「教育再生推進委員会」はどのように機能するか

マイスターです。

安倍首相退陣時、一度は解散するかとも思われた教育再生会議。
その後、とりあえず存続するということにはなりましたが、いくつかのメディアは、政権交代前と比べて、再生会議の議論が「薄味になった」と評しているようです。

大胆な提言を行っていた安倍政権の頃と比べ、文科省のことを配慮したものになったのだとか。

(例)
■「『安倍改革』相次ぎ失速 教育再生や公務員制度首相、官僚寄り色濃く」(北海道新聞)
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/politics/68851.html

個人的にも、確かになんだか位置づけが曖昧になった感はあったように思います。

教育再生会議の提言内容については、賛否両論いろいろあるでしょう。
ただいずれにしても、「これまでの議論は結局、どこに収束していくの? どのような生家に繋がるの?」ということが不明確なままでは、落ち着きませんよね。

そんな中、ひっそりと、↓こんな報道がなされていました。

【教育関連ニュース】—————————————–

■「教育改革、官邸に新機関・再生会議の提案具体化」(NIKKEI NET)
http://www.nikkei.co.jp/news/seiji/20080102AT3S2900Z31122007.html
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福田康夫首相は31日、官邸主導で教育改革を加速するための新組織を首相官邸に設置する方向で検討に入った。安倍晋三前首相が立ち上げた教育再生会議(野依良治座長)を引き継ぎ、同会議が打ち出した改革案を推進する母体とする。国民の関心の高い教育問題に福田政権としても重点的に取り組む体制を整える狙いだ。

新組織は教育再生会議が1月に最終報告をまとめるのを受け、「教育再生推進委員会」(仮称)として設置する案が有力。再生会議が打ち出した大学の9月入学の促進や社会人教員の大量採用、小学校から大学までの「6.3.3.4制」の弾力化といった改革案の具体化を検討。実現に道筋を付ける役割を担う。

(上記記事より)

教育再生会議がこれまで議論・報告してきた内容を具体化する、「教育再生推進委員会」を設置する方針だとのことです。

あんまり他のメディアは取り上げていないようですが、この報道、個人的にはちょっと気になりました。

教育再生会議の主要メンバーは、そのまま教育再生推進委員会の委員として再任されるのかな?
それとも、ガラッと違うメンツになるのかな?

とか、

具体化を検討するための組織ということは、文科省官僚や、いわゆる「文教族」と呼ばれる方々もメンバーに加わるのかな?
もしそうだとしたら、これまで議論してきた改革案がいわゆる「骨抜き」の状態になっちゃったりしないかな?

とか。
結構、あり得る話だなぁと思いませんか。
マイスターはとっても気になります。こうした点が、実際に法案や政策として実を結ぶまでの過程に、かなり大きな影響を与えると思うからです。

しかし、あんまりメディアはつっこんでいないようです。というか、NIKKEI NET以外、この発表を報じてすらいません。
どこかのメディアが詳しく取り上げていないかなぁ、と思って探していたら、なんと海外のメディアの記事が一番詳しく紹介してくれていました。

■「日本の公教育改革、福田首相が直接てこ入れ」(中央日報)
http://japanese.joins.com/article/article.php?aid=94449&servcode=A00&sectcode=A00

日本経済新聞は1日、福田康夫首相が、過去2年間に渡って推進してきた教育改革案がスローガンだけで終わらず教育現場で実践できるよう、首相の直属機関として「教育再生推進委員会」を新設することにしたと報道した。この委員会は首相の諮問機関だった「教育再生会議」がこれまで提案した改革案を制度的に具体化する政府公式機構として首相の直属の内閣官房に事務局が設置される。福田首相が直接、教育改革の実務を行うという意味だ。

新組織にはこれまで改革案を出した民間専門家と、立法実務を担当する公務員を含み、積極的に制度立案を推進することになった。新機構は何より改革案を具体化する過程で必要とされる場合、政府省庁の協調を首相職権で要請できる。制度が教育現場で正しく実行されていているかを監視、指導する体制が常設化され、常時的に問題を解決していけるシステムが構築される予定だ。首相官邸関係者は「教育再生推進委員会は首相の権限に後押しされ、推進力を持つために迅速な意思決定が可能になる」と明らかにした。

(略)教育再生会議は今月中、福田首相に改革案を最終報告することにより役割が終了する。福田首相の悩みはこのような提案を制度化して具体的に推進することだった。なぜならば、歴代政権のように教育行政の実務権限を持っている文科省に改革を任せた場合、案が縮小され、却下される可能性が高いためだ。

80年代中ごろ、中曽根康弘元首相と90年代後半の小渕恵三元首相のときにも、諮問機関を通じて教育改革案を作ったが、文科省の抵抗で死文化したことがある。福田首相はこのような前轍を踏まずに、教育再生会議の改革案を制度的に具体化するために、常設機構を創設し、直接、推進するとしたのである。

(上記記事より。強調部分はマイスターによる)

韓国のメディアは、(ちょうど日本のメディアがアメリカのニュースを取り上げるときのように)日本の教育改革について、ほんのり期待過剰な報道をします。上記の記事も、ちょっぴりそんな感じがしないでもありません。
しかしその分、日本のメディアが言いにくいこともハッキリ言ってくれていて、わかりやすかったりします。情報も、NIKKEI NETより細かいですし。

さて、この報道によれば、新たに設立される教育再生推進委員会には、教育再生会議の委員の他、(おそらく文科省の)官僚も加わることになっているようです。

となると……

具体案の検討に際し、どこまで現状のシステムを変えるかという点で、「元・教育再生会議委員」と「文科省関係者」との間で激しい綱引きが行われることが予想されます。

(状況はちょっと違いますが、なんだか、日本道路公団民営化について議論していた「道路関係四公団民営化推進委員会」内でのバトルを、マイスターは思い出してしまいました)

というわけで、少なくとも、教育再生会議が打ち出した内容がそのまま実行に移されるということはない……ような気が、個人的には既にしています。

ある案はほぼそのままで実現し、ある案は骨抜きになりつつ実現し、ある案は実現しない……というところでしょう。
首相のリーダーシップの在り方によっては、ほとんど全部、骨抜きになるかもしれません。
さて、今後、どのように具体化のための議論が進められていくでしょうか。

まずは教育再生推進委員会のメンバー構成がどうなるか、チェックしていきましょう。

以上、マイスターでした。

1 個のコメント

  • 誤字だと思うのですが・・・・・。
    「これまでの議論は結局、どこに収束していくの? どのような生家に繋がるの・・・・・」
    生家→成果では??