歩留まり率の予測には気をつけよう

マイスターです。

毎年、大学関係者を悩ませる問題。それが「歩留まり率」の予測です。
学科の定員に対して、どのくらい合格者を出すか、ということですね。

少なすぎると、定員割れします。
「定員が100人の学科に対して、200人の合格者を出したら、実際に入学したのはたったの50人でした」なんてことになったら、悲劇です。

かといって、多すぎるのも問題なのです。

【教育関連ニュース】—————————————–

■「法大、今春新設学部『うれしい誤算』 08年新設は延期」(Asahi.com)
http://www.asahi.com/life/update/0505/TKY200705050183.html
————————————————————

法政大が、08年4月開設予定と公表してきたスポーツ健康学部(仮称)について、開設を1年延期したことがわかった。今春新設した別の学部の入学者が定員を大幅に上回る「うれしい誤算」で国の基準に触れ、延期せざるをえなくなった。開設予定まで1年を切っての延期は「めったにない」(文部科学省)という。広告などで宣伝してきた法大は、陳謝しつつ注意を呼びかけている。

スポーツ健康学部は、スポーツ振興と個人の健康作りに貢献できる人材の育成を掲げ、08年4月に定員150人でスタートする予定だった。受験雑誌などに広告を出し、多摩キャンパス(東京都町田市)の校舎の改修計画も進めていた。

開設延期に追い込まれたのは、今春開設したデザイン工学部で、定員増を伴う新学部設置の認可基準に触れたため。

文科省大学設置室によると、認可には既設の各学部について、直近4年間の平均で入学者が定員の1.3倍未満であることが必要。大学がむやみに入学者を増やし、教育がおろそかになるのを防ぐための基準だ。

ところが、デザイン工学部には大学側の予想を超えて合格手続きをする人が多く、定員280人の1.37倍に当たる383人が入学。新設学部のため直近4年間の平均ではなく今春の実績のみが基準となり、スポーツ健康学部の開設認可が絶望的になったという。

(上記記事より)

このように、入学者は「多くても定員の1.3倍未満」でないといけないのです。
それを超えてしまうと……このように、大きなペナルティが科せられます。

上記の例では、「スポーツ健康学部」の開設が延期になったことで、その学部の受験を考えていた生徒ががっかりしたり、その学部で働く予定になっていた教員に迷惑がかかったりしているはずです。新学部の宣伝に使われた費用も無駄になったことでしょう。それどころか、今回の謝罪のために余計な費用がかかったと思います。
学部の新設には、かなりの手間や時間がかかりますが、そういったコストももったいないです。
迷惑を受けた人も災難でしたが、法政大学自身も小さからぬダメージを負ったのではないでしょうか。
歩留まり率の予測が外れると、大変なことになるという例です。

(ですから、冒頭記事の「うれしい誤算」という表現は、使い方として間違っていると思うのですが……。「うれしい誤算」って、「予想が違って良い結果になった。思わぬ良い結果が得られた」というシチュエーションで使いますよね???)

しかしこの歩留まり率の予測は、おそらく大学関連業務の中でも、特に困難なミッションの一つではないかと思います。
何しろ、状況が刻々と変わるのです。
ライバル校が入試のスタイルを変えたとか、入試日程が変わったとか、そんなことでも影響が出ます。世間の動きも重要です。この業務を本気でやろうとすれば、統計学を駆使したり、マーケティング調査を行ったりといったプロの仕事になるのではないでしょうか。

最近の例で言うと、薬学関係の大学は、歩留まり率の予測に悩むことが多かったかも知れません。薬学の人気が上昇したり、4年制から6年制に変わったり、慶應義塾大学に薬学部ができたり……いずれも、前年と異なる結果になっておかしくない出来事でした。

しかし、許される上限を超えてしまうと、上の通りの結果になります。
皆様、気をつけてください。

……とここまで書いて、

「そう言えば東京大学の歩留まり率や定員充足率って、一体どのくらいなんだろう?」

という疑問に思い至りました。

で、調べてみたのが、↓これです。

【東京大学 学部学生の入学状況】
    
■文科一類
  募集人員 415
  合格者数 415
  入学者数 415
  歩留まり率 100.0%
  定員充足率 100.0%

■文科二類        
  募集人員 365
  合格者数 366
  入学者数 366
  歩留まり率 100.0%
  定員充足率 100.3%

■文科三類
  募集人員 485
  合格者数 488
  入学者数 488
  歩留まり率 100.0%
  定員充足率 100.6%

■理科一類
  募集人員 1,147
  合格者数 1,170
  入学者数 1,165
  歩留まり率 99.6%
  定員充足率 101.6%

■理科二類
  募集人員 551
  合格者数 568
  入学者数 560
  歩留まり率 98.6%
  定員充足率 101.6%

■理科三類  
  募集人員 90
  合格者数 90
  入学者数 90
  歩留まり率 100.0%
  定員充足率 100.0%

(「学部学生の入学状況」(東京大学)を元に作成)

なんじゃこりゃ!

特に文科一類と理科三類が、それぞれ大変なことになっています。
「東大に受かったんだから、当然、入学するでしょ」という前提が大学側にあることがわかりますね。定員ぴったりにしか合格を出していないのですから。……でも実際、受かった人は必ず入学しているんだもんなぁ。
逆に理科一類の5人がどこへ行かれたのか、興味ありますね。

マイスターは、世の中には変化がある方がいいと考える方ですから、「東大の歩留まり率を下げるような大学がどんどん出てくると面白いなと思います。

以上、マイスターでした。

1 個のコメント

  • いつも興味深く拝見しています。
    さて、この件ですが、慶應などの医学部への流れ、一般人の腕試しと聞いたことがあります。不確かですが・・・ 前期後期が始まったとき、京大の理学部に流れたことも話題になりましたね。