マイスターです。
そろそろ2月も終わりますね。
まだ今年の受験シーズンは終わっていませんが、早くも、今後に向けての話が聞かれ始めています。
というわけで、今日は↓こんな話題を。
【今日の大学関連ニュース】
■「北大入試 『文類』『理類』復活へ 11年度にも 学部別募集も継続」(北海道新聞)
北大(佐伯浩学長、全十二学部)は二十一日までに、学部ごとに学生を募集する現行の入学試験制度に加え、「文類」「理類」枠での募集を開始する方向で検討に入った。早ければ二○一一年度の入試から導入する。学生にとって、入学時点で学部を決めずに入学後、じっくり自らの適性に合った学部を選ぶことができる。学生の選択の幅を広げることで、質の高い学生を確保する狙いがある。
北大はかつて「文類」「理類」など学部を横断する単位で学生を募集し、教養部所属の後に成績順で各学部に振り分ける方式を採用。その後、入学時から専門性を高めるため、「文1」「理2」などによるやや細分化した枠での募集を経て、一九九五年度に現行の学部別募集に移行した。
予定通り一一年度から文類、理類の「大くくり」での試験導入が決まれば、十六年ぶりの大幅な制度改正となる。
北大は文類、理類枠で入学した学生の受け皿となる「総合教育部」の導入も検討。部内に文系や理系などのコースを置き、学生は二年進級時の成績によって所属学部を選べるようにする方向。旧教養部のように専属の教官は配置しない。
現在、学内では各学部がどの程度の定員を文類、理類枠に振り分けられるかを検討中。国家試験の取得と連動する医学、歯学、薬学、獣医学の各学部は、学部単位での募集が軸になるとみられるが、少人数でも「理類」枠に割り振ることができないか、調整を続ける。
北大は○七年度、大学全体の入学者に占める道外出身者の割合が初めて五割を下回った。大学内で「全国レベルで優秀な学生を集めなければ、世界の研究・教育拠点としての地盤が揺らぎかねない」との危機感が強まっていることが、こうした入試改革の背景にある。
(上記記事より。強調部分はマイスターによる)
そんなわけで、北海道大学の入試改革です。
まだ検討段階ですし、導入されるにしても2011年度入試から、とのことですので、まだしばらく先ではありますが、興味深い動きです。
この構想を読んで、東京大学の入試を連想する方も多いかも知れません。
あの、「文Ⅰ(文科Ⅰ類)」とか、「理Ⅲ(理科Ⅲ類)」とかってやつですね。東大は今でも、入学後最初の二年間は教養学部で学び、三年生以降、学部に分かれて専門分野を学ぶというスタイルをとっており、それに合わせた入試スタイルです。
かつては、多くの大学が現在の東大のような教養部を持ち、それにあった入試を行っていました。
しかし、1991年の大学設置基準大綱化以降、多くの大学が教養部を廃止し、入試の時点で学部学科を選択させるようになっています。
上記の記事にあるように、北海道大学も、かつては「文類」「理類」という区分で学生を募集していました。しかし教養部の廃止を経て、1995年から現行の入試システムとなっていたわけです。
それをこの先、また復活させようというわけです。
一度やめた制度を復活させるのは、何故でしょうか?
記事では、
学生にとって、入学時点で学部を決めずに入学後、じっくり自らの適性に合った学部を選ぶことができる。学生の選択の幅を広げることで、質の高い学生を確保する狙いがある。
北大は○七年度、大学全体の入学者に占める道外出身者の割合が初めて五割を下回った。大学内で「全国レベルで優秀な学生を集めなければ、世界の研究・教育拠点としての地盤が揺らぎかねない」との危機感が強まっていることが、こうした入試改革の背景にある。
……と紹介されています。
つまり、「優秀な学生を集めるため」というのが、大きな理由なのです。
正直、文類/理類という分け方にして、本当に優秀な学生が集まるのかどうかは、やってみなければわかりません。
「入学後に進路を決めたい!」という受験生が思いの外多いのであれば、優秀な受験生達が北大の入試システムに魅力を感じて、大勢受験してくるでしょう。逆に、「2年次以降、希望の学科に入れない可能性がある」という点が敬遠される可能性もあります。
ただ、入学後に進路を振り分ける仕組みにすると、少なくともその進路振り分けまでは、学生も油断できません。1年次の成績次第で希望の学科に入れるかどうかが決まるとなれば、一所懸命勉強するでしょう。そう言う意味では、結果的に、学生のレベルは上がるかも知れません。
また少し穿った見方をすると、こうした振り分けの仕組みをとることで結果的に、「人気のない学科」は救済されると思います。
入試の時点で受験生を集められず、競争率が下がっているような学科は、どこの大学にもひとつはあるものです。受験生が、魅力を感じていない学科ですね。
でも、一度入学させた学生を成績順に各学科に振り分けていく仕組みであれば、学内の調整で、ある程度の学生数をどの学科にも配分できるでしょう。したがって、全体として、「優秀でない学生がいない」という状態には、なります。
なにより、人気のない学科の、「低い競争率」の実態が、外に出なくなります。
それと、
現在、学内では各学部がどの程度の定員を文類、理類枠に振り分けられるかを検討中。国家試験の取得と連動する医学、歯学、薬学、獣医学の各学部は、学部単位での募集が軸になるとみられるが、少人数でも「理類」枠に割り振ることができないか、調整を続ける。
……とも書かれています。
医学部や獣医学部、歯学部などは人気がありますし、特に優秀な学生が受験しに来るでしょう。
彼らを、「理類」といった枠で囲い込んで入学させれば、入試全体の難易度や、いわゆる「偏差値」というものは上がるかも知れません。
このように、確かに入試制度を変えることで、受験生の層は少し変わってくるかもしれません。
もちろん「文類」「理類」の枠で入学した場合、入学して1年経ったら、成績によってそれぞれの学部に振り分けられるわけですから、中には希望の学部に行けない学生も出てくるでしょう。
そこで北大の場合、従来通りの、学部ごとの選抜も残すそうです。
獣医学部にどうしても入りたいんだったら、獣医学部の入試を受けてください。
でも、「入学後に進路を決めたい」という受験生は、理類、文類という入り口もありますよ。
といったような、二つの売り方をしていくわけです。
一見、いいとこ取りのような入試改革に思えますが、実際は大変です。そもそも、一年時から学部学科に分かれる教育と、「最初は教養を学ぶ」という教育とでは、教育のコンセプトが違います。
北大の場合、文類、理類枠で入学した学生のために「総合教育部」を導入し、文系や理系などのコースを置いて教育しようという構想が出ているようです。一方で、一年時から少しずつ専門の教育を施していくルートは残すわけですから、二つの異なる教育方法が、学内に並列して存在することになります。
その分、授業も増えるでしょうし、大学にとっては、手間でしょう。
でも個人的には、こういった進路選択の枠を設けることに、賛成です。
記事でも書かれていますが、「入学してから自らの進む道を考えられる環境を提供することが、大学の新たな魅力につながるはず」と、マイスターも思います。
幅広い領域にまたがる社会問題について関心を持っているとか、学んでみたい学問がいくつもあるとかいった学生は、いると思います。それはそれで、別に悪いことでもありません。
むしろ、関心が広いというのは、現代社会の問題を扱っていく上で、得難い長所。
受験までに学科を選ばないといけないのであれば、(後々後悔しないためにも)しっかり進路を決めて受験する必要があるでしょうが、入学してから考えて良いのであれば、問題ありません。
広い関心を、そのまま大学に持ち込めばいいのです。
それに、先ほど人気のない学科が救済されると書きましたが、魅力がわかりにくい学問というのも、世の中にはあると思うのです。
「○○学科」という名称をパンフレットでアピールしても、なかなか本当の楽しさが伝わらないということはあるでしょう。
それなら、入学後、じっくり関連の学問を学んでもらい、その学科の魅力が伝わった学生に進学してもらう方が、全体としてはメリットが多いのではないでしょうか。
欲を言えば、個人的には、「文類」「理類」という枠すら、無くして欲しいくらいです。
先ほど名前を出した東京大学は、平成20年度の入試以降、後期日程を(医学部を除いて)一本化すると発表しています。
100人を選抜し、合格後に文科一~三類、および理科一~二類から、自分の進路を選ぶという仕組みで、事実上、文系、理系という枠を超えた進路選択を可能にする制度です。
■「平成20年度東京大学入学者選抜要項(PDFファイル:804KB)」(東京大学)
■「平成20年度後期日程試験試行テスト問題」(東京大学)
東大の場合は、人気云々と言うよりも、学内に刺激を与えるような学生を選抜するための試みなのではないかと想像するのですが、参考にはなるかも知れません。
というわけで、少しずつ入試の在り方を変える大学が出てきた、というお知らせでした。
結果によっては、今後、他の大学にもこうした取り組みが広がっていくかも知れません。
今後も、要注目です。
以上、マイスターでした。
※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。
私、昔北大理Ⅲ系に、入学しました。1年半の教養課程の期間でやりたい学問は見つかりました。生態学です。でもどこの学部学科でやっているのか分かりませんでした。大学の内部にいても。自分でもっと積極的に動くべきだったと反省してます。けど、農学部生物資源科学科に入ってやれました。みんなどうやって調べていたのか知りません。私友達いなかったもんで。あとは、理学部生物学科植物課程、動物課程とかだと思われます。「系」で入学してきても、大学に入ってから自分からいろいろ調べないと行きたい学部学科は、見つかりません。
「系」で入学して問題なことはもうひとつ、私、高校時代に何を学びたいかなんて考えずに、大学でゆっくりいろんな講義を聴きながら決めていこうと思ってました。生物学をやりたかったので、第一志望を東大理科二類にしてそうとう頑張りました。そして落ちて、浪人する気もあったのに、周囲の説得もあって、滑り止めの北大に入学しました。そんな私には、一年目前期の大学での授業もテストもやる気ありませんでした。前期の成績(移行点)をみて、びびりました。後期と、二年目前期は懸命に努力しました。それと移行点を上げるにはコツがあったのに私はそれを知らずに、それと逆のことをやってました。先にも記したように、私は(第一志望の)農学部のあの学科にはいれました。最下位でです。一歩間違えば行きたくもない学科に行かされてしまいます。私の場合だと、もうちょっと移行点が足りないと、理学部生物学科の植物か動物のどちらかだったでしょう。大学にせっかく入ったのに自分のやりたい学部学科に入れないというリスクが大きいのです。特に理Ⅲ系では、とあるマンガの影響もあって獣医学部に入りたい人が異常に多いのです。生物資源科学科にも獣医志望だったのに夢がかなわなかった学生でいっぱいでした。他の大学の獣医学科に入ったほうがよかったのでは。とまあ、こんな具合です。