高知大学 「いなかインターンシップ」の取り組み

マイスターです。

最近では、インターンシップに参加される学生の方が増えてきているようです。
多くの場合、大学3年生の夏に、都市部の企業に行かれているのかなと思います。

そんな中、ちょっと変わったインターンシップを行っている大学がありましたので、ご紹介したいと思います。

【今日の大学関連ニュース】
■「高知大 農山村でインターン」(読売オンライン)

高知大は、2年生が県内の農山村で働く「いなかインターン」を実施している。環境問題など地域の課題を広く見渡す視野が育つと好評で、同大はこれを発展させて、行政や企業、民間活動団体(NGO)の環境分野で活躍できる人材の育成に乗り出した。
高知市中心部から車で約1時間。室戸岬の手前にある奈半利(なはり)町で、同大大学院修士1年の堀川奈津さん(23)は、2005年に半年のインターンを経験した。地元の市民団体で、子供向けのイベントの企画運営などを手がけたが、その後も有機農業の稲作に挑戦したり、子供たちのキャンプを実施したりするなど、同町との交流が続く。堀川さんは「いなかの良さとともに、農業経営の厳しさなどの課題も感じた」と話す。
いなかインターンは、都会の企業中心だった長期就労体験を、農業や林業などにも広げようと、堀川さんたちの体験を参考に、06年から本格的に始まった。学生たちは数日から半年、主に県北部で農家や林業会社などに住み込み、仕事に取り組む。受け入れ先の紹介は、地元の教育系出版社「南の風社」が協力。これまでに約70人が参加した。
有機農業や、持続的な森林経営に取り組む受け入れ先も多く、豊かな自然に囲まれた農山村でのインターンは、環境問題を考える良い機会になっている。ごみや汚水の排出削減に取り組む山荘しらさの小森隆一マネジャー(41)は「日々の作業を通じて学生たちは、意識も行動も大きく成長する」と話す。
こうした特徴を生かし、同大は今年度から、いなかインターンを発展させて、環境分野の人材育成を目指す3年間のプログラムを始めた。地域で活躍するNGOや農家が環境問題について1年生に講義を行うほか、3年生ではインターンで気付いた地域の課題に、教員の指導を受けながら取り組み、問題解決能力を育てる。
(上記記事より)

そんなわけで高知大学の取り組みです。

受け入れ先の紹介で、南の風社が協力。
↓こんなサイトも立ち上がっています。

■いなかインターンシップinREIHOKU

また、コーディネートに取り組んでいる南の風社の方が、若者たちの様子についての文章を、高知県教育委員会のブログに寄稿していました。
↓インターンシップの雰囲気が伝わるかと思います。

■「若者は田舎で修行する~いなかインターンシップの試み~『山荘しらさ』編」(『風、きらり』)

「ゴールデンウィーク過ぎたら、音をあげて山を下りてくるんじゃないかなあ……」
実は、そう思っていた。高知大学2年生の小倉拓人くん(以下、おぐちゃん)が、4月から半年の予定で、愛媛県との県境、石槌山系にある山荘しらさでインターンシップをしている。
ネットもない、携帯も圏外。4月は重労働の小屋開け準備で、客も来ない。おぐちゃんが山にあがった直後には、大雪も降った。「人恋しい」……風のたよりにそんな彼の声も聞こえてきた。小屋開け準備が終わると、一転して怒涛のようなゴールデンウィーク。彼は、東京のITベンチャー会社か、山荘か、インターン先を最後まで迷っていた。そんなこともあったので、半年も続くかな……と心配していた。 
7月1日、高知大学の先生といっしょに、「中間モニタリング」のために山荘を訪ねた。このインターンシップは大学の授業になっていて、期間の真ん中で、受け入れ先師匠からの報告を聞いたり、本人へのアドバイスをしたりの、いわば“教育的指導”がある。
(上記記事より)

続きが気になる方はリンク元をご覧ください。

このように、教員とコーディネーターの方が一緒に、中間モニタリングを行っているとのこと。
慣れない環境で長期にわたって過ごすわけですから、本人が調子を崩したりしていないか、教育的な成果が出てきているかと、様子を見に行ったりするのは大事ですね。
ただ預けっぱなしというのではなく、丁寧に運営されているようです。

高知大学は、地域社会との連携を大学の理念に掲げています。また、環境問題の解決に関する教育・研究に力を入れているようです。そういった、大学が打ち出している特色と、この「いなかインターンシップ」の取り組みとに、ズレがありませんよね。
高知大学の人材育成に関する考え方を、社会に対して明確に発信できているのではないかと思います。

冒頭の記事の最後にあるように、この「いなかインターンシップ」の取り組みを元に、環境分野の人材育成を目指す3年間のプログラムも立ち上がりました。
成果を上げながら、少しずつ他の取り組みとも繋がって、発展していく。良いサイクルができているようです。

ちなみに高知大学は、長期のインターンシップを教育に活かす取り組みに、以前から力を入れています。

■「コラボレーション型インターンシップ」(高知大学)

■「平成16年度現代的教育ニーズ取組支援プログラム選定取組の概要及び選定理由:課題探求能力育成型インターンシップの開発」(文部科学省)

文部科学省の現代GPプログラムに採択されたこのプログラムは、なかなかユニークです。

ご存じの方もおられるかと思いますが、高知大学では最大6ヶ月のインターンシップを、最大14単位分の正式な授業としてカリキュラムに位置づけているのです。
(実際には14単位が一気にもらえるわけではありません。「CBI企画立案」、「CBI実習I~IV」、「CBI自己分析」、「キャリア開発講座」などいくつかの授業が設けられており、これらを全部履修しながら指導を受け、インターンシップをクリアすると、計14単位になるということです)

インターンシップに参加しようという学生は、実習でやってみたい課題を自ら発見して実習企画の立案を行い、プレゼンテーションをして企業から「選ばれ」なければなりません。そのための合宿もあるし、なかなかハードです。これだけやれば、相当に成長はするだろうなと思えるカリキュラムです。

長期のインターンシッププログラムは、一歩間違えると、単なる教育の丸投げになりかねません。
しかし高知大学の取り組みは、学内の実行体制を含め、よく計画されているプログラムなのではないかとマイスターは思います。
独自の教育理念や教育手法による、他にないインターンシッププログラムにしようという意図を感じます。
外部の組織とも連携しながら、細かな工夫を重ねているようです。

こういった諸々の取り組みから、高知大学が目指す人材育成のあり方が、なんとなく感じられるように思います。
インターンシップが大学と地域とを繋げるとともに、大学の特色を社会に対して発信する仕掛けのひとつとして、有効に機能しているのではないでしょうか。

以上、マイスターでした。

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そう言えば、以前ご紹介した↓こちらの取り組みも、高知大学でした。

■中高生が外科手術体験 高知大医学部

山形大学といい、高知大学といい、最近、地方の国立大学の取り組みをよくメディアで見かけるようになってきたような気がします。
各紙がこぞって取り上げるような派手な取り組みではありませんが、魅力的な独自の取り組みを実践している大学が、少しずつ存在感を発揮し始めてきた。そんな印象です。

※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。