大学と行政が連携 神戸の子育て支援

マイスターです。

大学の役割は、大きく3つあると言われています。
それは教育、研究、そして地域貢献です。

エクステンションセンターなどが主体となって社会人向けの公開講座を開催したり、NPOなどの市民活動と連携したり、地域貢献には色々な形があります。

今日は、そんな中で、ちょっと興味深い取り組みをご紹介します。

【今日の大学関連ニュース】
■「市提案に応じる 神戸の3大学子育て支援」(読売オンライン)

神戸市内の大学で、キャンパス内の施設などを乳幼児が遊べるスペースとして開放し、子育て支援に乗り出す動きが相次いでいる。「遊ぶ場所が少ない」「子育ての相談を聞いてほしい」などの声を受け、市が大学側に提案した。施策の幅を広げることができる上、保育士などを目指す学生らには実践教育の場となり、市は<一石二鳥>の取り組みとして注目、今後も参加大学を広げていくつもりだ。
市によると、0~2歳児の人口が市内で最も多い東灘区の保護者700人を対象に昨年3月、アンケート。児童館や子育てサークルなど子育てに関するグループなどに入っていない乳幼児は約4割に上り、市は「子育て支援の場所が不足している」と重視した。
市が大学に支援を求めたところ、甲南女子大(東灘区)、神戸大(灘区)、神戸親和女子大(北区)が応じた。同年4月、神戸大と甲南女子大がキャンパスの一部を開放。幼児教育に詳しい教授ら専任教員2人が常駐し、育児に悩む母親から相談を受けたり、スポーツや音楽などを通じた乳幼児教育プログラムを提供したりしている。
神戸親和女子大は今月11日、「子育て支援センター」を開設した。親子が遊べるスペースを提供。児童書やおもちゃを用意し、教員と学生も一緒に乳幼児と触れ合う。特に、金曜の午前は、10組の親子を対象に、うたあそび、絵本の読み聞かせ、子どもの健康バランスを考えた食育を指導し、子育ての参考にしてもらう。
(上記記事より)

というわけで、キャンパスの一部を、子育てのためのスペースとして開放するという、神戸の取り組みです。

市民からの声を受け、行政が大学に提案。その結果、こういった連携が実現したとのこと。
こういった結びつき方は、いいですよね。
大学と地域が目指すべき関係って、こういうことなのかもなぁと思います。

取り組みの内容も、非常にうまく考えられています。

その大学の学生が、ちゃんと取り組みのコアに関わる仕組みになっています。
教員も参画し、教育活動の一環、実践の場として位置づけているのですね。

例えば、神戸親和女子大学が開設した子育て支援センターのwebサイトが、こちら。

■「子育て支援センター『すくすく』」(神戸親和女子大学)

このセンターが実施している「ウィークリープログラム」の説明には、

10組の親子を対象に本学の教員と学生が3ヶ月間子育て支援プログラム(うたあそび・絵本・食育など)を提供いたします。
(上記リンクより)

……とあります。
3ヶ月間ですから、けっこうしっかりした教育プログラムとして組み立てられているのではないでしょうか。
このあたりは、大学ならではかも知れません。

ほか、スポーツや音楽、製作、クッキングなどの専門家の方による、子供と保護者向けの「スペシャルプログラム」なんていうのもあるんですね。
いいなぁ。

さらに、需要がありそうなのが、無料で子育てに関する不安や悩みを相談できる、子育て相談プログラム。
「必要であれば本学の心理・発達の専門家がカウンセリングを行います。」というのが、さすが大学。頼もしいです。
これらが無料で受けられるのですから、大学の近所の方は恵まれていますね。

専門家である教員にとっては、知識やスキルを実践する場であり、また保護者から様々な参考意見を聞ける場。学生にとっては、生きた実践体験を、豊富に積める場なのでしょう。
でも、何よりも「地域の人達から感謝される」というところが、運営側の皆様にとって嬉しいことなのではないかなと思います。

大学を訪れる親子も、子供を遊ばせるスペースがあるというだけに留まらず、様々な不安や悩みを解消し、子供について学ぶことができるのですから、ずいぶん助かると思います。
核家族化が進んだ今、子育てに関して不安を抱える保護者の方は少なくないと聞きます。そんな方々にとっては、こういった大学のサポートは、かなりありがたいのではないでしょうか。

こういった関わりを通じて、結果的に、大学が身近な存在になりそうですよね。
地域の中で、大学のイメージも非常に良くなると思います。

そして神戸市は、市民の悩みを良い形で解決できたわけです。

以前は、「市民へのサービスは、何でも行政がやるものだ」という姿勢の自治体って、けっこうあったと思います。
でもそうやって、地域サービスのすべてを行政の仕事にしてしまうと、限界が出てくるんですよね。予算がかかったり、ハコモノばっかりが建ったり、そのくせ対応が画一的で細かいニーズには対応できなかったり。

その点、「大学と連携して解決しよう」と考えて実行した神戸市には、感心します。
このように行政が柔軟だと、保育以外にも、色々な面でいい連携が生まれるのかも知れませんね。

そんなわけで今日は、ちょっとうらやましい取り組みをご紹介しました。
他の地域でも、こういった取り組みが広まったらいいなぁと思います。

以上、マイスターでした。

※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。