マイスターです。
(過去の記事)
・文科省と財務省、大学改革巡って「試算」合戦(2007年05月28日)
https://unipro-note.net/wpc/archives/50316283.html
↑以前、こんな記事をご紹介しました。
財務省が、「国立大学の交付金を、研究業績に応じて配分したらどうなるか?」という試算結果を発表したのです。が、何しろ研究業績ベースですから、教員養成系の大学などは交付金が9割近くも削減されてしまうという、とても極端な数字になりました。明らかに、文科省に対する牽制のための試算結果でした。
そんな財務省に対抗するため、今度は文科省が「地方国立大学の経済効果」を算出、公表。両省の戦いは泥沼の様相を見せ、現在に至ります。
さて、そんな争いの中で、一つ気づいたことなのですが……
最近、大学の経済効果に関する報道をよく見かけるような気がします。
【教育関連ニュース】—————————————–
■「九大の経済効果、年2479億円ナリ 初の独自試算 予算減で存在感アピール?」(西日本新聞)
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/kyushu/20070616/20070616_002.shtml
■「高知大学の経済効果は266億円」(こうちeyeニュース)
http://www.rkc-kochi.co.jp/cgi-bin/news/newsheadline.cgi?date_now=20070617&cont=2&mobile=&from=
■「経済効果は年5億円 鈴鹿医療科学大の薬学部」(中日新聞)
http://www.chunichi.co.jp/article/mie/20070612/CK2007061202023326.html
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ちょっと見ただけでもこれです。
(最後の鈴鹿医療科学大学薬学部の話題は、他の国立大学のケースとは置かれている状況が少々異なりますが、「大学には経済効果があるから補助金を出すべきだ」という論理構造を持っている点は同じです)
現在、財務省の試算結果に抗議の意を表明している国立大学がいくつかあるようですから、その一環として「ウチも経済効果を算出してみよう」と考えているところが、まだいくつか存在するのではないかと想像します。
で。
個人的には、大学の「経済効果」について議論することは、悪いことではないと思います。
実際に、大学があることによってその地域にプラスの経済効果が働くことはあるわけですし、それが地域社会を支えていることもあるだろうと思います。非常に大事なテーマの一つでしょう。
それに、上でご紹介した3つのケースでは、どれも別に「経済効果のために大学は必要だ」と言いたいわけではないんだろうと思われます。財務省の試算結果に対する抗議の意味で、こうした数値を持ち出しているだけでしょう。
九州大学も高知大学も、経済効果云々を抜きにしたって、良い大学だろうと思います。特に地元を支える人材の育成という点においては、誇るべき成果を上げてきたはず。その功績は、経済効果に関係なく、称えられていいものです。
ですからマイスターは、上記の3つの報道については、特に何とも思いません。
ただ、
「ウチの大学は○○億円の経済効果をもたらしているんだ。
だから地元にとっては意義のある存在だし、
補助金を出してでも支えるメリットがあるはずだ」
という単純な論理構造が、あんまり流行ったら心配だなぁとは思います。
「経済効果」という言葉が、大学を存続させるための大義名分として使われたら危険です。
「我が県の経済発展のためにも、高速道路にはお金をかけるべきだ。
この高速道路は、利用者の支持をあまり得ていないが、
地元への経済効果ははかりしれない」
という文章を読んで眉をしかめる人は少なくないと思います。
これが、
「我が県の経済発展のためにも、国立大学にはお金をかけるべきだ。
この国立大学は、利用者の支持をあまり得ていないが、
地元への経済効果ははかりしれない」
だったとしても、同じではありませんか?
道路はダメでも、大学に対しては経済効果があるならいくらでもお金を出して良い、というわけではないはず。道路でも大学でも、ほとんど成果を上げていないのなら、つぶれて然るべきだとマイスターは思うのです。
結局のところ、大学として良くないのであれば、例え経済効果があったとしても存続させるべきではないのです。学校はやはり、教育や研究に対する貢献度で評価されるべきであって、その他の要素はあくまでも二次的なものにすぎないのです。考えてみれば当たり前です。
でも、何故か私達は、「教育のためのものにはいくらでもお金をかけてもいい」という思いこみを持ってしまいがちで、しかもそれが、「地元への経済効果もある」ものだとなると、なおさらつぶすわけにはいかないと思ってしまうのです。不思議です。
そんな思いこみが、あんまり拡がらないと良いなぁと、各メディアの記事を読んで感じたのです。
みなさんも、「経済効果」という言葉の使いどころにはお気をつけください。
以上、マイスターでした。