読み書きができない大学生

マイスターです。

4月24日に、実に43年ぶりという全国一斉学力テストが行われました。
その問題文を、↓こちらの記事から閲覧することができます。

■「一斉テスト簡単すぎ?『学力低下計れぬ』」(SankeiWEB)
http://www.sankei.co.jp/kyouiku/gakko/070424/gkk070424001.htm

文科省によれば「学力の土台・基盤となる力に絞って出題した」とのこと。マイスターも、ふむふむと問題を拝見しました。

上記の記事では、数学の難易度設定についていくつかの意見が紹介されています。やはり学力テストで関係者が気にしているのは、算数・数学なのでしょうか。PISA(OECD生徒の学習到達度調査)の結果についても、理数系の力がどうなったかが、しばしば議論に上ります。

一方で最近問題になっているのが、日本人の日本語力低下。特に、「まともな文章が書けない」若者が増えていることが指摘されています。
ですのでマイスターは、上記の一斉学力テストの問題の中でも、「国語」の問題に関心を持ちました。
これ、大学生は解けるのかな……と。

【教育関連ニュース】—————————————–

■「【大丈夫か日本語・上】大学なのに…中学生レベル6割!?」(SankeiWEB)
http://www.sankei.co.jp/kyouiku/gakko/070430/gkk070430000.htm
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「ついに、ここまできたか…」

九州地方の私立短大に勤める講師はそう言って、しばし言葉を失った。“日本語が通じない現実”に直面したのは昨年秋のことだった。

「ほかの人に比べると話し好きです」「思いやりがある方です」…このような簡単な文章を記した紙を学生に渡し、イエスかノーで答えてもらった。外向性や協調性などを診断する性格検査だ。

「質問を理解したうえで答えないと正確な結果が出ないので、漢字に読み仮名をふり、分からない言葉は質問するように伝えた」と講師。

間もなく20人ほどの学生のうち、数人が手を挙げた。

「『怠惰』って何」

「『まごまごする』ってどういう状態?」

想定内の質問もあったが、就職を控えた女子学生が発した言葉には耳を疑った。「骨が折れる仕事は嫌です」という文章を指さし、「『骨折する仕事』が嫌なのは当たり前。違う意味があると思ったので…」と首を傾(かし)げたのだ。

「全員の前で、それぞれの意味を伝えたが、多くの学生が説明に聞き入っていた。手を挙げたのは数人でも、実際分からない人はもっといたでしょう」と、この講師は推測する。

(上記記事より)

冗談のようなこの状況。記事中の講師の方ではありませんが、「ついにここまできたか」という感じです。

マイスターも大学の窓口にいたときには、学生に各種の書類を書いてもらう機会がありました。「日本語がおかしいなぁ」と思うことも多かったのですが、しかし、まさかこれほどとは。
記事では他にも、

英文解釈の講義で学生に「often」の意味を調べさせても、「しばしば」はもちろん、「頻繁に」といった訳語が理解できない。「『よく~する』ではどうか、と聞いても、『よく』は『good』の意味としてしか認識していない学生すらいる

(上記記事より)

……という大学教員の方の話が紹介されています。
英語の授業をする際には、国語の辞書も持ってこさせないといけないかもしれません。

「まともな文章が書けない」だけではなく、「まともに文章が読めない」ほどなのですね。
以前、「分数ができない大学生」という本が話題になりましたが、「読み書きができない大学生」という本も書けそうです。
ここまで来ると、「学力低下」という言葉ではもはや生ぬるく、「生活に支障が出る」レベルなのではないかと思います。大学入試がどうとかいった問題以前に、義務教育のあり方が心配になります。「読み、書き、そろばん」ができなくても、大学入学まで来られてしまうのですね。

(過去の関連記事)
・京大が入試科目を変更 工学部も国語必須に(2007年03月26日)
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50300883.html

京都大学では工学部の入試でも国語をやることになっていますが、この動き、他の大学にも拡がるのかも知れませんね……。「基礎国語」みたいに、義務教育程度の国語を完璧に使えるかどうかを問う問題を作って全員に受けさせる、とか。

ただこれは、もう入試の工夫だけでは解決しないかもしれませんね。

「7・5・3」という言葉をご存じでしょうか。
授業の内容を理解している子供は、小学校で7割、中学で5割、高校で3割しかいないという実態を表した言葉です。逆に言えば、授業についていけない生徒の割合が、小学校の時点で既に3割、中学で5割、高校ではなんと7割に達するということですね。
これは、初等中等教育の教員の方なら、よくご存じの言葉だと思います。

大学の教育は「この先」にあるわけで、そう考えてみると、中学レベルの内容が理解できてなくても不思議じゃないのかもしれません。
大学改革の中で、入試の改革や高大連携など様々な取り組みが行われていますが、「7・5・3」のような状況があることを考えると、そう簡単には問題は解決しないような気がしてしまいます。

上記の記事でも書きましたが、大学でも、日本語を正しく読み書きできるような授業をやった方が良いのかも知れません。大学側が「高校までの教育は何をしていたんだ」と初等中等の責任を指摘するのは簡単なのですが、入学した以上はもうその大学の学生です。大学はどうにかして、正しくコミュニケーションがとれ、レポートが書ける学生として送り出さないといけません。
それまでの「しわ寄せ」が大学に来ているんじゃないか、という気もします。

ただ、これまで日本の教育は「いかに良い大学に入るか」をゴールに設定して、そこに向かって中等、初等教育を位置づけていたような感もありました。大学が「全入」になり、学力目標としての大学入試の役割が崩れてきた今、こうなるのはある意味、必然だったのかもしれません。
教育システム全体を見直していかないといけません。

最後に、数字をご紹介します。

独立行政法人メディア教育開発センターの小野博教授(コミュニケーション科学)が平成16年、33大学・短大の学生約1万3000人の日本語基礎力を調べたところ、国立大生の6%、私立大生の20%、短大生の35%が「中学生レベル」と判定された。昨年度の同様の調査では、中学生レベルの学生が60%を占める私立大学も現れた。

今年度、センターが開発した日本語基礎力を調べるプレースメントテストを利用する大学は57大学3万2000人(見込み)にのぼる。3年前の4倍を超す勢いだ。

小野教授は「『(大学)全入時代』が到来し、外国人留学生と同等か、それ以下の日本語力しかない学生が出てきた。言葉の意味を学生に確認しながらでないと講義が進められない大学も少なくない。テスト利用校の急増ぶりに、大学側の危機感が表れている」と語った。

(「【大丈夫か日本語・上】大学なのに…中学生レベル6割!?」(SankeiWEB)
より)

この状況の中でどう対策の手を打つか。大学によっては、そのあたりに生き残りがかかっているところもありそうです。
アメリカのコミュニティ・カレッジのように、「読み、書き、そろばん」ができていないという状態から大学の教養教育修了まで持っていき、場合に応じてその後は他の4年制大学に編入させる、なんて教育機関が出てきたりするのかも知れませんね。

以上、マイスターでした。