大学時代、教育実習を経験しなかったことが悔やまれるマイスターです。
さて、そんな教育実習に関して、↓こんなニュースが。
【教育関連ニュース】—————————————–
■「県立14高校が大学生から教育実習費 県教委、中止を指導」(徳島新聞web)
http://www.topics.or.jp/contents.html?m1=2&m2=&NB=CORENEWS&GI=Kennai&G=&ns=news_118161141095&v=&vm=1
■「県内小中学校でも教育実習費受領 7市町教委、適正化指導へ」(徳島新聞web)
http://www.topics.or.jp/contents.html?m1=2&m2=&NB=CORENEWS&GI=Kennai&G=&ns=news_118169783505&v=&vm=all
■「鳴教大、予算を計上 教育実習費問題、県内4大学で支払い常態化」(徳島新聞web)
http://www.topics.or.jp/contents.html?m1=2&m2=&NB=CORENEWS&GI=Kennai&G=&ns=news_118178435612&v=&vm=all
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二〇〇六年度に教育実習生を受け入れた徳島県内の県立高校三十一校のうち十四校が、大学生から「実習費」を受け取っていたことが十一日、県教委の調査で分かった。ほとんどが実習中の図書購入費など必要経費として使われていた。県外では指導教員に「謝金」として渡っているケースもあり、県教委は不適切な金銭授受との疑いを招きかねないとして同日、全県立学校に対し、今後、実習費を受け取らないよう指導。本年度、既に受け取っている学校には返還を求めた。
県教委によると、実習費は一九七〇年ごろに広がった慣例。学生が自ら実習先の学校に支払う場合のほか、大学を通じて支払われることもある。取り扱いは教育実習生の受け入れを許可する各校の判断にゆだねられ、実習生が使う図書の購入費やコピー用紙代などに充てられている。
県外では「謝金」として指導教員が受け取っているケースがあり、文部科学省は「謝金の額が実習生の評価に影響する可能性がある」などとして謝金の排除を求めている。
(「県立14高校が大学生から教育実習費 県教委、中止を指導」(徳島新聞web)より)
徳島県での報道です。
県立高校の他、県内の公立小中学校でも、同様のケースが見つかっているようです。
もっとも、「県外では『謝金』として指導教員が受け取っているケースがあり」というくだりを見る限り、他の県にも存在する問題なのでしょう。
実習費を誰が出すべきかということについての議論はあるでしょうが、公立学校ですし、金銭の扱いが不透明であるのは問題です。
記事によれば、一人あたりの金額は一万円前後であることが多いようです。
ただ、「取り扱いは教育実習生の受け入れを許可する各校の判断にゆだねられ」というあたり、何だかあいまいで適当です。
ほとんどが教材費として使われていたとのことですが、中には送別会で実習生に贈る花束代に使っていた学校もあったようです。送別会の花束を買うために、本人から花束代を徴収するという行為は、普通に考えればとてもおかしいことなのですが、「決められた儀式のための必要経費」ということで、みんな思考停止してしまっていたのでしょう。
ルールではなく「慣例」で何十年も続いてきて、突然それが問題化するというのは、いかにも日本社会っぽいです。
「あれ、これって問題のあることだったの? だって前任者からこうしろと教わったよ? そもそも誰がこの慣例を決めたのかって? そんなの知らないよ」
……というのが、現場の反応なんじゃないかなーと、何となく想像します。
もしかしたら、「この扱い、見直した方がいいんじゃない?」と口にした人だって何人かはいたかもしれません。でもその都度、「これまでずっとこうしてきたから」とか、「他の県でもこうやっているから」とかいった声にかき消されてきたのではないでしょうか。
大学側は、どう考えていたのでしょうか。
徳島県の四大学に対してメディアが調査した結果、大学が学生からお金を集め、実習先の学校に配分していたということが分かってきました。
徳島新聞社が徳島、鳴門教育、徳島文理、四国の四大学に行った聞き取り調査によると、全大学が「実習謝金」「実習諸経費」などの名目で実習費を支払っていた。
このうち鳴教大では、ほぼ全学生が教育実習を受けることから、付属小中学校以外で実習する学生一人当たり九千円として約百人分、計九十万円程度を毎年度の予算に計上。付属小中学校については必要物品のリストの提出を受け、その実費を予算配分している。
文理大と四国大は、実習を受ける学生から一週間五千円程度で、期間に応じて大学側が集金している。受け入れ校には指導教官が持参したり、現金書留で送るなどしていて、受け取りを拒否された場合は実習後や年度末に学生に返還する。
徳島大は、受け入れ校に事前に必要額や支払い方法を書面で確認した上で、個々の学生が持参している。特に指定がない場合は一人一万円を目安にしているという。
四大学とも、研修に伴う教材費やコピー代、給食費などの実費であり、謝礼ではないという認識だ。ただ、余剰金が学校側から返還された例は把握しておらず、当初支払った金額に学生が上乗せして支払った例も確認していないという。
(「鳴教大、予算を計上 教育実習費問題、県内4大学で支払い常態化」(徳島新聞web)より)
この通り、なんだかこちらの対応も、とっても適当な感じです。
「特に指定がない場合は一人一万円を目安にしているという」
「受け取りを拒否された場合は実習後や年度末に学生に返還する」
「余剰金が学校側から返還された例は把握しておらず、当初支払った金額に学生が上乗せして支払った例も確認していない」
……と、お金の扱いについても、そもそもどのくらいの金額が本当に必要なのかも、一切があいまいです。
これもやはり「前任者からこのように引き継いだから」という「慣例」が生み出した問題ではないかと、マイスターは思います。
(というか、考えてみれば、この四大学の実習生は同じように県内の学校に実習に行っていると思われるのですが、大学によってこれだけ用意している金額が違うのに、何か不都合は起きなかったのでしょうか……うーん)
報道されている例に限らず、私達の社会にはこうした不合理が山ほど隠れています。自分も含め、長く続いている物事ほど批判的に捉えるというくらいが良いみたいです。教訓にしたいところです。
さて、では今後、実習費をどのように扱っていけばいいのでしょうか。
ある大学の担当者は、教科や期間によって金額は変わるため、一律に一定額を支払う方式には問題があるとした上で「実習をお願いする立場である以上、受け入れ校に費用を負担させるのはおかしい。適正な負担方法について県教委などと話し合いたい」と話している。
(「鳴教大、予算を計上 教育実習費問題、県内4大学で支払い常態化」(徳島新聞web)より)
……という大学側の声が、報道では紹介されています。
マイスターも、大学又は実習生本人が実費分をキッチリ負担するという方法がベストではないかと思います。
地域の学校が新しい教員の養成をサポートするのは大事なことです。しかしだからといって、費用まですべて受け入れ先に負担させて良いわけではないでしょう。
教育は社会全体で担うものです。
世の中の流れを見ていると、今後、学外での活動を通じて学生が何かを学ぶという機会が増えていきそうな気がします。それは、非常に良いことだとマイスターは思います。企業のインターンシップ活動も、学生が参加するボランティア活動も、より盛んになってくるでしょう。
ただそうなったときに、金額的な負担をどうするかといった議論がその都度、起きるはずです。
誰が負担するかはケースバイケースでしょう。いずれにしても、長く継続的に学生を受け入れていけるようにするのであれば、お金の流れは明確にしておいた方が良さそうです。
「教育活動なんだし、まぁ、なんとなくウチが払ってあげておくか」とか、「それほど大きな額でもないし、他の予算に混ぜて捻出しちゃおう」とかいった処理の仕方をしているのは、先々のことを考えると良くありません。
「あなた達の実習費の70%は私達が負担します。私達が売った製品の利益から、この金額を出します。これはあなた達の将来のため、ひいては社会全体のために私達が行うささやかな協力です。ですから、がんばって学んでください」
……なんて説明を受け入れ先からされたら、きっと学生もやる気を出すんじゃないかとマイスターは思うのです。
それにこうやってお金の拠出元を明確にしておけば、「寄付を集めて、学生の教育のための基金を設立しよう」といった発想だって生まれますよね。結果として、より継続的な教育支援にもつながります。
こうした考え方は、とても大事ではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
以上、マイスターでした。