスリング部の西牧未央さん(21)は「連勝記録が切れた後の練習量は超人的。先輩らしい最高の試合でした」と目を潤ませた。
「吉田と伊調千の母校・会社 後輩・同僚が応援」(NIKKEI NET)記事より)

レスリング部の後輩で同大1年の大山礼佳さん(18)は、吉田選手について「最高の試合。最後もフォールで決めて格好良かった。沙保里さんが勝って泣いたのを初めて見たので感動した」と話した。
伊調千選手が決勝で敗れた際は、応援会場に大きなため息が漏れた後、2大会連続の銀メダル獲得に大きな拍手がわき起こった。同大1年の増尾優華さん(20)は「(メダルの色は同じだが)4年前とは違うことをやり遂げた」と言う。
(略)会場には付属幼稚園の児童らが作った応援旗や大漁旗などが飾られたほか、金メダルを首から提げた様子をプリントしたシャツなどを着て、大型スクリーン前で応援した。
「『最高の試合』『格好良かった』=吉田、伊調千春選手の母校〔五輪・レスリング〕」(時事ドットコム)記事より)

吉田選手と伊調千春選手の母校、中京女子大学(愛知県大府市)では大型スクリーンの前で、学生や職員、近所の住民らが観戦。直前に伊調選手が金メダルを逃すと悔し涙を流す後輩の姿もあったが、吉田選手の快勝に会場は歓声と笑顔であふれ返った。
「『いつか自分もメダルを』 2連覇に沸く地元や母校」(47NEWS)記事より)

まずは大会中、最も盛り上がっていたであろう、こちらの大学から。

女子レスリングで吉田沙保里、伊調千春両選手が登場したこの日、お二人の母校である中京女子大学では大型スクリーンが用意され、大勢の方が応援しました。
付属の幼稚園に通う児童が応援グッズを作るなど、学園あげての応援団。約500人というのは、大変な人数です。

かつて学生として自分と同じキャンパスに通っていた人が、世界の頂点で戦っている。
そんな「学園の誇り」である先輩を、学生も教職員も一緒になって応援するときの高揚感は、格別のものでありましょう。

しかもその翌日には、

伊調馨選手の母校、中京女子大学(愛知県大府市)では、大型テレビ2台とスクリーンで学生や教職員ら約300人が観戦。前日には同大出身で姉の千春選手が銀、吉田沙保里選手が金メダルを獲得しており、盛り上がりは最高潮だ。
試合が始まると「ニッポン、馨」「イケイケ馨、押せ押せ馨」の大合唱。手拍子に合わせて、日の丸を振った。アテネ五輪に続く連覇を達成した瞬間、会場からは「やったぞ」「おめでとう」と大歓声と拍手が送られた。
同大レスリング部2年の井上佳子さん(20)は「攻めづらそうで心配したが、普段の練習を見てきたので大丈夫と信じていた。お姉さんの分も頑張った」。表彰式で金メダルがかけられると、バスケットボール部2年、武部有加里さん(19)は「しびれた!大学の先輩で誇りに思います」と笑顔だった。
「五輪レスリング:盛り上がり最高潮 先輩応援の中京女子大」(毎日jp)記事より)

……と、同じく中京女子大学出身である伊調馨選手も金メダル。

世界一の先輩達と同じ学園のメンバーであることが、誇りに思える瞬間。
負けの悔しさも勝利の喜びも共有しながら、後輩達にとっては、大きく心動かされる二日間となったことでしょう。

北京五輪カヌー・フラットウオーター女子カヤックフォア五百メートル決勝が行われた22日、鈴木祐美子選手(32)と北本忍選手(31)の母校、武庫川女子大(兵庫県西宮市)では応援会が開かれ、この種目では日本勢初の6位入賞という快挙に沸いた。
会場となった同大学メディアホールにはカヌー部の後輩や恩師ら約120人が集まり、大型テレビにインターネットの速報サイトを映して試合結果を見守った。6位入賞が確定すると、「やったー」と歓声がわき起こった。
両選手を指導したカヌー部の橋本千晶コーチ(39)は「メダルを狙うと言っていたので、2人にとっては不満かもしれないけど入賞はすごいこと。本当にうれしい」と喜んだ。
カヌー部主将の4年、保喜ちひろさん(22)は「すごい成績をだした先輩にあこがれます。先輩の活躍を糧に私たちもがんばっていきます」と声を弾ませた。
「母校沸いた! カヌー女子カヤック入賞のペアに」(MSN産経ニュース)記事より)

武庫川女子大学は、カヤックで入賞を果たした鈴木祐美子選手と北本忍選手の母校。
競技当日は、キャンパスで応援会が開かれました。
カヌー部後輩の、「あこがれます」というコメントが素敵です。

北本選手については、↓こんな記事もありました。

北本は「6位という成績より、自分たちの力を出し切ったという意味で満足している。最初から最後まで自分たちのペースで刻むことができた」と実感を漂わせた。
武庫川女大でカヤックと出会った。小学3年から高校までの10年間、バレーボールをしていた運動能力の高さで、大学3年で日本代表入り。母校ではこの日、カヌー部員ら約120人が集まり、インターネットの速報を見ながら応援した。
(略)武庫川女大OGの渡辺麻子が1996年のアトランタ五輪に出場したことに影響を受け、五輪を意識し始めた。同じことを後輩に伝えるため母校を訪れると、海外の選手のビデオを見せて解説。北本1人と後輩4人のハンデ戦をして勝つなど、世界のレベルの高さを示してきた。
23日は竹屋とカヤックペア五百メートルの決勝に挑む。カヤックの素晴らしさを教えてくれた武庫川女大にメダルを持って凱旋する。
「日本初6位入賞!北本、母校に恩返し…カヌー」(スポーツ報知)記事より)

武庫川女大学でカヤックと出会ったこと、そして同大OGのオリンピック出場に刺激を受けたことが、北本選手のオリンピックへの道の始まりだったのですね。
この大学に入学していなければ、日本代表としてオリンピックに行くこともなかったかもしれません。
大学との出会いで、運命が変わったというわけです。

今回の北本選手、鈴木選手の活躍を目の当たりにした後輩の中から、また次の日本代表が生まれていくのかもしれません。そう思うと、わくわくしますね。

天理大学関係者が多く出場している北京五輪のホッケー女子代表「さくらジャパン」を応援しようと、予選リーグ最終戦が行われた18日、天理市三島町の天理本通り商店街の「てんだりーcolors」で住民ら約60人がテレビ観戦した。
同大学が県民挙げて応援しようと、10日の予選リーグ初戦に続いて企画。橋本武人同大学長ら大学関係者や周辺の住民が参加し、商店街の通行人も足を止めて選手の活躍を見守った…
「声援選手に届け-ホッケー女子予選リーグ最終戦」(奈良新聞)記事より)

こちらはホッケーで多くの関係者が代表に選ばれている、天理大学の話題。
同大では、商店街の中に、住民が気軽に参加できる会場を用意したとのこと。

学長も、町の皆さんと肩を並べての応援。
地元で応援する一体感が得られそうで、なかなか素敵です。

「がんばり屋のあの子のことだから、最後は気力だけで泳ぎ切ったのでしょう」。演技の最後に気を失った小林寛美の母校、大阪市立大(同市住吉区)で観戦した祖母の由枝さん(81)は、孫娘の奮闘に声を震わせた。
大型スクリーンが設置された会場では、学生ら約130人が応援。小林が序盤のリフトでジャンプを成功させると、大きな歓声が上がった。
(略)文武両道で平成15年には、一般入試で大阪市大に入学。学生課の担当者によると、トップクラスの成績だったという。大学3年で日本代表に選ばれたが、私立大とは異なり単位などの優遇措置がないため、授業はほとんど休まなかったという。
「シンクロで気を失った小林『がんばり屋だから…』心配する家族、同僚」(MSN産経ニュース)記事より)

競技の直後に失神したことが大きく報じられた、シンクロの小林寛美選手。
母校、大阪市立大学では、ご家族とともに、大勢の大学関係者が応援していました。
失神が報じられた瞬間は、応援団も心配されたことでしょう。

(「私立大とは異なり単位などの優遇措置がないため、授業はほとんど休まなかった」という記述が印象的ですが、ちなみに私大であっても、すべての大学が「優遇」をしているわけではないと思います。念のため)

【体操男子団体総合、銀メダル「お疲れ様」--印旛の順天堂大】
体操の男子団体総合に出場した冨田洋之(27)、鹿島丈博(28)両選手の母校で、坂本功貴選手(21)=4年=が在学中の順天堂大学さくらキャンパス(印旛村)では、体操部25人を含む学生ら約200人が学生ホールで応援した。
大型テレビの置かれた会場には、メダルの期待に胸を膨らませた学生らが続々と集まった。冨田、鹿島、坂本の3選手がそろって出場したあん馬では、選手の名前を記したボードを頭上に掲げて声援を送った。
トップの中国との差が広がると会場には重苦しい雰囲気が漂った。前半を終えた時点で、メダル圏外の苦しい展開となったが、体操部の河野敦さん(20)=2年=は「後半は得点の出やすい3種目。普段通りの演技でメダルには手が届くはず」と落ち着いて観戦。最後まで逆転を信じて声援を送っていた体操部主将の新島卓也さん(21)=4年=は「跳馬でバランスを崩した坂本が倒れなかったのは逆転への執念だったと思う」と同級生の活躍に笑顔を見せた。
シドニー五輪の代表で、現在は体操部のコーチを務める原田睦巳さん(32)は「金を目指していた選手たちに悔いは残るだろうが、雰囲気にのまれずきっちりと演技ができていた。今は『お疲れ様』と言ってあげたい」と話した。
「北京五輪:体操男子団体総合、競泳女子百メートル背泳ぎ 関係者ら熱い声援 /千葉」(毎日jp)記事より)

体操の3選手が関係者だという、順天堂大学。
さくらキャンパスで学生や関係者が見守る中、先輩達がメダルへの逆転劇を実現しました。

トップアスリートらしく勝利への執念を持ち、最後まであきらめずに冷静に競技をやりきった先輩達の姿から、後輩の皆さんが学ぶことは多いでしょう。

……と、まだまだご紹介したい記事はあるのですが、長くなってきましたので、続きは明日にします。

以上、マイスターでした。

※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。