大学キャンパス内で広告を展開するビジネスが盛ん

マイスターです。

世の中に、学生向けの製品やサービスというのは、山ほどあります。

「リクナビ」のような就職サービスや、アルバイト紹介。
格安航空券の販売。アパートの紹介。
学修や研究に使うパソコンや各種のソフトウェアなどは、その代表的なものでしょう。

また、はっきり学生向けと謳っているわけではないけれど、学生が重要な顧客層になっている商売というのもあります。
自動車教習所や、各種の資格学校。
他、携帯電話の販売などがこれに該当します。

こうした企業にとっては、学生に自社の製品やサービスを知ってもらえるかどうかが、死活問題。

彼らは日夜、就職課(キャリアセンター)に資料を置いてもらったり、生協・購買部にポスターやPOPを置かせてもらったりと、無駄なく学生に情報を伝えるための広告展開を考えています。

最近は、様々な工夫を凝らした広告メディアが、キャンパスの中に登場しています。
今日は、そんな「キャンパス内広告メディア」を、いくつかご紹介します。

■「タダコピ ~学生向け無料コピー~」(株式会社オーシャナイズ)

広告料をとって、何かを無料で利用できるようにする……というのは、広告業が得意とする発想。
大学キャンパスで、そういった事業を展開した日本でのパイオニアが、オーシャナイズ社の「タダコピ」。
コピー用紙の裏面に企業広告を載せることで、コピー代をタダにするという事業です。

元々は大学生達が立ち上げたベンチャー企業ですが、2008年1月現在で、全国の国公私立大学、42校に専用のコピー機を設置するまでに成長しました。

「無料でコピー」というアイディア自体はおそらく様々な人々が何度か思いつき、企画書にしていたんだろうなと思います。
ただ、それを、

大学生向けの広告媒体として、
大学キャンパスで配布する、

という組み合わせにしたのが、「タダコピ」の面白いところ。

広告主にとって、最も大きな関心事は、費用対効果。
費用対効果が高い媒体には広告を載せたいし、効果が低い媒体には(たとえそれがユニークであっても)まず広告なんて出しません。大手の企業ならなおさらです。
街中のコンビニに置いてあるコピー機で同じことを企画しても、企業はそう簡単には広告費を払ってくれないでしょう。どこの誰が目にするかわからない媒体に、そんなに広告費は出せませんからね。
その点、「タダコピ」の場合、「大学生が見る媒体」だと限定されているから、企業も行動に移しやすいというわけです。

タダコピは、ただ広告を集めて掲載するだけではなく、提案型のデザインを用いて展開しているのも特徴です。

■「タダコピ:出稿事例」(株式会社オーシャナイズ)

この通り、工夫が凝らされた、クリエイティブな広告。学生に「ちゃんと読まれる」ことを意識しています。

他、無料のルーズリーフを広告媒体にするというサービスもあります。

■「無料ルーズリーフのルーズフリー」(ファインダウェイ)
■「エコフル ~無料ルーズリーフ広告~」(株式会社 全立)

「ルーズフリー」も、タダコピ同様、学生団体からスタートした事業です。
学生が使うルーズリーフの余白に、企業などがバナー広告のような広告を掲載する代わりに、ルーズリーフを無料で配るというもの。元々は、アメリカ発祥のサービスだと聞きます。

「エコフル」も、「ルーズフリー」とアイディアは全く同じ。
ただ、「ルーズフリー」は、基本的に大学の前で毎朝、手渡しで(!)配布されているのに対し、「エコフル」は、大学キャンパス内の大学購買部に設置された専用ラックでもらえるという点が違います。

そして、つい最近登場したのが、↓こちら。

【今日の大学関連ニュース】
■「大学サークルの勧誘チラシを広告媒体に、ユーキャンパス提供」(六本木経済新聞)

大学生向けの広告企画を手がけるユーキャンパス(港区西麻布3)は2月6日、大学サークルの勧誘チラシを広告媒体に活用する広告メニューの提供を正式に開始した。
同サービスは、大学のサークルが配布する勧誘用チラシの裏面を広告枠として提供するもの。裏面を広告枠とすることで、サークルは無料で勧誘用チラシを作成することが出来る。2006年の春から試験的に提供しており、今年から正式なサービスとして展開する。同社が運営するサークルポータルサイト「イータマ!」上でサークルからの申込を受け付けており、現在までで200を超える団体から申し込みがあるという。
(略)サービスの特徴について同社では「大学構内で配布することで、駅前などでの配布に比べてロスが少なく、(広告出稿を通じて学生のサークル活動を支援することで)就職を控えた学生へのブランドイメージの向上にも結びつく」としており、今年度で約2,000万円の売上を見込んでいる。
(上記記事より)

ついに、サークルが配布する勧誘チラシまで、広告媒体になってしまいました。

サークルが勧誘チラシを配るのは、主に新入生が入学した4月頃。企業が一番、広告を出したい時期と重なるのです。
それも、基本的には新入生の手だけに、高い確率で渡るのですから、広告主にとっては、こんなに効率の良いメディアはありません。
(新入生は、サークルの勧誘を受けているのか、企業の宣伝をされているのか、どっちなんだろうという気分になるでしょうが)

このように、主に広告主のメリットと、学生のメリットが重なって、無料の広告媒体が次々に登場しています。上記の各サービス、なんとも、うまいアイディアを思いついたものです。
面白いビジネスモデルですよね。

ただ、こういったメディアに、問題が全くないというわけでもないように思います。

例えばタダコピ。
まず、気軽にコピーができてしまうということ自体が、なんだかちょっと心配です。
本人達には金銭的なダメージがありませんから、図書館で借りた本を、「一冊丸ごとコピー」なんてことができてしまいます。著作権保護の点でも大いに心配です。生協で買った雑誌なども、その場でコピーしまくれちゃいます。
ちなみに現在は、テスト前にタダコピがよく使われていると聞きます。友達のノートを気軽にコピーするのに便利だからだそうです。

「ルーズフリー」と「エコフル」については、「授業中でも、否応なしに広告が目に入ってしまう」という点が気になります。
実際、ルーズフリーを紹介した新聞記事では、「文字を書く間は広告が目に入りやすく、読み返したりする機会も多いため、既存フリーペーパーに比べて高い広告効果が期待できる」と紹介されています。

確かに広告効果は高いでしょうから、企業は喜んで出稿するでしょう。また、タダなのですから、学生は喜ぶでしょう。
でも、授業の時間というのは、授業の内容に集中するためにあるわけです。ルーズフリーを使うと、全体からすればごくわずかな時間かも知れませんが、それでも授業時間の数%が、広告を見るために使われることになります。

ちなみに、同じアメリカ発のビジネスモデルに、「広告つきの無料教科書」というものがあります。
しかしこちらの場合、広告が入るのは本文以外のページに限っており、授業中の集中力を乱すことがないように配慮されています。
また、大学側、教員側の要望を集め、教育方針に合わない、不適切と思われる広告は除外するような仕組みになっています。

その点、これらの無料ルーズリーフは、いかがでしょうか。
「ルーズフリー」「エコフル」の出稿事例を見ると、QRコード(二次元バーコード)がついている例も結構あるようです。
これ、「授業中にアクセスして欲しい」という意図だと思われるのですが……うーむ、どうなのでしょうか。

どれも面白いアイディアだと思いますので、こうしたメディアは応援したいのですが、どこまでやっていいかという線引きを、どこかでする必要があるんじゃないかな、という気もします。

逆に、その気になれば、こうしたメディアが連携して、面白い広告展開を行うこともできると思います。
メッセージ性の強い公共広告を中心に展開したら、大学生の意識を少しずつ変えていくことだって可能かも知れません。
例えば貧困撲滅など、社会的に意義のある公共広告は、少しくらい無料で入れてあげてもいいんじゃないでしょうか。今、社会意識の高い学生は少なくないですから、こうした取り組みで学生の関心を深めることができますし、各メディアの社会的なブランドイメージを高めることにもつながるかと思います。

いずれも様々な可能性を秘めたメディアですから、学生や企業、大学など様々な方々のアイディアで、面白い使い方がされていくといいですね。

以上、マイスターでした。

※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。

2 件のコメント

  • 新入生向けのサークル勧誘チラシの印刷を広告業者が無料で請け負うというのは、確か2年ぐらい前には既に始まっていたと思います。課外活動を担当している関係で、新しいものが出てきたなと思ったのがそれくらい前の時期だったので・・・。
    同じ業者かどうかはよくわかりませんが、リンク先のチラシの構成などをみると、よく似ているように感じました。

  • はじめまして!ルーズフリーを運営しているファインダウェイの浜野と申します!貴ブログでルーズフリーについて紹介して下さり、ありがとうございます!マイスターさんのご指摘の通り、このような媒体は学生の勉強をサポートするものであるべきだと思っております。「新しいノートを買うと、なんとなく勉強したくなる。」というような経験が誰しもあるかと思いますが、私たちはこのような学生の心理を想定してルーズフリーを提供しています。また広告枠のひとつを国際協力NGOに無償提供することにより、私たちのできる範囲で、学生に対して慈善活動の啓蒙を図っております。
    以上、長くなってしまいましたが、今後も貴ブログ拝見させていただきます!
    ありがとうございました!