マイスターです。
平成20年度に開設される学部・学科のリストが先日、文部科学省のwebサイトに掲載されました。
【教育関連ニュース】—————————————–
■「平成20年度開設予定の大学の学部等の設置届出について(平成19年4月分)」(文部科学省)
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/19/06/07061816.htm
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個性的な名称が踊っています。
総合光科学部 グローバルシステムデザイン学科
ライフデザイン学部 安全安心生活デザイン学科
情報通信学部 組込みソフトウェア工学科
総合文化政策学部 総合文化政策学科
国際日本学部 国際日本学科
異文化コミュニケーション学部 異文化コミュニケーション学科
教養学部 アーツ・サイエンス学科
保健医療学部 ヘルスプロモーション整復学科
人間科学部 ファッション・ハウジングデザイン学科
中には正直、名称から内容を類推するのが難しそうなものもありますが、とにかく、各大学の「受験生、集まってくれ!」という願いは強烈に伝わってきます。
メディアでも話題になっているのは、明治大学の「国際日本学部」。
■明治大学 国際日本学部
http://www.meiji.ac.jp/gjs/
大学のwebサイトを拝見すると、なるほどそういうコンセプトかと理解できますが、一瞬「?」マークが頭の上に付くくらい、非常に大胆な名称です。
(それ故、メディアで取り上げられているのですが)
ところでここ数年の間、はっきりと
○国際教育(英語で専門教育、留学生の大幅受け入れ、留学が必修etc.)
○リベラルアーツ
の二点が流行していますよね。
上記の明治大学国際日本学部の他にも、
■早稲田大学 国際教養学部
http://www.waseda.jp/sils/index.html
■法政大学 国際文化学部
http://www.hosei.ac.jp/kokusai/index.html
■立教大学 異文化コミュニケーション学部
http://www.rikkyo.ne.jp/grp/kohoka/ibk/
……等々、首都圏の有名大学が、次々と同系列(少なくとも受験生からはそう見える)の学部を新設しています。
時代が求めるコンセプトを、各大学が分析した結果だということでしょうが、加えて
「今、この分野に乗り遅れるわけにはいかない!」
……という焦りや競争意識が働いているのかな、という印象もあります。
この2つのコンセプトをずっと前に先取りしていた国際基督教大学(ICU)は凄いなぁと感心すると同時に、他の大学が似たような点を前面に打ち出したら、受験生から見た時の差別化が難しくなって大変だろうな、と勝手な心配をしてしまうマイスターです。
しかし、こういったリベラルアーツ系の学部が増える一方で、より学科の内容が細分化・専門分化されていく傾向も見えるようで、何だか興味深いですね。
こういった学問を学んだ学生さん達が10年後、どのように社会の中で役割分担しているのでしょうか。
話を冒頭のリストに戻しましょう。
大方の予想通り、生命科学の分野も根強い人気のようです。
冒頭のリストで紹介されている学部・学科名称の中で、「バイオ」という文字は6つ、「生物」という文字も6つ、「生命」も6つ、使われています。
医療系や栄養学系までカウントしたら、広い意味での生命科学系はさらに多いです。
最近では、高校で生物を学ばせる学校が増え、物理を学ばせる学校が減っていると聞きますが、なんとなく分かる気もしますね。
メディアは、先端生命科学の話題をよく取り上げますし、高齢化や医療技術の発展とともに「医療系の仕事の需要は拡大している」という視点での報道も多いです。
そんな情報も、高校生達の進路指導に影響を与えているのかも知れません。
「情報」という言葉は、10ヵ所以上で使われています。
「総合」は7ヵ所です。
「環境」という言葉は、4つあります。
そろそろブームが終わったかな、と思っていたキーワードが、今でも静かに増殖し続けているようです。
「マネジメント」も4ヵ所です。社会科学系の学科では、「○○マネジメント」という名称をつけるのが流行っているようです。
なお工学系では、「○○デザイン」という名称が流行っています。
こうした学部学科名称のリストは、
「今、どんなことが社会問題になっているのだろうか」
「若者達の関心はどういうところに向かっているのか」
といったことを考えるきっかけとして、非常に面白いです。
また、
「時代を先取りしている(し過ぎている)大学」
「時代をつくる大学」
「時代の流れに乗っかる大学」
「時代に乗り遅れる大学」
「時代を気にしない大学」
……等々、各大学のキャラクターもなんとなくわかります。
時代に乗り遅れがちな大学は、すべての面でいつも遅れがちだったりします。
きっと、大学を構成している「人」の違いなんだろうなと思います。
ところで世の中の製品やサービスは、大きく分けて
●「世の中でこういったものが流行している。世の中の人々はこういったものを欲しがっている。だから、それを作ろう」
という考え方と、
●「まだこんな製品は世の中には存在しない。きっと、こういうものを作ったら売れるんじゃないだろうか」
という2つの考え方で生まれているように思います。
前者は分析型、後者は提案型とでも呼べるでしょうか。
中年以上の方なら、前者を「松下電器型」、後者を「ソニー型」と説明するかもしれません。あるいは、前者を「Microsoft」、後者を「Apple」とイメージされるかも知れません。
(実際には、松下やMicrosoftも革新的な提案型製品を出しているし、ソニーやAppleも市場分析的な製品を出しているのですが、一般にはこういうイメージが根付いているようです。一度定着したブランドのイメージを覆すのは大変です)
ニーズ先行とシーズ先行、なんて言い方もできるかも知れません。
大学の学部学科も、考えてみれば、この2つのどちらかかも知れません。
もちろん、どこでもある程度のマーケティング調査くらいするでしょうから、ゼロからの「完全な提案型」というものは存在しないかも知れませんが、それでも傾向としては、分けられそうです。
学部学科設置リストを見ていて、大学として、
「提案型」の改革や学部学科づくりが好きなところと、
「分析型」の動きが好きなところとに、
強引に色分けしたりできるのかな、なんてことをふと思いました。
これも実際には、提案型で攻める部分と、分析型で守る部分とを組み合わせるのが普通でしょうが、それでも大学のカラーとして、前者の方が多いとか、後者の方が多いとかいった違いがあるような気がしなくもありません。
(試しに、あなたの大学と、あなたの競合大学とを強引に分けてみると面白いかも知れません。どんな結果になりますでしょうか?)
というわけで、見ていると色々考えるきっかけになる学部学科リスト。
社会全体の動きや、ライバル大学の動向もわかるので、お時間のあるときにでもじっくり見てみてはいかがでしょうか。
以上、マイスターでした。
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(おまけ)
個人的にちょっと気になったのは、↓こちら。
■「関西学院大学 人間福祉学部 社会起業学科」
http://www.kwansei.ac.jp/Contents_5534_0_219_0_2.html
「社会起業」という言葉が学科に登場する時代なのですね……と、しみじみ。