マイスターです。
ここ数年、耳にする機会がすこし増えた気がする言葉、「大学編入」。
四年制大学の卒業者が、再び大学に入り直すケースや、専門学校、高専、短大を卒業して編入するケースなど、その種類は様々。
ただ、世の中には、「編入」という手段で大学に入ろう、入り直そうとされている方が思いの外、多いようです。
書店の進学本コーナーに行くと、編入学に関する本がズラリと並んでいます。
(資格本のコーナーにあることもありますね)
Amazon.co.jpで「大学編入」をキーワードに検索をかけてみると、100件以上の書籍がヒットします。
■↓「大学編入」関連本の例
数年前には、こんな状態ではありませんでした。
入学者の人数割合からすればまだまだ少数派でしょうが、「編入」という手段があるということは、広く知られてきているのかもしれません。
ところで、このように世の中に流通している「編入」情報は、大きく二つの種類に分けられそうです。
●有名大学や難関大学に入学するためのルートとして「編入」を使うケース
●主として資格取得のようなキャリアアップ、キャリア再構築のために「編入」を活用するケース
前者は、学士を持っていない、比較的若い方。
後者は、社会人が中心だと思われます。
教員免許や医師などを始めとする各種の資格を取得し、新しいキャリアを積み直そうとする人にとっては、社会人編入は非常に魅力的な選択肢でしょう。
何しろアメリカなどでは、「人生に迷ったら、大学に戻れ」という言葉があるそうです。日本でも、その気になればいつでも大学に入り直し、新たな道を探せるようになりつつあるのかも知れません。
そういう社会を夢見るマイスターにとって、社会人編入が世間の関心を集めているというのは、いいニュースです。
ただ、編入については、以前から少し気になっていることがあります。
それは、単位認定の方法。
大学への編入をお考えの方は、多くの場合、既にどこかの大学で取得した単位を多少なりとも持っていると思います。
語学を始めとする一般教養科目であったり、専門科目であったりですね。
一度、四年制大学を卒業したのであれば、120程度の単位を取ったはずで、その中には編入後の大学でも単位認定されるものが混じっているはずです。
マイスターが想像するに、この「単位認定」をめぐるトラブルが、どの大学でも毎年少しは起きているんじゃないでしょうか?
そう想像する理由は、いくつかあります。
【入学を検討している時点では、入学後に何単位が認定されるのか明確にならないケースがある】
大学の単位認定というのは、基本的にケースバイケースです。
当然、個々人の事情によって認定される単位は違います。
大学によっても違います。
さらに、同じ大学でも学部や学科によって認定の範囲が違ったりします。
普通、四大を卒業した方の編入では、「一括認定」という形で、教養科目や語学の単位をまるごと認定することが多いようです。しかしそれでも、学科によっては編入後に取得すべき1~2年生の必修科目がたくさんあったりして、対応関係は結構まちまちです。
資格取得を目的とする編入の場合、さらに問題が複雑になります。
「卒業に必要な単位」だけでなく、その資格のための必要単位がどれだけ認定されるかを気にする必要が出てきます。
以前の大学で何の単位をどれくらいとったか、どのくらい分野の異なる学科に進学しようとしているのか、等々が大いに絡んできます。場合によっては、以前卒業した大学のシラバスを調べたりする必要もあるかもしれません。
このように、ケースバイケースな部分があるんです。
すると、何が起きるでしょうか。
【単位認定について調べるための資料が存在しない】
人によって対応が違ってくるわけですから、あらかじめパンフレットやwebサイトで閲覧できる資料やマニュアルが存在しないという事態になります。
わかりやすい一括認定の部分については、一応、学生用の便覧などに「○○学科は、○○単位まで認定」と書かれていたりもします。が、資格が絡んできたりすると、もうお手上げです。
編入学を検討する側としては、何単位が認定されるのかを、学校選びの段階で知っておきたいわけです。当然ですね。でも、自分では調べられません。
大学関係者の中には、「そんなことはない。その気になれば自分で調べられるはずだ」とおっしゃる方がいるかも知れません。各資格の関係法を調べ、関係省庁に問い合わせればわかるはずだとおっしゃるかも知れません。
でもそれは、資格のことを知り尽くしている立場の意見です。
一般の方は、必要なデータがどこにあるか十分には知りませんし、そもそも調べる必要もありません。そういったときの相談のために、大学の窓口というものがあるからです。
実際、大学の編入案内を見てみると、「詳細は教務課でお聞きください」なんてことが書いてあります。
ではでは、大学の窓口に行けば、自分の単位が編入後、どれくらい認定されるのか、教えてもらえるのでしょうか。
答えは、多くの場合、ノーです。
【最終的に認定される単位が分かるのは、多くの場合、入学後】
編入を経験されたことがない方は、ええっ!? と驚かれるかも知れませんが、そうなんです。
大学の教務課窓口に行って、「○○と○○の資格を取得するために編入を考えているのですが、編入後、自分のどの単位がどれだけ認定されるのでしょうか?」聞いてみましょう。
ざっくりとした見通しくらいは教えてもらえるかも知れませんが、本当の詳細は、「入学後にならないとわからない」ということで、教えてもらえません。
というのも、一括認定ならともかく、資格が絡む個別の単位の認定となると、時間がかかるのです。関連科目についての知識を持ち合わせている教員の判断が必要なこともあります。そういったものは、教員による会議で検討されることになります。
それで多くの場合、「実際に入学したあと、該当者の単位だけ、検討する」という対応になるわけです。
したがって、単位認定の結果がわかるのは、ヘタをすれば5月ということだってあり得ます。この仕組みというのは、消費者の視点だけで見れば、非常に不便です。
そして、ときに問題になるのが、窓口に立つスタッフの対応です。
編入学を検討する段階で、多くの方が教務課窓口にやってきます。
で、「自分の単位は、どれだけ認定されるでしょうか?」と質問します。
相談しに来る方は、自分では十分な情報が調べきれず、教務課に聞けば確実なことが分かると思って足を運ぶわけです。
でも、大学の窓口に立っている職員が、そういったことに詳しいかというと、そうでもなかったりします。
「認定されるとは思うけれど、実際のところは何とも言えない」といったあいまいな受け答え(少なくとも、相談者の方からはそう見える)をしてしまい、後でそれが、言った言わないの問題になったりもします。
……と、学生の視点で見ると、現在の単位認定の仕組みは大きな不安を感じさせる内容です。
では、どうすればこれが解消されるのでしょうか。
単位認定が、ケースバイケースのものであることは、変えようがありません。
無理矢理わかりやすくした結果、学んでいないことまで学んだことになってしまったりしたら、本末転倒です。
やはり、「入学を検討している段階で、大学側のスタッフが調べてくれる」というのが一番良い流れであるように思います。
もちろんその場で即答するのには限界がありますから、数日間、待っていただくこともあるでしょうが、教えてもらえないよりはずっと良いのではないでしょうか。
資格に関わる単位認定などに関しては、大学同士が普段からネットワークを組んで、お互いの関連科目を対応表などにしておけば、時間をかけずにお返事を返せるかもしれません。
もしかすると、「以前に学んでいた大学」の方が鍵になるかも知れません。
いずれにしてもここは、大学側に工夫の余地があるのではないかと、個人的には思います。
もちろん手間がかかりますから、徹底するとなったら大学側にそれなりの覚悟が要ります。ただ、こういった情報は口コミやメディアで紹介されると思います。「編入するための環境が整備されている大学」という評価を受けることは、それなりにメリットがあることのように思うのですが、いかがでしょうか。
というわけで、編入の単位認定について個人的に感じたことを書かせていただきました。
マイスターが知っている数校の情報をもとに書きましたので、
「うちでは今でも、事前にすべての単位を調べてさしあげている」
といったところも、もしかしたらあるかもしれません。
何かいい事例をご存じの方、情報をいただければ幸いです。
以上、マイスターでした。
短大で教員をやっています.多くの学生が4年生大学へ編入をしますが,それなりのつきあいがあるお得意様大学以外では,うちのどの単位が認定されるのかはやはり入学後にならないと分かりません.
学生が,相手方の事務に問い合わせるとおおむねこのエントリーで書かれたような対応になりますが,知り合いの教員を通して教員から頼むと,多少時間はかかるもののかなり詳しい回答を得られますが,相手方にも負担と分かっているのでこの手はほとんど使えません.
取得した単位の講義内容に具体的にどのような項目が含まれているのか、入学する学科の教員が時間をかけて調べなくてはなりません。その時間は、大学教員が教育などに使うはずだった時間から捻出されることになり、すでに授業料を払っている学生が受けるべきサービスが低下することになります。調査を希望する人からは単位認定審査料を徴収するのが本来だと思います。
大学の経営方針として応募者からは徴収しないというやり方もあるでしょうが、その場合は大学が実際に作業する教員に対して何らかの補填をすべきですが、自由になる金がない国立大では難しいでしょうねえ。入学したら調べるというのは、やむをえない妥協点のように思います。
かつて4大に勤めていました。編入の際の単位認定シュミレーションを担当していました。オープンキャンパスの際に成績証明書、履修科目の証明書、講義要項コピーをお預かりし、ある程度時間をいただいて、シュミレーション結果を返送していました。
ただし、短大から編入される際は、取得科目が確定していないので(卒業見込みの状態であるので)どうしても微調整は入学されてからということになります。また、短大既卒の方の編入の場合は講義要項が添付されていないケースが多く、これまた難問です。昔ながらの(?)●●学とか▲▲論という科目名はまだいいのですが、昨今は魅力的だけど何をやっているかわからない(なんとでも解釈できる)科目名が増えてきておりますので。
シュミレーションを行うことは編入受入側の大学がやるべきことではありますが、確定はどうしても入学後になるかと思います。
日本で四年制大卒業後, 米国の公立大学学部に編入して学んでいます. やはり入学後でないと分からず, しかも大学側の単位認定作業が遅れ授業開始したにも関わらず総認定単位が確定していません. 個人的な見積もりでは 3年次程度からのスタートとなり, 渡航前に留学事務代理人から聞いていた “4年時からスタート可能” とは開きがあり, 計画が狂ってしまいました. 事前に確認を怠った私に責任がありますが, 例え確認を試みたとしても本稿で書かれたような対応になるのが今となっては明らかです.
馴染の深い Community college(日本でいう短大のようなもの) なら良いのですが, 海外の大学とはまるで単位互換の仕組が整っていないようです. なお単位認定の過程では, 下記 URLの 本サイトの別記事にも投稿しましたが, 授業内容以外に, 1授業あたりの単位数の違い(私が卒業した日本の大学は2, 今の米国の大学は 3~4) も問題になっています.
https://unipro-note.net/wpc/archives/50379020.html#comments