大学の広報方針、見直された方がいいのでは

マイスターです。

これはどうだろう……と思う大学サイトを見つけてしまいました。
どうしようかと思ったのですが、個人的には悪い大学ではないと思っていただけに、とてももったいないのです。
なので、「もっと良くなる例」ということで、ご紹介することにしました。

最小限のコメントだけにしますので、後はご覧になった方がご判断ください。

そのサイトとは、つい先日、総長が逮捕されてしまった↓この大学です。

■「東京福祉大学・大学院」

上記のリンクをクリックすると、4分にわたるフォトギャラリーがスタートします。
お時間のない方は「SKIP」をクリックしてください。

ご覧いただきたいのは、↓このページです。

■「大学概要:総長メッセージ」(東京福祉大学)

この方が逮捕された件は、事実なら大変なことですが、警察および司法の判断が出るまでは、その点はひとまずおいておきましょう。

マイスターは、あくまでも広報的な視点から、あんまり良くないなぁと思う点をご紹介します。
同大の関係者の方には非常に申し訳ないのですが、大学webサイトの企画・制作に関わっておられる方々にとっては、「こういうサイトはやめましょう」という参考事例になるかも知れません。

まずは、総長の略歴欄。

(略歴)
・清和天皇の末流 小笠原源氏の流れをくむ茶屋四郎次郎清延 
 第17代目直孫

・フォーダム大学教育学大学院教育行政管理学科 博士課程修了
 教育学博士
 (フォーダム大学は上智大学と同じキリスト教系名門大学です)
・学習院大学法学部法学科卒業
・前ハーバード大学教育学大学院招聘学者
・前フォーダム大学社会福祉学大学院特別高等客員教授
(以下略)
(上記ページより。強調部分はマイスターによる)

赤字の部分、書く必要ないのではないでしょうか。
おそらく多くの若者は(というか、批判精神のある大人も)、あんまりこういう姿勢に心動かされたりはしないと思います。

続いて、メッセージの本文です。

私がハーバード大学教育学大学院で研究した教育方法
(上記ページより)

2回出てくるフレーズです。
ちなみにこのページだけで、ハーバードという文字は4回出てきます。
ちょっとくどいような気がしないでもありません。

なお、冒頭で述べた4分のフォトギャラリー映像には、途中でハーバードの学章を飾った総長室の写真や、総長の先祖である「茶屋四郎次郎清延」の銅像がばばーん!と出てきます。
よほどご自慢なのだろうな……と、受験生を始め、読む人に思わせることでしょう。

早稲田大学の法学部を卒業した私の娘は、東京福祉大学の学生が現役で地方上級公務員試験に続々合格していると聞き、大変おどろいていました。早稲田の法学部と言えば偏差値は70(河合塾の資料による)で東大法学部と同じランクですが、
(上記ページより)

ここは東京福祉大学の公式サイトであって、早稲田大学のサイトではないはずなのですが、ずいぶんとご自分の大学の学生さんに対して、失礼なことをおっしゃっていませんか。
……というか、ご息女がどこを出たとか、偏差値がどのくらいとかは、ここでは関係ないはずでは……。

ちなみに東京福祉大学のサイトには英文ページが存在するのですが、ご丁寧にも

According to the data provided by Kawaijuku, Law Department of Waseda University has a standard deviation value of 70, equivalent of Law Department of the University of Tokyo.
(上記記事より)

……と、全文を英訳されています。うーむ、海外の方が見たとき、意味があるのでしょうかこの内容。

本学の校章には大海を行く「御朱印船」がデザインされています。私の先祖である茶屋四郎次郎は(略)。命がけで、未知の世界へ飛び込み、わが国の発展のために尽くした先祖の冒険者の精神、国際的な広い視野、人のために尽くそうとする心。こうした精神は、時代は変わった現在も生きているものだと私たちは考えます。
(上記記事より)

素朴な疑問なのですが、東京福祉大学と、総長のご先祖はどのくらい関係があるんでしょうか。
ちなみにこの学園、学校法人名は「茶屋四郎次郎記念学園」だそうです。ちなみに学章も、「大海を渡る御朱印船」のデザイン。
この辺は学園の教育理念ですから、部外者がどうこう言うものでもないのかも知れませんが、ちょっと唐突な気がします。
でも、「私の(先祖)」で始まった文章が、いつの間にか「私たちは」につながっているのを読んで、あれ? と感じてしまう人は、マイスターだけではないと思うのですが。

そして、締めは以下の長文です。

東京福祉大学では、東京学芸大学や筑波大学、東京工業大学(大学院研究科長)、一橋大学、早稲田大学、群馬大学(医学部学科長、教育学部長)、横浜国立大学、東京医科歯科大学、東京女子医科大学(副学長)、群馬県立女子大学(文学部長)、大阪市立大学、日本福祉大学、日本女子大学(カウンセリングセンター長)、大妻女子大学(元日本児童学会長)、玉川大学、立正大学(心理臨床センター長)などの教授だった、日本を代表する本学の一流教授陣とハーバード大学で研究した総長が協力し合って、就職率や公務員試験、教員採用試験や国家試験で他大学にはない高い教育実績を達成しています。

(上記記事より)

個人的には、この文章を読んだだけですと、権威主義的な印象を受けてしまいます。
正直言って、少々くどい気がします。

そう、なんだか、全体的に権威主義っぽい香りを漂わせてしまっているのです。
高校生が(というか大人も)、あんまり好きじゃないと思われる、この香り。
余計なお世話なのですが、少し心配になってしまいます。

それは、上記の「総長メッセージ」のページに限りません。
例えば、トップページに掲載されている、大学によるニュースリリース。

■「ニュース&トピックス: 東大・早稲田等一流大学出身の本学の教員の先生方が オープンキャンパスで挨拶しました。」(東京福祉大学)

権威主義的なタイトルだなぁ……と思うのはマイスターだけでしょうか。
ここは東京福祉大学のサイトであって、東大や早稲田大学のサイトでは(以下略)

同大の卒業生や在学生、また今からここを受けようとされている受験生の方々は、「東京福祉大学はこの分野で一流です!」と言って欲しいのであって、東大や早稲田、ましてやハーバードが一流であることを聞きたいのではないんじゃないかと、個人的には思うのです。
皆様はどう思われますか?

ちなみに、上記のニュースリリースをしっかり読んでいただくと、興味深いことがわかります。
10人の先生がオープンキャンパスでスピーチされているのですが、全員、同じことを必ず話されています。
それは、「総長の人格や研究を褒め称えること」と、「自分の出た大学や大学院は一方的な授業だった」と批判すること、この2点です。

そのため、タイトルでは「東大・早稲田等一流大学出身の」と持ち上げておきつつ、本文ではみんな「母校の教育は良くなかった」と批判しているという、おかしな状況になっています。

あと、ちょっと気になる文章を見つけてしまったのですが……これも上記のニュースリリースからです。

もっと驚く授業は、資格試験や公務員・教員採用試験の対策講座です。本学には、中島総長が開発された必ず試験に合格するための独自の教え方のメソッドがあります。(略)では東京福祉大学ではどのように資格試験に合格するための授業をやっているのでしょうか。
私が担当している臨床心理士資格試験対策講座を例にしてお話します。臨床心理士の試験に合格するためには難しい専門書や参考書は一切使いません。過去の問題とそれについての解説書だけで勉強をしています。なぜ専門書や参考書を使わないかと言うと、試験に合格することと臨床心理の専門家になることは違うからです。いくら夢を見ても、資格試験に合格しなければ、夢だけで現実とはなりません。試験に受かるために最も大切なのは、合格と言う目的に最も適した東京福祉大学の勉強方法でした方がいいです。
臨床心理士の筆記試験は○×の問題です。対策講座では、まず問題の最初に答えを記入します。「あれっ」と思う人もいるかもしれません。東京福祉大学の試験対策講座では、解説や説明なしでいきなり答えと問題を暗記する事から始まるのです。それから問題文の間違っているところを修正して、解説文と照らし合わせながら暗記をしていきます。この作業をすべての筆記試験問題について行います。その結果、問題集が試験対策の教科書になっていくのです。資格試験は、1つの事柄が問題になったり、逆に答えになったりして、形を変えて出題されるので、難しい専門書を見て勉強するよりも、過去問を100%暗記できるようになることが合格への早道なのです。授業に出席すれば、東京福祉大学の大学生や大学院生はこの方法でどんどん力を伸ばし試験に合格しています。
(上記ページより)

総長が開発されたというこの方法で、東京福祉大学は資格取得の実績を上げ、就職率ナンバーワンにもなったとのことですが……。
うーん、読む人によって、評価が分かれそうです。

皆様は、どう感じられたでしょうか。

ちなみに総長が逮捕され、各メディアが大きく報じている現在でも、同大のサイトには、その旨に関する説明文やお知らせは掲載されていません。
メディアの報道によると、キャンパスにも掲示は一切ないそうです。
そして、逮捕された総長の紹介ページも、上でご紹介したとおり、手つかずのまま。

東京福祉大学は、教育的には実績のある大学だと思っていただけに、こういった広報体制は、もったいないなぁと思ってしまうのです。

今回の逮捕劇を受けて、総長は大学を私物化していたのでは? という批判も上がっている模様ですが、個人的には、「とりあえず、今のwebサイトは確かに私物化されています」とは言えるかなと思います。

以上、マイスターでした。

※この記事は、現役高校生のための予備校「早稲田塾」在籍当時、早稲田塾webサイト上に掲載したものです。

7 件のコメント

  • 内部の意見や学生・保護者の問い合わせ程度では、
    ビクとも動かなかったこの法人が、貴ブログの投稿を知るやいなや大学HPから
    上記で指摘されている部分を削除および差替えをしたようです。
    すごい威力ですね。
    内部に対しては威圧的・権威至上主義。
    影響力をもつ外部者に対しては非常に敏感。
    これも、この法人の体質でしょうね。

  • 22日23時にこのサイトで指摘を受け、更に2chのリンク、トラバされたブログなどから、あっという間に学校関係者の目にはいったのでしょう。23日の午後にはHPが一掃されていました。
    21日10時に第一報が報道され、22日17時に校内掲示で事実報告した怠慢さに比べると、素晴らしく迅速な対応だと感じました。
    学校関係者が本当に大切なのは学生や保護者、OBやOGではなく・・・関係者同士で総長を擁護し体裁を気にして、責任逃れを必死にしている姿が見えてきました。
    ありがとうございました。

  • 私は同大学系列の専門学校の卒業生です。
    総長は著書などで暗記教育が今の教育をダメにしたと言ったりしてましたが、試験直前対策の授業で突然乱入したときは、「国試は暗記だ」、「受かれば金儲けできるぞ」、「合格したら私のところにお礼にこいよ」などと大声で叫び、周りをしらけさせていました。
    教員にとっては絶対的な存在だったのかもしれませんが、学生にとっては、総長は迷惑な存在、もしくはどうでもよい存在だったと思います。

  • 私はこういう風潮を「有名病」と呼んでいます。結構小さな大学でみられます。「虎の威」病。

  • 私はこの学校の系列校に通っています。さらに問題にされるべきは系列専門学校の授業の手抜きにあると思います。東京福祉大学に対しては通信にあたるため、授業の大半はレポートを書く自習になります。10分も話しておけばあとは自習にしておけばいいと思っているようです。
    また、簡単な資格なら合格しているようですが、難しい資格、公務員採用試験等は誰も受かっていません。元総長も学生を「出来ない子」と決めつけているようです。
    出来ればこの学校にはもう誰も入って欲しくないです。

  • この大学の系列校に通っています。
    あの事件のおかげで、通っている生徒も「頭がおかしい」「馬鹿の集まり」などと心ないことを沢山いわれました。
    確かに、総長が起こしたこの事件は許されるべきものではありません。
    ですが、一番の被害者は私たち生徒だということをご理解いただきたいものです。
    教育者ともあろうべき人が起こした犯罪。
    そのために、どれほどの生徒が今回の報道で悔しい思いや憤りを感じたことでしょう。
    今回の事件については何を言われても仕方がないのかもしれません。
    けれど、ここに通っている生徒の事を悪く言われる方がいることもまた事実です。
    私はその事が非常に悔しく、また悲しい思いでいっぱいです。