用事があって、現在アメリカにいるマイスターです。
この事件のことは、日本を発つ直前に知りました。
最初は報道での混乱も見られたようですが、徐々に情報が整理されてきているようです。
【教育関連ニュース】—————————————–
■「バージニア工科大で発砲、32人が死亡 容疑者は自殺」(SankeiWEB)
http://www.sankei.co.jp/kokusai/usa/070417/usa070417001.htm
■「容疑者は韓国人寮生 バージニア工科大の銃乱射」(CNN)
http://www.cnn.co.jp/usa/CNN200704170029.html
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同一犯による銃器を使った大量殺人としてはアメリカでも史上最悪の被害者数であるとのことですが、それがよりによって学校で起きてしまいました。
学校での乱射事件というと、マイケル・ムーア監督の映画でも取り上げられた「コロンバイン高校」が知られていますが、今回は人数で言えば、それをさらに上回る事態になってしまったのです。
犠牲になった学生、および教職員の方々のご冥福を心よりお祈り申し上げます。
犯人の動機については、まだはっきりとはしていませんが、犯行は2段階で行われたことがわかっています。
最初、寮棟の中で2人が銃撃される事件が発生。その2時間後、800メートル離れたところにある研究棟で授業中の学生および教員達が襲撃され、さらに30人が犠牲になりました。2つの犯行は同一人物によって行われたもので、韓国籍を持つ学生が容疑者として報道されています。この容疑者の学生も、警察が到着する前に教室内で自殺していたとのことです。
↓こちらのAsahi.comの記事の末尾に、事件当日の経過がまとめられています。
■「女学生並ばせ発砲 窓から次々飛び降り 米大学乱射事件」(Asahi.com)
http://www.asahi.com/international/update/0417/TKY200704170126.html
最初の銃撃事件が起きた際、大学が学生達に警告のメールを送信するまでに2時間。大学側は特にキャンパス閉鎖などの措置もとらず、授業も通常通り実施していたとのことです。多くの学生達がそのメールをチェックする頃には、第二の事件が起きていたのではないかと思います。
最初の事件が起きてからの間に、大学当局が適切な対応を取っていればそれ以上の被害は食い止められたのではないか、という批判が、あちこちから寄せられているようです。
■「『なぜ警告なかった』寄り添う親たちが批判」(Asahi.com)
http://www.asahi.com/international/update/0417/TKY200704170350.html
各メディアの報道を見る限り、最初の事件が起きた際、どうも大学側は「犯人は大学構外に逃げた」と判断してしまったようです。
犯人はまだキャンパス内にとどまっていて、第二の事件を起こすかも知れない……そんな想像ができなかったのかもしれません。
確かに今回の犯行の内容と規模は、通常は想定しづらい範囲かも知れません。しかしキャンパス内で起きた銃撃時間の犯人が捕まっていないのに授業をそのまま続けたというのは、いくら銃が普通に出回っている社会だとはいえ、判断が甘すぎたのではないか……そんな思いも浮かんでしまいます。
おそらく世界中の方々が情報を求めているのでしょう、バージニア工科大学の公式webサイトはずっとダウンしています。
しかし、同大学の大学新聞が開設しているwebサイトは閲覧できます。事件の情報が更新されているようで、キャンパスの写真や映像もアップされています。
■「Collegiate Times」(Educational Media Company at Virginia Tech)
http://collegemedia.com/
事件からしばらくが経ち、悲しみが全米に広がっています。
■「米大学銃乱射で追悼集会 大統領夫妻も出席」(CNN)
http://www.cnn.co.jp/usa/CNN200704180006.html
■「米バージニア州の大学で銃乱射事件、32人が死亡、各地で祈りが呼びかけられる」(Christian Today)
http://www.christiantoday.co.jp/international-news-949.html
このように、各地で追悼集会などが行われているようです。
アメリカ国内に限らず、世界中の方々が、胸を痛めていることと思われます。
今回、韓国人の学生が容疑者として報道されているということで、韓国政府や在米韓国人の方々にも大きな不安が広がっています。アジア留学生、特に韓国人達に対する偏見や排斥につながらないか、という懸念です。
■「『銃乱射犯は韓国人』で衝撃、盧大統領が哀悼の意」(YONHAPNEWS)
http://japanese.yna.co.kr/service/article_view.asp?News_id=2007041800030088
■「宋旻淳長官、ライス国務長官に弔問書簡を送付」(YONHAPNEWS)
http://japanese.yna.co.kr/service/article_view.asp?News_id=2007041800100088
■「アジア人留学生に動揺広がる=偏見を懸念、韓国人は口重く-米大学乱射事件」(時事ドットコム)
http://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2007041800285
■「韓国政府が緊急会議 在米韓国人社会への影響を懸念」(Asahi.com)
http://www.asahi.com/international/update/0418/TKY200704180190.html
また事件後、全米の学校で非難騒ぎが相次いでいるようです。衝撃的な事件を受け、一時的にどこも過敏になっているのかも知れません。そりゃそうです。
■「全米の学校で避難騒ぎ相次ぐ 乱射事件で過敏に」(Asahi.com)
http://www.asahi.com/international/update/0418/JJT200704180005.html
事件のショックが落ち着いてきたら、各地で、安全管理と危機対応のさらなる改善が検討されるでしょう。
在米韓国人の排斥につながったりしないよう、然るべき立場の方がメッセージを発信することも必要になります。
また大学では、学生が孤立しないような支援体制を敷くなど、抜本的な対策についても議論がなされることと思います。
今回の事件は、様々なところに影響を与えるように思われます。
こういった事件がどうして大学で起きてしまったのか、どうすればそれを防げたのか。皆で考えてみるべきかもしれません。
以上、マイスターでした。
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※今回の事件では、身を挺して学生達を守り亡くなられた教員の方もおられたようです。
■「身を盾に学生救う ホロコースト生き残りの教授、犠牲に」(Asahi.com)
http://www.asahi.com/international/update/0418/TKY200704170381.html
六十数年前、ユダヤ人大量殺害を生き延びた老教授が、無分別な銃火の前に身を投げ、教え子たちを救った――バージニア工科大学での銃乱射事件で16日亡くなった犠牲者の一人、イスラエル人のリビウ・リブレスク教授(76)は、第2次大戦中のホロコーストの生き残りだった。
AP通信によると、リブレスク教授は、教室の中に容疑者が入ろうとした時に、撃たれながらも手でドアを押さえ続け、学生たちを避難させた。同通信の電話インタビューに応じたテルアビブ在住の同教授の息子、ジョーさんによると、助かった複数の学生たちが、教授の妻マルレナさんあてに、その状況を電子メールで伝えてきたという。
(上記記事より)
記事によれば、16日は奇しくもワルシャワ・ゲットー蜂起を記念してイスラエルが定めた「ホロコースト追憶の日」だったとのことです。
助かった命が次の世代を守る。突き詰めて考えていくと、「教育」という営みの本質に通じるところがあるように感じます。同じ教育に携わる人間として、教授のご冥福を心よりお祈りいたします。