町家をキャンパスとして活用 京都の大学

マイスターです。

歴史の長い大学では、キャンパス内で、昔からある歴史的な建築物を見かけることがあります。

ただ、かなり伝統がある大学でも大抵は明治以降に建学されたものですから、大抵は、洋館です。
(建築として現存しているものとなると、大正以降のものが多いのかな、と思います)

そしてその多くは、学生が気軽に通う教室というよりも、大イベントの際に使う講堂や記念館など、大学のシンボルとして使われているように思われます。
歴史的に価値がある建物として、重要文化財などに指定されていることも多く、何かと運用に気を遣わざるを得ないという事情もあるのでしょう。

そんな中、興味深いニュースがありました。

【今日の大学関連ニュース】
■「町家がキャンパス…京都学園・同志社の2大学が開設」(読売オンライン)

京都市中心部に残る町家に“キャンパス”を設ける大学が増えている。京都学園大(京都府亀岡市)は5日、京都市中京区の町家に「京町家キャンパス」を開設、同志社大(京都市上京区)も大学近くの町家を借り、今月から課外活動に利用している。学生が京都の文化に触れ、住民と交流することで、社会性を身につけさせるのが狙いだ。
京都学園大の新キャンパスは、中京区にあるNPO法人「京町家再生研究会」事務局長・小島冨佐江さん(51)の自宅の一部に開設された。築後100年以上の町家で、1階に畳敷き教室、2階には板間の25人教室、少人数のゼミ室がある。人間文化学部の学生らが京文化や文学などを学ぶ。
小島さんの自宅は祇園祭の「南観音山」を出す山鉾町にあることから、「フィールドワーク」の授業では、祭の準備段階から参加する。記念式典で波多野進学長は「学生たちに、京の文化にじかに触れてもらいたい」と期待を寄せた。
同志社大のキャンパス「でまち家」は3月末に開設された。今月22日から「町家サークル」をスタートさせ、講師役の学生が火曜から金曜まで、手話や茶道、英語などを地域の住民に教える。このほか、地球温暖化や赤ちゃんポストなど様々なテーマについて学生と地元の人が議論する「井戸端会議」や、節分や節句などの年中行事に合わせてイベントも開く。
(上記記事より)

そんなわけで、京都の伝統的な建築である「京町家」を、学生が活動するキャンパスとして利用する大学が出てきました。
国の歴史的な資産であり、同時に地域コミュニティが根付く生活の場でもある町家を、大学が新たな学びを生み出す場として活用するというのは、なかなか画期的で、意義のある取り組みだと思います。

■「京町家キャンパスを開設のご案内」(京都学園大学)

京都学園大学・京町家キャンパスの名前は、「新柳居(しんりゅうきょ)」だそうです。

関係者が町家前でテープカットを行った後、波多野進学長があいさつし「伝統的な町のあり方、住まい方を学ぶ場としてふさわしく、大学と地域の連携のあり方を模索するスタートにしたい」と述べた。また、新町通や祇園祭の南観音山に安置される「楊柳(ようりゅう)観音」から命名されたキャンパス名が発表された。
同大学は今後、主に人間文化学部の歴史民俗・日本語日本文化学科の教室として、週20科目の授業を行う予定。
「京町家キャンパス開設祝う   京都学園大が記念式典」(京都新聞)記事より)

■「人間文化学部:歴史民俗・日本語日本文化学科」(京都学園大学)

こういった分野の学問をするには、最高の環境であるように思います。
フィールドワークを重視する学科のようですから、その拠点としても大活躍するでしょう。

■「同志社町家プロジェクト:でまち家日記。」(同志社大学)

同志社大学「でまち家」では、町家での日々の活動をブログ形式で発信しています。
こちらの同志社大学の取り組みは、平成19年度の文部科学省「新たな社会的ニーズに対応した学生支援プログラム」に選定されています。

■「平成19年度『新たな社会的ニーズに対応した学生支援プログラム』選定プログラムの概要及び選定理由(地域コミュニティによる学生支援方策)」(文部科学省)

ブログ「でまち家日記。」には、「同志社町家プロジェクト」の説明として、

同志社大学の地域コミュニティによる学生支援方策です。大学と学生が町に出て、町家で、「子ども」「大人」「高齢者」という異世代との関わりの中で活動を行っていきます
(上記ブログより)

とありますが、ブログを拝見する限り、確かに様々な世代を巻き込んだ取り組みを、日常的に仕掛けておられる模様。
町家を活用するための参考資料としても、多くの方々に重宝されそう。

両大学とも、住民やコミュニティと、学生とを関わらせるための拠点として、京町家のキャンパスを位置づけているというのが特徴です。
またそのために、こうした場所を特別なイベント用にするのではなく、日常的に人に利用されるものと考えているのも、共通するところ。

伝統を継承しつつ、現代まで人の営みを支え続けている。
おそらく京都の「町家」という建築は、こういったところが魅力なのでしょう。
そんな町家の文化を学生につなげる試み、非常に意義があると思います。

またこういった町家キャンパスは、地域住民の方々だけでなく、観光客や卒業生などにとっても、立ち寄りやすいかもしれません。
何らかの形で町家キャンパスに関わった方々が、その後も様子をのぞきに来たり、ネットなどで現在の活動状況を閲覧したりする、そんな場所になれるかも知れませんね。

他の報道には、

両大学のほか、龍谷大や京都大などもさまざまな形で町家を利用して、授業やセミナーを開いている。街中で住民と交流する学生の姿があちこちで見られそうだ。
「京町家キャンパス続々 京都学園大・同志社大など」(京都新聞)記事より)

……という記述もありました。
京都には、数多くの大学が立地しており、日本中、あるいは海外からもたくさんの学生が集まっています。そんな学生達が、町家のような場所を拠点に活動をひろげていったら、とても刺激的ですよね。
学びと伝統文化の町としての京都が、今よりさらに世界に知られるようになるかも知れません。

以上、マイスターでした。

※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。