マイスターです。
この十数年の間に、大学を管理監督する仕組みはずいぶんと変わりました。
おおざっぱにご説明すれば、かつては「大学を設置する時点で、質をコントロールする」という方針がとられていました。
厳格な「大学設置基準」に基づき、国が詳細に定める様々な施設や設備、人員などの規定などをすべてクリアしなければ、大学の設置は認められませんでした。
つまり著しく教育の質が低い大学や、廃校の可能性がある大学は、そもそも生まれないという前提です。
ただ、こういった仕組みには色々と批判もありました。
例えば、
○設置の時点では厳しくチェックをするが、一度設立されてしまった大学が良質な教育・研究を行っているかどうかを継続的にチェックする仕組みがない。
(サボっているのに、既得権益で補助金などをもらい続けているような大学もあるのでは?)
○あまりに規則でがんじがらめにした結果、大学経営の自由度がなくなり、国際的な競争力がついていないのでは?
といったものです。
そこで、1991年に「大学設置基準の大綱化」という改革が行われました。
大学の裁量を大幅に増やし、経営や教育研究の自由度を高めたのです。
その代わりに近年、導入されたのが、大学の「認証評価」という仕組み。
大学は、国でもなく大学でもない、文科省の認定を受けた第三者の評価機関によって、経営や教育についての評価を受けるのです。
一定以上の水準が保たれているかどうかを、評価機関は継続的にチェックし、適合か、不適合かを判断するというわけです。
(アメリカなどでも取り入れられている仕組みです)
大学は、「本学は、○○評価機関の認定評価を受けています」という形で、経営や教育の質が一定の水準以上にあることを社会に対して知らせるわけです。
逆に不適合と判断されたら、大学にとっては悪い評判につながりますので、そうならないように大学は努力するというわけです。
さて、そんなわけで、こんなニュースをご紹介します。
【今日の大学関連ニュース】
■「宇都宮共和大に初の『不適合』 認証機関『財務悪い』」(Asahi.com)
大学や短大などの認証評価機関「大学基準協会」は24日、07年度認証評価の結果を発表し、宇都宮共和大(栃木県那須塩原市)に対し、協会の定めた基準に適合していないと判定した。「不適合」判定は04年度の制度開始以来初めて。
また、昨年の新司法試験の前に元教授が学生を相手に答案作成の練習会を開くなどして問題となった慶応義塾大法科大学院(東京都港区)に対しては、「適合」としたうえで、再発防止策の徹底状況などを示す資料提出を求める条件を付けた。
宇都宮共和大は、改称前の那須大だった04年度に同協会の評価を求めたが、大幅な学生の定員割れと財務状況の悪さを指摘され、判定を保留された。人口の多い宇都宮市にキャンパスを設けるなど改革に取り組んだが、期限の07年6月末までに改善できなかった。
同大の岡田一成事務局長は「協会の評価を真摯(しんし)に受け止めたい。少子化に加え、県内の高校生の約7割が県外に進学する厳しい状況ではあるが、指摘のあった学生の受け入れ改善に引き続き努力したい」と話した。
(上記記事より)
認証評価の制度が始まって以来、「不適合」が出たのは初めてであるとのこと。
原因は財務上の問題。その原因として、大幅な定員割れを起こしているという現状があるようです。
その上、初の不適合評価ですから、宇都宮共和大学にとっては、大きなダメージでしょう。
同様に、慶應義塾大学法科大学院を始め、いくつか注文が入った大学があるようです。
詳細については、上の元記事の他、↓大学基準協会のサイトに掲載されていますので、ご興味のある方はどうぞ。
■2008(平成19)年度「大学評価」等の結果について(大学基準協会)
ただ、こうした評価というのは基本的に「問題をつぶし、より良い大学になる」ためのもの。
ですので、今回の評価をヒントに、抜本的な改革を進めていくことが大事です。
以上、マイスターでした。
※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。