マイスターです。
さて、日曜日になりましたので、今週も一週間の教育ニュースの中から、いくつかを選んでご紹介します。
【研究テーマを「着る」】
■「自身の研究テーマをTシャツで表現-北大でデザインワークショップ」(札幌経済新聞)
科学技術コミュニケーターを育成する北海道大学科学技術コミュニケーター養成ユニット(札幌市北区北10西8、以下コーステップ)は7月27日、教職員や学生が普段行っている研究をTシャツにデザインしてPRを行うデザインワークショップ「Multicast Yourself~研究テーマをTシャツにデザインしてみよう~」を開催する。
同じ大学構内にいながら、他の研究者がどんな研究や活動をしているのか互いに知る機会は少なく、デザインを通してコミュニケーションを図るため初めて企画した。同大学には芸術系の学部がなく、デザインの本質的な考え方はあまり浸透していないため冒険的な試みとなるが、応募者数が定員の50人を越えるなど、関心の高さがうかがえる。
(略)当日は、同大学の学部生や院生、教員などのほか、佐伯浩学長と逸見勝亮副学長がゲストとして参加。参加者らが普段取り組んでいる研究をテーマに、その姿勢やモットー、研究を別の表現へ転換するなど、自由な発想でTシャツをデザインする。完成後はT シャツを各自着用し、参加者同士のコミュニケーションを図る。最後に、グループごとに代表者を選出してプレゼンテーションを行い、その中から佐伯賞と逸見賞が発表される。ワークショップは一般の見学も可能。
コーステップの大津珠子特任助教は「デザインは異文化のコミュニケーションを促す共通言語。デザインを知らない北大の学生や研究者にも、デザインの持つ力に気付いてもらい、相互の『つながり』を発見してもらえれば」と期待を寄せる。
(上記記事より)
研究者、および研究者のタマゴの皆さんを対象にした、ユニークなワークショップ。
以前の記事でも少しご紹介した、「北海道大学科学技術コミュニケーター養成ユニット」の企画です。
確かに専攻や、普段キャンパスで過ごしているエリアが違っていたりすると、同じ大学でも、どんな研究をしているかお互いによく知らないということもあるでしょう。
「自分は○○を追究しています」というのが、視覚的に表現されていたら、面白いですよね。
お昼休みの廊下や食堂などで、「おや、もしかして自分と似たようなことをやっている人?」なんて発見ができるかも。
完成後はT シャツを各自着用する、というのもいいですね。
キャンパス内で「マイ研究Tシャツ」が流行ったら面白そうです。
【香しい専攻。】
■「大同工業大が『香り』専攻分野設置へ 2010年度、心理の影響など研究」(中日新聞)
大同工業大(名古屋市南区)は、香りやにおいが人の精神状態や行動に及ぼす影響と、実生活への応用を研究する「かおりデザイン専攻」を2010年度に設置する。香りを大学の専攻分野として設けるのは全国でも初めてという。
昨今、香りやにおいを製品やサービスに生かす需要が高まっている。高齢者の施設、病院、ペットを持つ家庭ではにおいの除去が利用者らの生活の質を高め、自動車運転時は、香りがリラックス効果や安全性を高めることが分かってきた。
同専攻は情報学部内に設置。具体的には、香りやにおいと心理との関係、空間における香りの効果などを学ぶ科目を設定、企業との共同研究も進める。
同大は創立70周年を機に、来年4月から「大同大学」への校名変更に伴い、工学中心からの脱皮を目指す。新専攻はその一環。27日に1期生となる高校2年生対象のオープンキャンパスで新専攻をアピールする。
(略)沢岡昭学長は「工学系の大学として女子学生や受験生の親へのアピールが弱かった。校名変更をきっかけに、工学に基礎を置きつつ新分野を育て、ユニークな大学として付加価値の高い人材を育てたい」と話す。(上記記事より)
「香り」を総合的に研究することになると、心理学なども絡んできますね。
面白い分野になりそうです。
工科大学が心理学系の専攻を設けた例は、いくつかあります。
■「埼玉工業大学 心理学科」(埼玉工業大学)
■「金沢工業大学大学院 心理科学研究科」(金沢工業大学)
もともと工科系の大学では、デザインや人間工学など、技術を応用し、技術と人間を橋渡しするための学問分野を扱っているケースが少なくありません。
心理学も、工科系大学の研究・教育環境と組み合わせることで、面白いひろがりを見せそうです。
【研究成果で大学を「一般生活者に」売る。】
■「大学売り出す『研究成果』」(読売オンライン)
研究で得られた成果を商品化して積極的に売り出そうという活動が国内の大学で盛んになっている。“大学ブランド”の商品を広報媒体として活用しながら、研究そのものをPRする狙いもある。
国立大学協会によると、全国の国立大が、研究を生かした商品開発や販売に積極的に取り組むようになったのは2004年4月の大学法人化以降。同協会が今年2月の時点でまとめたところ、55の国立大で商品の販売を始めたり、製品化に成功したりしていた。
この中には“大学ブランド”として認知されつつある商品もある。
(略)小学館の情報誌「DIME」も06年4月~07年12月にかけ、国公私立37大学の農学系39の研究室から誕生した商品を紹介した。
(略)DIMEで、この特集を企画した松元浩一・前編集長は「少子化の中、優秀な学生を集めるには研究成果のPRが必要な時代になっている」と話している。
(上記記事より)
大学が研究成果で勝負するのは当たり前ですが、研究成果のPR先が学会や産業界ではなく、受験生や一般生活者であるという点がポイント。
『DIME』で紹介された「大学は美味しい!」の研究成果などは、その代表的な事例かと思います。
↓以前、こちらの記事でもご紹介しましたので、ご興味のある方はどうぞ。
■『大学は美味しい!!』 フェア(1) 「味」を通じて大学を知ろう!
■『大学は美味しい!!』 フェア(2) 大学はやっぱり美味しかった!
■『大学は美味しい!!』 フェア(3) 大学の情報をイベントで発信
【日中の博士事情。】
■「さまよう『博士』、修了者の25%が『浪人』」(読売オンライン)
■「第12回 『女博士』の悲哀~『第三の人類』扱いされる高学歴の女性たち」(NB online)
博士課程修了者についての、日本と中国の記事。
後者は「女性の博士」についての話題であり、記事の焦点は少し異なりますが、苦労して学んだにもかかわらず、大変な思いをしているという点はなんだか似ているなぁと思います。
【アメリカ人留学生も大変。】
■「ドル安、米人留学生に重い負担」(MSN産経ニュース)
ドル安により、留学中、あるいは留学を希望する米国人が頭を痛めている。
海外に留学する米国人は毎年9%ずつ増えている。10年前に8万9242人だったが、2005-06年度には22万3534人になった。
しかし、ドル安、特に多くの学生が向かう欧州の統一通貨ユーロに対する価値の低下が学生の負担を重くしている。留学先のトップは英国。次いでイタリア、スペイン、フランスとなっており、ドイツも上位10以内に入る。
ロンドンの地下鉄の1カ月通学定期は130ドル(約1万3650円)。米国で60ドル程度の食事がパリでは95ドルにもなるという。
2年前、1ユーロは1・27ドルだったが、現在は1・58ドル前後。これにより、1000ドル程度だったアパートの家賃が、1245ドルに上がった勘定になる。英ポンドに対しても、1・84ドルだった2年前から2ドルに下がった。ドルを持つ人にとっては、ほぼ9%の物価上昇に等しいという。
セントラル・コネティカット大のニコール・ソーントンさんは来学期からローマに留学する。そのために、今夏は4つのアルバイトを掛け持ちして資金をためているという。
(上記記事より)
アメリカの学生に関する記事。
こういった通貨価値の変動で影響を受けるのは、アメリカ人学生だけではありません。アメリカに留学するために大金を投じてきたような方は、「うんうん、アメリカの方々も、少しは苦労しなさい!」なんて感じてしまうところかも知れません。
しかしこれ、広い目で見れば、アメリカ以外の国の方にとっても、影響があるニュースです。
政治・経済を始め、多くの分野で圧倒的な力を持っているアメリカの方々が他国で学び、他国の文化を知り、他国にネットワークを張ることには、大きな意義があります。
例えば、「大統領になるまで、一度も外国に行ったことがない」なんて方が超大国・アメリカのトップになるのと、「学生時代、夏が来る度に、海外の大学のワークショップに参加していた。アジアもヨーロッパも行ったし、そのときに出来た友達も多い」なんて人がトップになるのと、どちらが歓迎できるかと言うと……多くの国の方にとっては、おそらく後者なのではないでしょうか。
力を持った国だからこそ、その国の学生さんにはなるべく海外留学を体験して欲しいと、個人的には思ったりします。
「招く側」の国が、大国の学生を対象にした奨学金を用意するというのも、国策としてアリではないでしょうか。
(その前に、国内の博士人材を活かす方が先だ、という意見もありそうですけれど)
以上、今週のニュースクリップでした。
今週も一週間、本ブログを読んでくださいまして、ありがとうございました。
来週も、お互いがんばりましょう。
マイスターでした。
※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。