マイスターです。
さて、日曜日になりましたので、今週も一週間の教育ニュースの中から、いくつかを選んでご紹介します。
【参加者を絞ったオープンキャンパス。】
■「サロン形式でオープンキャンパス 静岡産大」(静岡新聞)
静岡産業大経営学部(磐田市大原)は31日、少人数を対象とした新方式のオープンキャンパスを初めて実施した。県内外から保護者、高校教諭を含め10人が参加した。主に大学ホームページで開催を知ったという。
教育内容や取得可能な資格、就職先などの説明、学生生活の紹介などに大坪檀学長が同席。学長は随時補足説明したり質問に直接答えたりして、学生の意欲を引き出し育てる大学だと強調した。フリートーキングの時間にはケーキも出た。
同学部は、このサロン形式の説明会を「SSUホワイトキャンパス」と名付け、6月14日と7月27日にも行う。従来通りのオープンキャンパスも開催する。(上記記事より)
人数を限定し、その分、より丁寧に対応をするオープンキャンパス。
人数を集めて、「いかに出会いの場を多く作るか」に主眼を置くことが多いオープンキャンパス。
ただ、マイスターも以前から、「いかに深くアプローチをして、確実にファンを確保するか」を狙い、敢えて人数を絞ったイベントを行うことも必要なのではと考えておりましたので、この静岡産業大学の取り組みは興味深いです。
こういった取り組みの場合、「どんな参加者をどのように集めるか」が肝。
静岡産業大学はwebサイトで告知したとのことですが、例えば、まず通常のオープンキャンパスを開催し、その中で「この人は揺れている!」と思った人を集めて少人数のイベントを開催する、なんて方法もアリかと思います。
【仕方なく有料化。】
■「東大:駐輪場を有料化 通勤客の無断利用で整備費用に」(毎日jp)
東京大は来年4月から本郷地区キャンパスの駐輪場を有料化する方針を決めた。自転車通学する学生や教職員らから年1回、登録料を徴収する。周辺にある地下鉄の駅の利用者による無断駐輪が後を絶たず、取り締まりの強化や駐輪場整備の費用を捻出(ねんしゅつ)するためだが、有料化は全国の大学でもほとんど例がなく、東大生も当惑気味だ。
同キャンパスは、赤門や安田講堂がある東大の中核で、敷地面積約56ヘクタール。周囲は住宅地で、近くに地下鉄の「本郷三丁目」「東大前」など4駅がある。東大によると、約10年前から、駅を利用する通勤客が自宅から乗ってきた自転車を大学構内に止めたり、卒業生がそのまま放置していくケースがみられるという。点字ブロックをふさいだり、構内の駐輪場(約6000台分)を占拠するなど深刻な問題になっていた。
このため東大は07年4月から登録制を導入。学校関係者には自転車を登録してもらい、登録シールを自転車に張って学外者と区別できるようにした。しかし、違法駐輪は減らず、07年度には撤去台数が1914台まで増加。監視や撤去にかかる人件費が負担になり、来年4月以降は登録料を徴収する方針を決めた。額は未定だが、駐輪場の整備費にも充てる計画だ。
(上記記事より)
登録シールで解決するかと思いきや、それでも違法駐輪が減らなかったとのこと。
大学キャンパスは、「外」に比べて隙が多いとか、取り締まりが緩いとかいったイメージを持たれているのかも知れませんね。
違法駐輪防止手段としての有料化。
さて、効果は出るのでしょうか。
【草の根奨学金、スロースタート。】
■「山形大:未来基金、目標10億円 達成は166年後? /山形」(毎日.jp)
目標達成は166年後?--。山形大学が今年度始めた「山形大学未来基金」で、結城章夫学長は20日の会見で「(大学OBなどから募る)寄付金の目標額は10億円」との構想を掲げた。だが開始約2カ月で集まった額は「100万円を超す程度」(結城学長)。このペースなら目標達成は2000カ月=約166年後になる計算だ。
(略)3月上旬から5月下旬にかけ集まった金額は約100万円。制度発足から2カ月以上過ぎた5月20日現在も、大学ホームページのトップページには、寄付呼び掛けの文言すら載っていない。
結城学長は「10億円あれば、年間1000万円の利息だけで奨学制度を回せる。目標達成は、5年かかるか10年かかるか分からないが、広く薄く集めたい」と意欲的だが、実現には余程の営業努力が求められそうだ。
(上記記事より)
「市民が支える奨学金」ということで、以前にもご紹介した、山形大学の取り組みです。
■「未来を築く学生を後押し 山形大が寄付募り奨学金制度」:ニュースクリップ[-3/16] 「早大と東京女医大、共同で『先端生命医科学センター』設立」で紹介
目標額まで時間がかかるのは予想していましたが、なかなか順調にはいかない様子……って、
「制度発足から2カ月以上過ぎた5月20日現在も、大学ホームページのトップページには、寄付呼び掛けの文言すら載っていない。」ってのはダメでしょう!
以前も書かせていただきましたが、この奨学金の性質上、大学を広く地域に知っていただく努力とセットでなければ成立しません。
マイスターが思うに、山形大学のこの制度には、実行と成果に対して責任を持つ担当者、担当部署が存在していないのではないでしょうか。
この取り組みに限らず、大学では、「制度を作ったら自動的に目標が達成される」と考えがち。
実際には、目標を打ち立ててからが大変なのです。
【塀の中で学位取得。】
■「インドネシアの刑務所では前科とともに学位も取得!?」(テンポ COURRiER Japon掲載)
ジャカルタにあるインドネシア最大規模のチピナン刑務所が、昨年末から面白い試みを始めている。それは刑務所内で大学の法学部課程の授業を受講できるというものだ。汚職罪などで逮捕されたエリート層が対象とされ、金曜と土曜の夕方から夜間にかけて授業が行われている。
汚職撲滅キャンペーンにともなって同国では高学歴の受刑者が増加傾向にあり、彼らが刑務所内の従来の教育課程では物足りず、飽き飽きしていたことがきっかけという。汚職罪や公職選挙法違反などで収監されていた元受刑者たちが、塀の中の“友達”のためにブン・カルノ大学に発案し、法務人権省も彼らの企画に賛同したのである。
学費は入学金が175万ルピア(約2万円)で、毎月35万ルピアの授業料がかかるが、3年半で学士号を取得することができる。経済的に苦しい者に対しては、寄付金によって奨学金が与えられ、今年は1億6500万ルピアの寄付金が集まったという。法務人権省の役員は「この試みがうまく行けば全国の都市部の刑務所で導入したい」と意気込んでいる。
(上記記事より)
雑誌「COURRiER Japon」の記事の一部が、ネットでも公開されていました。
「二度と犯罪を起こさないようにする」ということが刑務所の役割の一つなのだとしたら、この学位プログラムはなかなか悪くない取り組みだと思います。
本来、最も大学の学びを必要としている人達かも知れません。
【幹部のための芸術教育。】
■「幹部候補生へのアートな投資」(フランクフルター・アルゲマイネ COURRiER Japon掲載)
5年前、ドイツ産業連盟の文化部門が発案した進歩的プロジェクト、「ブロンバッハ・スカラシップ」。これは、厳しい選考基準で選ばれた未来の企業幹部候補の学生たちが、2学期間にわたり芸術家と触れ合い、多角的な視野を身につけてもらうことを目的とするワークショップである。
その内容は、現代文学や演劇、映画、音楽、写真、建築など多岐にわたる。理論を学ぶより実際の映画制作や舞台経験がメインだ。各方面の最前線の芸術と触れ合った学生たちは、その後のキャリア形成で優位に立つと期待されている。未知のものに心を開き、問題を異なる視点から眺め、自力で解決する術を身につけられるからだ。実際、研修を終えた卒業生たちは、大企業で活躍中だ。
(上記記事より)
大学からはちょっと離れますが、同じ「COURRiER Japon」からもう一本、興味深い取り組みを。
企業の幹部候補生のための、芸術家との交流ワークショップです。
海外、特にヨーロッパでは、芸術家が社会の中で様々な役割を果たすように制度が機能していて、しばしば感心させられます。
例えば、公共の建物を建てる際には、予算の一定割合を、地元の芸術家によるアート設置に充てなければならないなどの法律があったりします。
そういう下地があるから、芸術家も社会に貢献するプロフェッショナルとして社会の中で尊敬されているというわけです。
色々と、参考になる部分が多そうです。
以上、今週のニュースクリップでした。
今週も一週間、本ブログを読んでくださいまして、ありがとうございました。
来週も、お互いがんばりましょう。
マイスターでした。
※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。