マイスターです。
理工学部を出て、社会科学系の大学院に進学しました。そのため、「理系から文系になったんだね」とたまに言われます。
ただ、個人的にはどうもこの「理系」「文系」という分け方に馴染めません。カテゴリー分けされるのが嫌、というよりも、分類用のカテゴリーがたった二種類しかないことが不思議です。
そう言う点で、理系とも文系とも分類できないリベラルアーツ系学部の躍進に、ひそかに期待したりしています。
さて、今日は二つの記事をご紹介したいと思います。
【今日の大学関連ニュース】
■「モテモテ理系女子、文系職場にも進出」(読売オンライン)
さまざまな職場で、理系出身の女性に熱い視線が注がれている。「データをもとに語れる」「専門分野で話ができる」といった評価が高まり、活躍の場は技術・研究職などの型通りの職場にとどまらない。
「男は理系、女は文系」は今や昔、“理系女子”は引く手あまただ。
コーセー(東京)広報部の秦美奈子さん(32)は、今年4月に同社製品研究所から異動したばかり。学習院大理学部、同大学院で有機化学を専攻し、入社以来7年間、製品開発や効能研究を担当してきた研究者だ。今は記者会見の準備やニュースリリース作り、マスコミ取材対応など、慣れない仕事に追われる。
6月中旬に開かれた、新しい化粧品に使う素材の発表会では“新人”の秦さんが取材対応の前面に立った。発表内容は秦さんが古巣で担当していた研究テーマそのもの。以前なら問い合わせを受けた広報部スタッフが研究者に確認して回答していた質問にも、秦さんは即答できた。
「広報で働いてみて、今までの知識やキャリアを生かせることが分かってきました」
同社広報部長の北沢恒夫さんは「企業は情報をどう伝えるかが重要。もの作りの現場を知る人材は、広報としても貴重」と話す。
(略)キユーピー(同)の有賀麻衣子さん(24)は、東京女子大数理学科で位相幾何学を専攻した。同級生の多くがシステムエンジニアなどの技術職として就職した中で、有賀さんは生産管理部で業務用調理食品の生産の調整・管理を担当。「様々な要素を組み立てて答えを導き出す数学の考え方は、今の仕事に生かされています」と有賀さん。
有賀さんの母校、東京女子大では、数理学科の学生の就職率は例年ほぼ100%という。就職先は各種メーカー、情報通信企業のほか、金融・保険、サービス業など幅広い。同大では「理系分野出身の学生への社会の期待は大きくなっている」と見て、キャリア支援に力を入れている。実際、キユーピーでは女性地域職の8割を理系が占め、同社人事部の石川真言さんは「ものごとを数字で語れる理数系は、管理、営業、研究などにも配置しやすい」と話す。
東京女子大数理学科の小林一章教授は「文学や法律などの文系学問は、その国固有の歴史や文化を背負っているが、理数系は世界共通。国際舞台で通用する人材として、理系女性の活躍の場はますます広がるでしょう」と話す。
(上記記事より)
■「ソニー・松下・NEC・富士通・キヤノン、文系採用でスクラム 」(FujiSankei Business i.)
ソニー、松下電器産業、NEC、キヤノン、富士通の日本を代表する電機メーカー5社が、文系学生の採用拡大を狙い、計3000人の学生を集めた大規模な就職イベントを共同で開催する。ライバル同士の大手電機メーカーが5社も集まり、採用活動でスクラムを組むのは初めての試みという。
団塊の世代の大量退職に加え、労働人口の減少による人手不足時代の到来を控え、企業が採用を積極化するなか、金融機関や商社などの業種の人気が高い文系の学生に、ものづくりの楽しさや大切さなど製造業の魅力をアピールし、優秀な人材の獲得を目指す。
(略)電機メーカー各社は、営業や事務職だけでなく、製品開発などの幅広い分野で柔軟な発想を持つ文系出身の社員の活躍を期待している。ただ、文系学生は、金融機関やマスコミ、サービス業など相対的に待遇がよい業種を選ぶ傾向が依然として強い一方で、学生離れが進む理系では、他業種との争奪戦が激化している。
将来的な人手不足への懸念を背景に今後も学生の売り手市場が続くとみられており、ライバル企業同士が手を組むこうした取り組みが広がりそうだ。
(上記記事より)
そんなわけで、一つめは理系出身の女性が、技術開発や研究職以外の、「文系の」職場で活躍しているという記事です。
二つめは、大手の電機メーカーが連携し、文系学生の採用に力を入れているという記事です。
先に申し上げておくと、両方とも、記事で紹介されている活動そのものには、それぞれ一定の意義があると思います。
大学院を出て、研究職として働いていた社員が広報の分野で力を発揮するという事例などは、なかなか興味深いです。成果を生み出す人材の活用法として、参考になるところもありそうです。
また、電機メーカーが技術系以外の専攻の学生に自社をPRするという取り組みも、大事でしょう。
企業として、当然の発想だと思います。
マイスターがなんだか違和感を覚えるのは、こういった動きを、「理系」、「文系」という言葉で無理矢理説明しようとする、記事全体のトーンの方です。
例えば一つめの記事。
おそらく、これを書かれた記者の方は、「以前は理系の女子は大変だったけど、今は文系の職場でも期待されているよ。活躍できる場があるよ」という、純粋な応援の気持も含めて、記事全体をこういうストーリーに落とし込んだのでしょう。
でも、記事内容を読んでいくと、やっぱり強引さが気になってしまうのです。
コーセーの事例で紹介されている方が広報の現場で活躍されているのは、「理系だから」ではなく、専門分野に通じた研究者だったからではないでしょうか。
理系って言ったって、色々あるわけです。なのに、大きく「理系だから」とまとめられてしまったら、ものすごく話が単純化されてしまいますよね。
それに、広報ってそもそも「文系の職」なのでしょうか。ここでいう理系的、文系的の定義とはなんでしょうか。
また記事では、「ものごとを数字で語れる理数系は、管理、営業、研究などにも配置しやすい」というコメントも紹介されています。
「理系だから数字に強い」というのは、非常に良く聞くフレーズです。確かに、理学、工学分野の学問では、数学は欠かせません。
専攻する学問によって、もののとらえ方や考え方、問題の解決法などに、違った傾向が出てくることはあると思いますから、普段から数値を読み解くことに慣れている数理学科の学生が、数理学的思考(って表現して良いのかな?)を自分の強みにすることは、自然です。
でも、それを言うなら、日本では「文系」とカテゴライズされている経済学や心理学だって、数字で語る学問です。大きく「理系」とまとめられると、そういった細かい違いが全部、単純化されてしまうように思うのです。
それに、考えてみれば、ものごとを数字で語れるというのは、非常に大事なことですよね。いかなる領域であれ、大学で学術の世界に触れれば、数字でものを考えるという行為は何度も出てくるはず。
むしろ、これを大学で教わっていない人がいるという現状の方を是正すべきなのではないでしょうか。
ついでに伺ってみたいのですが、皆様の周囲に、「おれ、文系だからさぁ」というフレーズを愛用する人はいませんか。
主にどういうシチュエーションで使うかというと、
「おれは数字に弱くても仕方がないんだよ。文系だからね」
……と言い訳したいときです。マイスターはこういう人、高校生から社会人まで、たまに見かけます。
ちなみにこれには、「文系」だけではなく「理系」バージョンもあります。「理系だから文章がヘタ」、「理系だから英語が苦手」などです(もっとも最近は、理工系の学部でも文章力や英語力が重視されますので、以前ほどこちらのフレーズは耳にしなくなりました)。
こういったフレーズ、マイスターは好きじゃありません。こうして「文系だから理科のことはわからん」なんて言い放っていた人が厚生労働省や経済産業省などの幹部になった結果、起きている問題も実はあるんじゃないかとすら思ってしまいます。
思うに、「『文系』は数字に弱くても許される」という発想は、「数学が苦手だから文系に行こう」という高校時代の進路選択のあり方に端を発しているのではないでしょうか。
……と、長くなりそうなので、このくらいにします。
結局のところ何を申し上げたかったかというと、
「 [理系/文系] っていう分類は強引だし、分類することで生まれるメリットよりも、デメリットの方が多くないですか?」
……ということなのです。
例えば今回ご紹介した二つの記事の場合、「理系」「文系」という言葉に安易に頼らずに、もっと丁寧に読み解いた記事にできなかったのかな、ということなのです。
こんなことをいちいち考えるマイスターは細かいところを気にしすぎなのかもしれませんが、こうしたことをちゃんと考えていくことで、日本の教育はもうちょっと柔軟になれるんじゃないかなと思うのです。
まだまだ書き足りないことがありますが、理系・文系の分類についてはまた改めて、今後も色々な視点で考えてみたいと思います。
以上、マイスターでした。
※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。
私は高校の時理系科目の方が成績が良かったにも関わらず文学部へ進学し、途中簿記の資格を取ったことをきっかけに統計学をちょこーっと学び、現在はプログラミングを勉強しています。
文系なんだか理系なんだか良く分からない経歴(というと偉そうですが)なので、就活では良く「何がしたいんだ??」と疑問持たれてました。
私としては「なんでそんな疑問をもたれるんだろ?」ってとこが疑問で、面接官とうまくコミュニケーションできませんでしたね(笑)
高校時代の理系の成績が良いにも関わらず文系ってところも、周囲を混乱させたみたいです(まだ不況で、理系の方が就職が良いと言われていたので)。
高3の時に受験に使わないのに趣味で化学の授業取ったりして、さらに話がややこしくなったり・・・。
物事の仕組みや根本を探るのが好きなだけなんですけどね;