マイスターです。
ここ数年、「ご当地検定」を実施する地域が増えているようです。
上記のサイトでは、全国各地のご当地検定が紹介されていますが、マイスターもまさかこんなにあるとは思いませんでした。
教養を得たい、地元のことに詳しくなりたいといった知識欲を満たしつつ、その成果を「検定」という形で認定してくれるというところが、人気なのでしょうか。
ちなみに検定を実施するのは、地元のNPOや商工会議所などが多いようです。
ご当地検定が行われているのは、多くの場合、観光地。観光産業を活性化させ、地域ブランドを強化するといったねらいもあるのかな、と思います。
もちろん、地域への愛着心を醸成する目的も大きいでしょう。
大学でも、地元について学ぶ授業は盛んです。
■「吉備国際大が『備中高梁学』開講 まちの魅力解説」(山陽新聞)
例えば↑こちら。
このように、地元の名前を冠した授業は、多くの大学に存在しています。
キャンパス周辺の歴史や文化、産業などを研究することは、大学にとって大切な役割のひとつ。
それに、地元に関する授業なら、学生は必要に応じ、自分で地域を回って情報を集めたりできますから、ケーススタディにはもってこいです。
というわけで、そんな「ご当地学」についての話題をご紹介します。
【今日の大学関連ニュース】
■「立命館大学 来年度から「京都学プログラム」設置」(MSN産経ニュース)
立命館大学(京都市中京区)は24日、来年度から文学部人文学科に、「京都学プログラム」(京都学専攻)を設置すると発表した。京都学の講座や講義は他大学でもあるが、専攻レベルで取り組むのは全国初。同大学は「京都の文化的特色を学ぶことは、日本文化の根底を理解することに通じる」としている。
同大学によると、京都学プログラムの志望者を入試の段階から1学年60人枠で募集し、4年間を通じて学習する。
(略)文化的施策の立案や町づくり・景観問題を解決する現場などで活躍できる人材の育成を図るという。
木村一信・文学部長は「日本文化の源流を学び、学んだことが普遍化され、応用もされて、地域貢献に生かされることを期待している」と話している。
(上記記事より)
まずはこちら。
立命館大学の取り組みです。
■「プレスリリース:文学部人文学科人文総合科学インスティテュート 「京都学プログラム」、「言語コミュニケーション」の新設について」(学校法人立命館)
人文総合科学インスティテュート内の一プログラムとして、2009年4月から、入学定員60名(予定)でスタートさせるとのこと。
以下のように、プログラムの理念が謳われています。
平安遷都以来、日本文化の重要な発信地であり続けた京都は、日本の他の地域とは異なる歴史的価値をもっています。今日においてもなお、多くの人を引き付ける「京都らしさ」の由来やその背景を、人文学的な手法で正しく検証、解明することは、京都の文化的特色を将来的にも保証し、更には日本文化を根底から理解することに他なりません。京都の文化的価値の本質的な理解と発見を通じて、京都という空間で、つまり、京都「に」学ぶことは、狭義の地域研究にとどまらず、日本文化の根源的な追究と発見につながるのです。
本プログラムは、プログラム名称にも示すように「京都」を中心とした歴史学的・文学的・地理学的アプローチを中心として、①京都における伝統の形成・創出、②京都の虚像と実像の発見、③時空間を超えて存続する「価値」、発見・創出される「価値」、連関する「価値」の解明、④新たな伝統の創出力の理解を目指します。更にその普遍性を発見、認識していくことで、「京都学」は単に京都に関するテーマを学ぶことにとどまらず、他の地域における援用も可能であることを提唱し、日本各地、そして世界に、日本文化とその応用力を発信することを目指します。
(上記リリースより)
京都にある大学で、京都を総合的に学習・研究するコースというのは、ありそうで、これまで無かったのですね。
中途半端に行うくらいなら、このように一つの専攻として充実させた方が、大学内での位置づけもはっきりして良い、という考え方もあるでしょう。
ただの物知りで終わってしまうようなものではなく、観光産業への貢献や文化財保護、歴史的な街並み保存などの問題解決などにつなげられる、充実したカリキュラムにするという点がコンセプトなのかなと思います。
フィールドワークも重視するみたいですし、専攻として、とても面白そうです。
ちなみに、このプログラムでどのような人材を育てようとしているかというと……
(4)人材育成の目標
(略)京都学プログラムでは、次のような人材の育成を目指しています。
①まちづくりの現場や景観問題の解決など、地域のプロデュースを通じて地域に直接還元することができる人材(民間企業や公務員など)
②地域の実態を踏まえながら、観光立国日本が目指すべき新たな道を模索できる、その担い手となりうる人材(運輸業・旅行業・宿泊業など)
③「総合的な学習の時間」等の教育分野での応用(教員)や文化的施策立案等の分野(学芸員)で活躍できる人材
(5)卒業生の予想される進路
民間企業(観光・旅行)、マスコミ、学芸員、公務員、地域活性化・地域連携に関わる営利・非営利団体スタッフ、教員(中学校社会科・高等学校地歴科・高等学校公民科・中学校国語科・高等学校国語科)、大学院への進学
(上記リリースより)
他の大学ではこういった場合、「観光学部」をつくろうとされることが多いように思うのですが、立命館大学は敢えて違うアプローチを選んだのですね。
留学生なども集まるでしょうか。
一体、どのような成果を生むか、楽しみです。
もう一つ、ご紹介します。
■「ご当地検定『伊勢学』合格なら単位に 皇学館大が検討」(Asahi.com)
皇学館大学(三重県伊勢市)が、「ご当地検定」を単位の一部に認定することを検討している。対象の科目は「伊勢学」で、伊勢商工会議所の「検定『お伊勢さん』」に合格することが単位取得の条件だ。同大によると、ご当地検定に大学が積極的にかかわる例は全国でも珍しいという。
同大では昨年度まで1年生の必修科目だった「地域文化学」を、今年度「伊勢学」として内容の一部を変更した。今年12月に3回目の検定があり、地元の歴史や文化、伝統などの知識を正しく理解した学生を育てる目的で、合格すると「伊勢学」の単位の一部として認定する方針だ。
「検定『お伊勢さん』」は、06年11月に初めて実施され、約1500人が受検し千人余りが合格した。しかし、今年3月の2回目の受検者は505人、合格者は223人にとどまった。
このため、業界と大学の連携で、検定に対する全国的な評価を高める狙いもある。同大の堀井史仁・学務課長は「学生が地域の歴史や文化の理解を深め、『伊勢博士』として全国に情報を発信する役目を担ってほしい」と話す。(上記記事より)
こちらは、冒頭でご紹介した、「ご当地検定」を授業に取り入れる例です。
「伊勢学」という授業を履修している学生が対象のようです。
日本の文化を考えるとき、神宮御鎮座の値である伊勢を抜きにしては語れません。「日本人の心のふるさと」とされる伊勢に付いて学ぶことはわが国の文化や歴史そのものを学ぶことに他ならないのです。こうした観点から伊勢とその関連項目について学び、またこの伊勢の地で学ぶことの意味を考える文学部・教育学部共通の必修科目です。
(「文学部・共通科目」(皇學館大学)より)
「伊勢学」って、必修科目なのですね。
きっと多くの学生が、ご当地検定を受けるでしょう。
検定だけで単位がもらえるわけではなく、あくまでも授業があってのこと。検定は、補完的な位置づけなのかと思います。
学問的な興味ではなく、検定を取ることだけが目的になってしまうのではという心配もありそうですが、逆に検定という形で楽しく挑戦でき、知的好奇心を刺激されてより学びたくなる人もいるかも知れません。
こちらも、今後どのような成果を生むのか、気になります。
というわけで、両極端な事例をふたつ、ご紹介しました。
大学で地元のことを学ぶための取り組み、どのような方法が考えられるか、皆様の大学でも検討してみてください。
以上、マイスターでした。
※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。
こんにちは、いわさきです。
いつも拝見させていただいております。
今はやりのご当地検定の話題ですね。
ご当地検定もいろいろあって、中には胡散臭いものもあるみたいですが、それはおいといて、今回の記事を読みながら、ひとつ考えたことがあります。
それは、「大学検定」。と言うと、「大検」を思い浮かべますが、そうではなく、自分の大学のことをどれだけ知っているか試す検定です。
最近、導入教育の一環として自校教育が注目されていますが、その成果をはかるのにも使えるでしょうし、自分の大学の歴史や最新情報、そして裏ネタまで自分の大学のことを興味をもって学べば、愛校心が生まれ、学生生活に対するモチベーションも上がるのではないでしょうか?
もちろん、在学生だけではなく、卒業生や高校生など、誰でも受験できるような形にすれば、いろいろ発展させられるような気もします。
既にどこかの大学で行っているのかも知れません。
機会があれば、うちの大学でも提案してみることにします。