2008年 加速するか、大学間連携

あけましておめでとうございます、マイスターです。
今年もどうぞ、よろしくお願いいたします。

さて、ここ数年、大学関連のニュースに「連携」の文字が多く見られるようになっています。
「産学連携」については、以前からその強化が社会的な課題になっていましたが、これに加えて2007年は「大学同士の連携」が目立ちました。

話題の中心となったのは、大学同士の人材交流をより活発にすることで、教育・研究機関としての競争力を高めようという動き。
特に年末、メディアで大きく取り上げられたのが、↓このニュースでした。

■「東大、京大、早慶 4大学院が連携「多様な研究機会を」」(MSN産経ニュース)
http://sankei.jp.msn.com/life/education/071226/edc0712260058000-n1.htm
■「東大・京大・早大・慶大、大学院生交流で連携」(NIKKEI NET)
http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20071226AT1G2504G25122007.html

東大と京大、早稲田大、慶応大の4大学は25日、来年4月から大学院生が相互に交流して研究指導を受けられるようにする協定を締結した。院生に多様な教育・研究機会を提供し、人材育成を図るのが目的。

(上記記事より)

科研費の額や各種のランキング、および受験生からの人気などにおいて、わが国の大学をリードしている国立・私立の4大学が、大学院生の相互交流を行うと発表しました。

こういった協定では、「制度はあるけれど、非常に制約が多いため、実際にはほとんど利用されていない」というケースもしばしば見られます。
今回の4大学のケースはというと、報道によれば

・4大学の全研究科が対象。
・受け入れ先の大学は授業料などを徴収しない。
・派遣先での研究以外に授業にも参加することも想定。
・研究期間は修士課程は半年〜1年程度が原則。博士課程では2年間に延長することも。
・一度他の大学に“留学”した後に、再び別の大学で学ぶことも可能。
・指導教員は担当した他大学の院生の学位論文審査に参加できる。

……といった内容なのだとか。
少なくとも制度上は、学生の積極的な参加を可能にする仕組みになりそうです。

↓海外メディアも、さっそく取り上げていました。

■「『日本の頭脳集団』東大・京大・早・慶が大学院連合」(朝鮮日報)
http://www.chosunonline.com/article/20071226000024

東大と京大は日本を代表する2大国立大学であり、また早大と慶大も日本の2大名門私立大学で、計3万6000人(日本国内の大学院生の10%)の大学院生が在学する、いわば“日本の頭脳集団”。
(略)朝日新聞は「他大学での”武者修行(武士が各地方を巡り武芸を磨くこと)”で院生を鍛え、大学間の国際競争を勝ち抜く狙いがある」と報じた。

今回の提携は国際競争力の強化を目的とした典型的な「強者連合」で、学生の学力低下に頭を痛める日本の大学に大きな波紋を呼びそうだ。

(上記記事より)

国内メディアは言及していませんでしたが、この4大学で、日本の大学院生の1割を占めるんですね。そう考えると、これは大きなインパクト。
学生を引き留めたい他大学の大学院にとっては、大変なプレッシャーになりそうです。

いずれにしても今後はこういった、大学間交流の垣根を低くする動きが、盛んになりそうです。上記の東大・京大・早慶の中に加わるのか、それとも地域ごとなどに独自の連携の輪をつくるのか、大学によってやり方は異なってきそうですけれど。

「大学間で協定を結ぶことで人材交流の柔軟性を高める」というケースとしては、上記以外にも、例えば以下のような報道がありました。

■「国公立芸術大全5校が連携 教育環境充実目指す」(京都新聞)
http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2007121200160&genre=G1&area=K10
■「医師養成で大学病院連携 金沢大、金沢医科大など」(北国新聞)
http://www.hokkoku.co.jp/_today/H20071222102.htm
■「5大学・短大と放送大 共通講義へ連携 コンソーシアム佐賀を設立」(西日本新聞)
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/local/saga/20071219/20071219_004.shtml
■「島大など3大学、がん専門職養成へ連携」(山陰中央新報)
http://www.sanin-chuo.co.jp/news/modules/news/article.php?storyid=408901006

あくまでも上記は例。他にも、2007年だけで色々な事例が生まれたと思います。

ちなみに、(東大・京大・早慶の例と異なり)「地域ごと」のまとまりで連携している例が多いですね。学生が日常的に、気軽に大学間を移動できるようにという観点からすればこれは当然でしょう。
でも一方で、研究分野ごととか、女子大ごととか、他のつながりも色々検討してみると、また違った可能性が出てくるかも知れません。

さて、これまでの例に対し、「いっそ複数の大学の合同で、共通の教育・研究機関をつくってしまおう」という事例も今、増えてきています。

■「子供の心研究、金大に拠点 09年度に連合大学院 阪大、浜松医科大と連携」(北国新聞)
http://www.hokkoku.co.jp/_today/H20070906101.htm
■「信州大や中央大など8校連携、理工系大学院開設へ」(NIKKEI NET)
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20071126AT3B2500225112007.html
■「福井大が原子力研究の連携大学・大学院構想を表明」(読売オンライン)
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news2/20071114wm01.htm
■「名工大と名市大が連携へ 院の共同設置など“全面協力”」(中日新聞)
http://www.chunichi.co.jp/article/national/news/CK2007112902068187.html

上記は、最近報道された例。実際にはこちらも、他に色々な事例があります。

教職員や施設・設備など、各大学のリソースを持ち寄ることで、より質が高く、競争力のある教育研究機関を持とうというのが各大学の狙い。
現在のところ博士課程の事例が中心のようですが、教職大学院や法科大学院などの専門職大学院でも、↓取り組みが始まっています。

■「京の国私立8校が連合 教職大学院で京教大など」(京都新聞)
http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2007112700087&genre=G1&area=K00

■大学院 香川大学・愛媛大学連合法務研究科
http://www.ls.kagawa-u.ac.jp/

また、今後は大学院に留まらず、↓学部の共同設置も可能になってきます。

・学部を共同設置 学位も連名で(2007年11月13日)
https://unipro-note.net/wpc/archives/50386791.html

こうなってくると、「名の知れた大学」を出たかどうかということはあまり意味を成さなくなってくるのかも知れません。
「何を、誰から、どのくらい、どのように学んだか。その結果、どのようなアウトプットを生み出せるようになったか」という、実質の部分でより判断されるようになってくるのかなと思います。

このように、2008年も、大学間で連携する動きが拡がっていきそうです。

ただしこういった連携を行う場合、意識しておきたいのが、責任の所在。

例えば、連携してつくった連合大学院の評判が悪かったとします。
その責任をとるのは誰でしょうか。
責任を持って、評判を上げるためにナタを振るわなければならないのは誰でしょうか。

そういった問題の改善や、品質向上のためのガバナンスをきちんと決めておかないと、連携プロジェクトは成功しないように思います。
お気を付けください。

以上、2008年度も世間が驚くような、魅力的な連携が生まれることを期待する、マイスターでした。