はしかの被害、拡大中(3):社会的な影響が大きくなり始めた

「大学プロデューサーズ・ノート」のマイスターです。
改めまして、どうぞよろしくお願いいたします。

せっかく気分を新しくしたところなので、何か前向きなニュースをご紹介したいところなのですが、社会的な影響の大きさを考えると、やはり↓こちらをご紹介しないわけには参りません。

【教育関連ニュース】—————————————–

■「大学のはしか休講相次ぐ 対外的な影響出始める」(Asahi.com)
http://www.asahi.com/edu/news/TKY200705210333.html
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はしかの流行がとまらない。感染は、早大や中央大などにも広がった。相次ぐ休講やキャンパスの閉鎖で、学生のサークル活動や、TOEICの試験会場の変更など対外的な影響も出始めている。01年の流行にせまる勢いだが、近年、流行が減ってきたため、免疫を持たない若者が増えてきているという事情が背景にあるようだ。

(上記記事より)

(過去の関連記事)
・はしかの被害、拡大中(2007年5月11日)
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50312154.html
はしかの被害、拡大中(2):休講措置をとる大学がその後も増加(2007年05月17日)
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50313481.html

最初の記事から10日あまり。大学の休講を報じるニュースが耐えません。

特に早稲田大学が5万5千人を休講対象にした、という報道以降、はしか報道がいっそう多くなったような気がします。
発表当初、早稲田大学のwebサイトにはアクセスできませんでした。おそらくアクセスが増加し過ぎて、サーバーがパンクしていたのでしょう。

休講措置の結果、早慶戦のチケット販売も延期されたそうです。もし早慶戦自体の日程が延期されたりしたら、テレビなどのメディアにも影響が出そうです。

キャンパスを、イベント会場などの用途で外部に貸し出していた大学では、既に直接的な影響が出ています。

はしかの影響は、会場に大学校舎を借りている英語能力試験のTOEICにも及んだ。5月27日に約800人が受験する予定だった日本大学経済学部(東京都千代田区)の校舎が使えなくなり、18日にほど近い東京電機大学(同区)に急きょ変更。受験予定者にむけて速達で通知するとともに、受験料の返金や期日の延期もできるように伝えた。ところが19日、東京電機大も感染拡大を恐れるなどして会場の使用をキャンセルしてきたため、別会場への再変更を余儀なくされたという。

(上記記事より)

皆様もご存じの通り、大学キャンパスというのは様々な催しの会場に使われます。上記のような資格試験は、その典型でしょう。
試験会場を移動するのですから、かなりの緊急事態なはずです。近所に会場が借りられればまだしも、それができなかったら大変。
上記の、<日大経済学部→東京電機大学→?>という例なんて、もう大変です。大丈夫なのでしょうか。

他にも企業説明会とか、セミナーとか、学会とか、あんまり会場を変更したくない(できない)イベントが、大学ではよく行われていますよね。
学会会場なんて、大変です。

また、マイスターがふと思ったのは、「キャンパスの中で結婚式をやる」なんてケース。これ、もし大学構内全部を原則立ち入り禁止にしたとしたら、どうなっちゃうんでしょう。日程を変えるのも、他の会場に移動するのも難しいと思われるのですが。

そんな自体を避け、社会に対する組織の信用を保つためにも、感染症に対する大学のリスクマネジメントというのは、必要だとわかります。

今回、「感染者が出たときの対処」と、「感染の拡大を未然に防ぐための対処」とが問われているように思います。前者はクライシスマネジメント、後者はリスクマネジメントと呼べるでしょうか。

感染者が一定数を超えたら、休講措置も必要になってくるでしょう。ただ、「じゃあ、いつまで休講にしていればいいの?」という疑問もわきます。
はしかの流行は大体、春先の現象だとどこかで聞いたのですが、冒頭の記事によればそれは「4~6月」だそうです。つまり多くの大学にとっては、休講が明けてからも、まだ安心できないということです。
1~2週間、休講にして、それでもまた感染者がたくさん出てきたらどうすればいいのでしょうか。流行が過ぎていることに期待する、というのも不確実です。

休講にするだけでなく、感染拡大を防ぐ対策も同時に進めた方が良さそうです。
創価大学のように、休講と同時にワクチン接種を行っているところは、そのあたりまで考えたのでしょう。この大学は「キャンパス休講」を最初に行ったところですが、目の前の危機に対応するクライシスマネジメントだけでなく、潜在的なリスクのマネジメントも考えて動いたわけです。ぜひ見習いたいところですね。

もう一校、さらに上回る大学が、冒頭の記事で紹介されています。

金沢大学(金沢市)では、一昨年から新入生約1800人の全員に、はしか、風疹、おたふく風邪、水ぼうそうの4種の抗体検査を実施している。費用は1人約4100円。昨年は自己負担だったが、今年から大学側が費用を負担している。

もし十分な免疫がなければ一人ひとりに通知をして予防接種を受けることを勧める。医学部の学生だけは、免疫を持っていることが実習参加の条件になっているという。約5000円の予防接種の費用は自己負担だ。

同大の保健管理センターによると、はしかの場合、新入生の約1割が免疫を持っていない。センターは「強制はできないが、およそ半分の学生が自費で受けてくれる。全体として95%以上の学生が免疫を持っていることになる」としている。

専門家は「米国では免疫を持っていることを入学の条件にする大学もある。金沢大のような対策をとっていれば休講にする必要はなく、他の大学にも広まってほしい」と話している。

(上記記事より)

今年、はしかが大流行したことで、今後は金沢大学の対応を参考にする大学が増えるかもしれません。

キャンパスの住人達が十分な免疫を持っていれば、感染拡大は起きませんから、よほどのことがない限り休講の必要はありません。一番確実なリスクマネジメントです。

「どのくらいの学生が、十分な免疫を持っているか」というデータを把握しているだけでも、事態はかなり違ってきます。データを元に、「キャンパス全体を休講にすべきか、それとも各学生への個別対応で十分か」という判断ができますからね。

まだ今年のはしかの脅威は収まっておりませんが、今からでも遅くはありません、今後のリスクを減らすことを考えてみてはいかがでしょうか。
6月以降、はしかは徐々に減っていくかもしれませんが、今のうちに免疫をつけておけば、来年以降のリスクも減らせますよ。

以上、マイスターでした。

1 個のコメント

  • 新しいブログ名称、ついに決まりましたね。これからも毎日、楽しみに読ませてもらいます。
    ところで、「米国では免疫を持っていることを入学の条件にする大学もある」という記事を読んで、1986年に米国留学した際に最初にしたことが、病院にいって抗体検査を受けることだったと思い出しました。この証明がないと、授業が受けられないといわれ慌てました。その時は、アメリカは伝染病が多いからこういうことをやるのだろうなどと、今から考えると頓珍漢なことを考えたものです。
    これだけ混乱が広がると、来年以降、金沢大学のように新入生へ抗体検査を実施することも真剣に考える必要がありそうですね。