社会情勢が、大学入試問題に与える影響

マイスターです。

興味深いタイトルのニュースがあるなぁ……と思ってよく見てみたら。

【教育関連ニュース】—————————————–

■「今年の大学入試、五輪問題がヤマ 専門家予測」(人民日報)
http://www.asahi.com/international/jinmin/TKY200705070151.html
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ある大学入試関係者はこのほど、昨年の入試問題の分析を元に、今年の入試問題では五輪関係の問題が増え、点数にして約30点分に上るとの予測を発表した。「北京青年報」が伝えた。

現在、高校3年生が受けている模試では、各教科ともに五輪に関係ある内容が登場する。北京101中学の陸雲泉校長は「北京五輪は3つのテーマを体現する。文化的五輪、科学的五輪、エコロジー五輪だ。教員も担当科目の中で五輪関連の内容を取り上げている」と話す。具体的には「文化的五輪については、国語、歴史、地理、政治、外国語などの科目で取り上げる。科学的五輪とエコ五輪については、化学、生物、物理、数学で取り上げる」という。ある専門家の指摘によると、その他の学科で五輪関連の内容を取り上げる場合は、考査内容ではなくて、問題の背景内容となるという。

(上記記事より)

……というわけで、これは中国のニュースでした。

何点のうちの30点分なのかはわかりませんが、それでも30点というのは、小さくない点数なんだと思います。受験生がオリンピック関連の知識を身につけようとするのに十分な数字でしょう。
社会の動きが大学入試問題の内容に影響を及ぼすことって、日本でもありますよね。

上記のニュースを見て、思い出した本があります。

予備校が教育を救う

↑こちらは河合塾の方が書かれた本ですが、この中で「日本、中国、韓国それぞれの大学入試統一試験を、それぞれの国の生徒に解かせてみる」という試みが紹介されています。
韓国の「大学修学能力試験」、中国の「全国統一考試」、そして日本の大学入試センター試験です。

これが、なかなか興味深いです。

まず、問題の「意図」が明らかに違う。

韓国の入試問題は、マイスターが見るとかなり「実用的」な内容で、バリエーション豊かです。
例えば、ビジネスマンがパワーポイントで作るような図が出てきたりします。会社の事業がなぜ失敗したかを説明している図解モデルを読み解かせ、それについて回答するという内容です。
また、国語にもリスニングがあります。本で紹介されていたのは、学級委員に当選した二人の演説を聞き比べ、それぞれの特徴はどういう点かと問う問題でした。面白いですよね。英語でも、韓国の入試では、グラフを読み解くような問題があって、日本とは全然違います。

中国はと言うと、国の政治的方針と関係のありそうな話題が結構登場します。
例えば「社会」の選択問題では、
「アメリカでは人権問題が存在する」
「アメリカは国際的な役割の中で強権的な政治を推進している」
といった選択肢が「正解」とされている問題がありました。

また、中国の英語問題は日本と同じく長文読解重視らしいのですが、シリアスな内容の文章はなく、「不思議とユーモラスなものが多い」のだそうです。
その原因についての「深読み」としてこの本では、共産党独裁の思想統制の中では下手に思想や社会に関する問題を出せないから、当たり障りのない笑えるような内容のものを出すのではないか、といった意見が紹介されています。
なるほど言われてみると、そういう可能性もありそうです。

各国の試験を受け比べた生徒達の感想も紹介されているのですが、日韓の試験を受けた中国の生徒達の感想として、

「文化の背景とイデオロギーが異なるためか、中国の生徒にはふさわしくない」

という意見がありました。
うーん、中国では大学入試って、そういうものなんですね……。

……といった背景も考えると、今年の中国の大学入試に、北京五輪の話題が出まくる可能性は確かに高そうです。
国家の威信をかけて進めている一大プロジェクト。中国的には、こりゃあ入試に出さない手はありません。

こんな感じで、客観的に分析してみると結構面白い、大学入試問題。
世界各国の子供の学力ランキングはよく目にしますが、世界各国の大学入試問題の比較も見てみたいですね。
特に国を挙げての統一試験の問題には、単純に「学力」の一言ではまとめられないその国の政治事情や教育制度、教育方針、社会の仕組みなどなど、様々なものが反映されているはずです。分析のしがいもありそうです。

今度海外に行く機会があったら、とりあえずその国の大学入試参考書でも買ってこようかな、と思ったマイスターでした。