マイスターです。
大学での学びにおいて、コンピューターの使用がもはや必須であることには、異論はあまりないでしょう。
調べ物をするにも、レポートを書くにも、コンピューターは欠かせません。
そんな中、こんな取り組みを行った大学があるようです。
【今日の大学関連ニュース】
■「大学のネット接続で個人PCが講義用に 京産大、システム開発」(京都新聞)
学生が個人所有するノートパソコンを大学のネットワークにつなぐだけで設定や使用できるソフトが全面的に変更され、講義用のパソコンへと様変わりするシステムを、京都産業大が開発した。国内の大学では例のないシステムで、学生がパソコンさえ持っていれば、大学で演習用のパソコンを常設する必要がなくなるという。
京産大は4月にコンピュータ理工学部を新設した。新入生の149人全員がノートパソコンの所有を義務付けられており、手持ちのパソコンを学校でも自宅でも活用できるよう、学部の大本英徹教授がシステムを開発した。
学生は教室で自分のパソコンをケーブルでネットワークにつなぎ、IDとパスワードを打ち込んで起動させれば講義用のパソコンとなる。個人が導入するソフトや設定に関係なく、大学側が設定した状態で動く。ネットワークから切り離せば元の個人用のパソコンに戻る。
(上記記事より)
京都産業大学コンピュータ理工学部の取り組みです。
こんなことが技術的に可能なんですね。初めて聞きました。
普通なら、学生の数に対し授業に支障がない分だけ端末をそろえて、その中にすべて同じソフトをインストールして……と考えるところですが、これなら、そんなことをする必要もなさそうです。
コンピューター理工学部は、学生全員にパソコンの所有が義務づけられているとのこと。
おそらく普段から、ノートパソコンを持ち歩いて、通常の授業や調べ物に活用するような生活をされているのだと思います。
そんな学生さんたちにとっても、学校の共同パソコンより、普段使い慣れている自分のパソコンの方が何かと便利でしょう。
ところでマイスターは以前、大学で働いていた頃に、「教室の配分」という仕事をしていたことがあります。
すべての学部学科から寄せられた時間割表(案)をもとに、その年の教室を割り振っていく作業です。
同じ時間帯に、同じ教室を別の学科が使おうとしていた場合は、どちらかのコマを移動させなければなりません。各学科間の調整をし、教室が重複しないようにするわけです。
(毎年まったく同じ時間割ならこんな作業は発生しないのですが、実際には新しい学部や学科ができたりカリキュラムが変わったりするので、毎年、調整は難航します)
そんなとき、一番調整が大変なのが、コンピューター室の配分でした。
いまどき、どんな学科に入学しても、コンピューターの演習は必ずあります。
というわけでまず、全学部全学科の1年生が、一週間のうち、必ずどこかでコンピューター室を使います。
しかもコンピューターの演習というのは大抵、せいぜい数十名かぎりの、少人数の授業です。
100人も入れられるコンピューター室はありませんし、演習ですから全員の作業をサポートする必要もあります。
したがって人数を絞るために学年をいくつかの組に分けることになります。コンピューター室の使用回数が増えますね。
さらに実際には2~4年生も、大学院生もパソコンを使うわけです。
情報系の学部学科があったりすると、演習がまた大変なコマ数になりますから、もう大変です。
で、授業をしたい時間帯というのは、(なぜか)どの先生も同じ。
なので、コンピューター室の奪い合いになります。
マイスターのいた大学はそれでもまだ端末数に余裕があったのですが、大学によっては数が足りず、
「本当はもっとコンピューターを使った授業がしたいけれど、端末の数が限られているから、演習系の授業の数を制限しよう」
……なんてことになったりしているかもしれません。
あるいは、大抵の大学では、授業で使っていない間はコンピューター室を開放しているのと思うのですが、時間割に余裕がないためにあまり開放されず、他の学生が使いたいときに使えない、なんてことになっているところもあるかも知れません。
そんなわけで、京都産業大学の取り組みには、
「学生が、使い慣れた自分のパソコンで授業に取り組める」
「他のコンピューターの授業を制限しないので、自由に演習系の授業が設定できる」
「大学の端末が、授業以外のことで利用できる」
……などなど、様々なメリットがあるように思われます。
このシステムの開発・維持にどのくらいのコストがかかっているのかは分かりませんが、うまくすれば、端末の整備に対する大学の設備投資も抑えられるかもしれません。
注目すべき事例だと思います。
以上、マイスターでした。
※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。