マイスターです。
興味深い記事を見つけましたので、ご紹介します。
【今日の大学関連ニュース】
■「育て日比の架け橋 NGOが大学設置・支援」(Asahi.com)
季節はずれの大雨が降った3月末、フィリピン南部ダバオ市のミンダナオ国際大学で小さな卒業式が開かれた。角帽をかぶったフィリピン人卒業生は40人。「おめでとう」「ありがとう」。会場に滑らかな日本語が飛び交った。
大学は02年、日比の懸け橋となる人材の育成を目指し、日本のNGO「日本フィリピンボランティア協会」(本部・東京都調布市)の支援で設立された。「日比の新しい関係を研究する拠点にしたい」と、網代正孝会長(69)は言う。国際、社会福祉、教育の3学科で学生は400人。日本語を必修とし、その教育水準の高さが評判を呼び、入学者が年々増えている。
開設時は日本からの寄付で基金を創設。その後は学費収入などで運営されている。日本人の「教育里親」による奨学金制度もあり、昨年度は21人が奨学金で就学した。
出発点は、ダバオの日系人支援だった。同市には太平洋戦争前、大きな日本人町があった。マニラ麻の栽培などで100年余り前に日本から移民が始まり、1930年代後半には2万人近くを抱える豊かな日系社会となっていた。
しかし戦争で家族は引き裂かれ、日本の敗戦で日系人の財産は没収された。日系人は貧困と差別に苦しみ、日系人であることさえ隠した。ダバオに日系人会ができたのは戦後35年も経た80年のことだ。
協会は、そんな日系人を助けようと90年に発足し、子供の教育支援をした。
(上記記事より)
というわけで、日本のNGOによってフィリピンに設立された、ミンダナオ国際大学のことを紹介する記事です。
上記の通り、もともとは日系人支援を目的にして発足した大学ですが、現在は日系人以外ではない、現地の方々が学生の中心。
全員が必修で日本語を学びながら、国際、社会福祉、教育の3学科で専門知識を身につけています。
■「ミンダナオ国際大学」(日本フィリピンボランティア協会)
ミンダナオ国際大学(MKD)は当協会のこれまでの教育・環境・福祉・医療などの分野での草の根活動の集大成として故内田あやこ教育基金で2002年に開校しました。
フィリピンだけでなく、日本や世界といったグローバルな問題に目を向け、その課題に挑戦する人材を育成するために、時には教室という狭い空間から飛び出し、貧困地域での医療福祉活動や植林などの現場で体験学習を重視しています。
日本のNGOである当協会がフィリピン日系人会などの現地の団体と協力して作った大学ですので、日本との関係は重視しています。
日本語は必修で、日本との教育交流も重視しています。日本研究科と福祉科は特に有名です。
(上記ページより)
インターンシップで日本に学生を送るなど、意欲的な教育活動を展開されているようです。
フィリピンには、教育によって人材を訓練し、その人材が海外の国々で労働者として活躍する、という流れがあります。
(例えば、医学や看護の分野では労働市場が国際化し、フィリピンの高等教育機関を卒業した後に、みな賃金の高い海外で就職してしまうため、フィリピン国内の地方部で医師や看護師が不足している、なんてしばしば指摘されるくらいです)
このミンダナオ国際大学もきっと、そんなフィリピンの経済を支える優秀で意欲的な人材を養成しているのでしょう。
また、フィリピンと日本とでは、教育システムに様々な違いがあります。
例えばまず、フィリピンは初等教育6年、中等教育4年、高等教育(大学)4年の「6-4-4制」です。日本を含む諸外国より、短めですね。
またフィリピンは株式会社立学校を始め、私立の学校や民間の教育機関に依存する比率が非常に高い国です。(2002年時点で高等教育機関の数は1479、そのうち私立機関は1305)
国が手を回せない部分については、積極的に民間の力で補うという意識があるのかもしれません。
ミンダナオ国際大学も、このような状況の中で、学生側のニーズに応える教育を提供しているのかなと想像します。
だが、大学は厳しい現実に直面している。
3月に卒業した社会福祉学科のラリー・ヒマンパンさん(21)は日本で介護福祉士になることを夢見てきたが、その道は閉ざされたままだ。比人介護士受け入れの突破口となるはずの日比経済連携協定が、署名から2年近くたちながら、比側の批准の遅れで発効していないためだ。
同科の高齢福祉専攻の卒業生20人のうち、介護関係の仕事に就いた人は皆無。ヒマンパンさんは「カナダで介護の仕事を探す。でも隣の国のお年寄りを助けたいという気持ちは今も強い」と言う。
(略)「援助から始まった我々の活動だが、カネのある日本が上で、貧しいフィリピンが下、という図式はもう古い」と、網代さんは言う。高齢化した日本は、その弱い部分をフィリピン人に助けてもらう時代になった。「そういう意識が、日本人にはあまりにも薄いと思いますよ」
(上記記事より)
このように、課題も少なくはないようです。
「福祉」の分野は、特にこうした人材の活躍が期待されるところのひとつですが、このように制度的な問題、あるいは受け入れ国(日本)側の意識の問題のため、フィリピンで介護を学んだ学生が日本で思うように働けないという現状もあるようです。
(そう言えば、ちょうど、昨日の記事でご紹介した『ヘルプマン!』には、フィリピンの大学を出た女性が日本の介護に携わり、様々な障壁に対峙するという話がありました)
それでも、日本とフィリピン、あるいはその他の国で活躍される人材を養成するという点で、このミンダナオ国際大学に寄せられる期待は小さくないのだと思います。
ぜひ、どのような教育をされているか、自分でも訪問して見てみたい大学です。
以上、マイスターでした。
※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。