新設諮問大学の3分の2に、看護系の学部学科

マイスターです。

毎年、新しくつくられる大学や、その学部学科の名称・内容は、

・今、社会で何が問題になっているか
・今後、解決していくべき課題は何か

ということを示すバロメーターでもあります。
大学としては、やはり社会問題の解決に寄与する人材を育成し、世に送り出したいと思っているわけです。
聞き慣れない横文字や、漢字でも四文字以上の長い名称がつくような学部は、「これからは社会の問題を解決するため、こんな新しい学問分野が必要だ! そしてそれを学んだ人材が必要だ!」なんていう、大学人達の熱い想いの結晶でもあります(内容がわかりにくいものも結構ありますが……)。

でも、それだけではありません。

大学間競争が激化し、学生をなんとか獲得しないと経営が破綻するかもしれない現代では、

・今、高校生にどんな分野(のイメージ)が人気か
・今後、どんな学部学科が、学生を確実に集められそう(と思われている)か

という「大学を選ぶ受験生」側の意向が、こうした学部学科の計画に少なからず影響を与えていたりします。

また、

・教員が増えすぎて余っているから、その受け皿として
・ライバル校が同じような学部を作ったから、何となく横並び意識で
・学長や理事長など、一部の偉い人のこだわりで

などなど、どうかと思うような理由で学部や学科が作られてしまうケースも、ないとは言えません。

大学自体を新設する場合は、

・(特に公立大学の場合)地域への経済波及効果を期待する政策の一環で
・偉い人のこだわりで
・経営的に行き詰まった短大が、再生の期待をかけて四年制大学に転換

といったケースもあります。

世の中の動きを読み、日本や国際社会の将来のために作られた学部がある一方で、
大学の人事の事情や、一部の人の根拠のない主張など、ほとんど学内の都合だけで作られてしまう大学や学部もあるわけです。

さて、少し前、文科省のwebサイトで、「平成21年度開設予定大学等認可申請一覧」が公開されました。
業界人は毎年、チェックするリストですね。

今回の傾向は、いかがでしょうか?

【今日の大学関連ニュース】
■「看護学科、新設諮問大学の3分の2に」(医療・介護情報CBニュース)

諮問されたのは、4年制大学12校と短大4校、大学院大学1校、高専1校の新設。4年制大学のうち8校と短大の2校が、看護学科の設置を申請している。リハビリテーション関連の学科も、3大学、1短大から申請されている。
また、看護学科設置を申請した8大学のうち、千葉県立保健医療大、愛知県立大、日本赤十字秋田看護大の3大学は、短大の大学化や大学同士の合併によるものだ。他の5大学は弘前医療福祉大、日本医療福祉大、東都医療大、東京有明医療大、広島都市大。

(上記記事より)

上記は医療系メディアの記事。
どうして医療系の報道機関が大学の設置認可のニュースを取り上げているかというと、記事にあるように看護系、医療系の学部が際だって多いからです。

■「平成21年度開設予定大学等認可申請一覧」(文部科学省)

理由の一つは、看護学部のニーズが高まっているということ。

現在、看護師の就職は、空前の売り手市場です。
2006年から、看護師を多く抱えている病院は診療報酬を多く取れるように、制度が改正されたのです。
そのため大学病院を始め、多くの大病院が新米の看護師を奪い合う「争奪戦」を行っているという状況です。
また高齢化社会を迎えるに辺り、看護師資格を持つ方の活躍の場も増えることが見込まれます。
そんな社会の変化に対応するために、看護系学部が増えているという面はあるでしょう。

そして受験生の側でも、看護系は人気です。
「手に職がつく」というイメージは従来から強いですよね。
また、医療を学んで社会に貢献したいという意識を持つ人の数が最近、増えているようです。医師以外の医療従事者、いわゆるコ・メディカルのひとつとして、看護系学部に注目が集まっているのかもしれません。

ただ、これらに加え今回は、

「もともと看護・医療系の学科を持っていた短大が四年制大学に転換したことに伴い、看護学部を持つ大学が(見かけ上)増えた」

という要素も大きそう。いかにも現代らしい理由です。

経営的に厳しかった短大が追い詰められて四年制になったという、やむを得ない決断の結果なのか、
それとも「今、四年制の看護学部が人気だから」という、積極的な「攻め」の結果なのか、
どちらかというと、さて、どっちなのでしょうね。

いずれにしても、これだけ同時に新設されると、目立ちます。

ただ、看護師の就職が好調なのは、上述したとおり、制度が変わったから。つまり、一時的な要因です。
看護師の就職・退職のサイクルは比較的短めですから、常に一定の求人はあるでしょうが、今ほどの大量のニーズが今後もあるかどうかは、わかりません。

病院だって、看護師の数を減らさないために色々と工夫をするでしょう。
また一部の病院は大学と組み、退職した元・看護師に訓練を施し、再び現場に戻ってきてもらうという取り組みを始めています。新人を一から訓練するより、その方が確実で安上がりだからです。

こういった状況の中、果たして今のように看護学部を新設していって、大丈夫でしょうか。
日本の大学では、学部の新設はわりと容易に行えますが、学部の廃止や縮小は簡単にはできません。教職員を削減する決定は、教授会をなかなか通らないからです。
ちょっと心配です。

なお、教育系の学部、とくに「こども」に関する学部も多いですね。
こちらも短大が転換したケースが多いという点では、看護学部と同じですが、さて、今後どうなるでしょうか。

……と、他にも色々と見どころはありますが、このくらいにしておきます。

新設された大学や学部・学科には、良い教育をし、優れた卒業生送り出してくれることを期待してやみません。

ただ日本の大学すべてに言えることですが、学部を新設する場合は、その学部が何年くらいもちそうかということも頭の片隅に入れて置くことをオススメします。

以上、マイスターでした。

※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。