韓国の大学に関する最近のニュース

マイスターです。

今日は韓国のニュースで興味深いものがいくつかありましたのでご紹介します。

【教育関連ニュース】—————————————–

■「【社説】国立大だけでなく私立大も統廃合を推進すべき」(朝鮮日報)
http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2007/03/03/20070303000020.html
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まずはこちら。日本のことかと見まがうようなタイトルですが、韓国紙の社説です。内容も、なんだか他人事と思えない感じです。

今や大学にとって統廃合と構造調整は避けられない問題だ。大学設立許可要件が緩和され、1996年に134校だった4年制大学の数は2005年現在、173校に増えている。教育大・産業大・専門大(短大)を合わせると、大学数は360校にもなる。

一方少子化のため、大学進学者の数は現在の60万人から2021年には42万人にまで減少すると見られる。同じ問題を抱える日本では、学生を確保できず破たんする大学も出てきている。韓国でも2005年に、4年制大学202校のうち入学者数が定員の半分にも満たなかった大学が11校もあった。

スイスの国際経営開発研究所(IMD)が行った「大学教育が社会的・経済的な需要を満たしているか」を問う調査で、韓国は対象国60ケ国のうち50番目となる低い評価を受けた。
(上記記事より)

増える大学数と、じわじわ進む少子化。大学統廃合への動きは免れない……。このあたり、日本と同じ問題を抱えているのですね。このあたりの対策では、韓国は日本の動きを参考にしてたりするのでしょう、きっと。

記事の続きでは、↓こんな指摘もされています。

大学教育の質を高めるには、統廃合により教授1人当たりの学生数を減らすことから始めなければならない。中学校では教員1人当たりの生徒数が19人で、高校では15人だ。ところが大学では非常勤講師を合わせても1人当たり27人という計算になる。

また大学ごとの役割分担も重要だ。最先端の研究に集中する研究大学と、産業社会に必要な技術人材を育てる職業大学は区別されなければならない。韓国では、 15以上の分野にわたって博士学位を授与している大学が、全体の19%も占めている。一方この割合は、日本では4%、米国は10%に過ぎない。それだけ実力のないうわべだけの博士を量産しているということになる。

私立大学の実情は国立大学よりもっと深刻だ。私立大学こそ、積極的に統廃合を推進していくべきだろう。 (上記記事より)

日本では、大学の統廃合は経営問題と結びつけて語られることが多いです。「総合大学が単科大学を吸収して学部が一個増えたから、受験生を集めやすくなる」とか。でも、「統廃合により教授1人当たりの学生数を減らす」という視点からの意見は、そう言えばあまり耳にしないように思います。むむ。
「大学の役割分担」についても、けっこう考えさせられます。研究大学、職業大学のような話は我が国でもちょっと前から出ていますが、博士学位の授与という点から論じられることはあまりないような。
うーむ、勉強になります。

【教育関連ニュース】—————————————–

■「大学新入生20%『漢字で自分の名前書けない』」(中央日報)
http://japanese.joins.com/article/article.php?aid=85423&servcode=400&sectcode=410
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今年、成均館大に入学した新入生の一部を対象に漢字の実力を調査したところ、20%ほどが自分の名前を漢字で書くことができないことがわかった。

同大学イ・ミョンハク教育学部長(漢文教育科)は12日、「作文科目を受講する2007年度新入生384人を対象に漢字の能力を試した結果、このうちの78人は自分の名前を書くことができないか、間違って書いた」と明らかにした。学生たちは「恩」を「思」と書いたり、姓である「宋」を「字」と書いたりした。両親の名前を漢字で書けなかった人もそれぞれ83%、77%にもなった。やさしい語彙を漢字で書く問題では成績がもっと悪かった。「講義」をまともに書いた学生は5人にすぎなかった。新入生を正しく書けなかった学生も71%にのぼった。「経済」は96%、「百科事典」は98%の学生が書けなかった。漢字を読む問題も同じだった。「折衷」をきちんと読んだ学生は3人にすぎず「抱負」は27人、「栄誉」は16人のみ正解だった 。

同学長は「この程度の実力であるということは、専攻科目を勉強する際に概念の把握が難しい場合があり、修学能力が懸念される」と話している。
(上記記事より)

続いてはこちら。

韓国の場合、漢字からハングル使用へという流れがあります。それについて「多くの人間が、過去の文献を読めなくなる日がくるのではないか」なんて危惧があると聞きます。上記の記事の内容は、そんな動きが着実に進行していることを感じさせます。
漢字でないと把握が難しい概念もあるということですから、問題は古典研究に限らないのでしょう。なかなか深刻な問題です。

最後は、韓国独特の(?)問題を報じる社説をご紹介。

【教育関連ニュース】—————————————–

■「【社説】官僚出身に占領された大学」(中央日報)
http://japanese.joins.com/article/article.php?aid=85179&servcode=100&sectcode=110
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全国54カ国。公立大の現職・前職総長のうち約14%が長・次官など高位官僚出身だという。教授出身で官職を経て総長になった人まで挙げればもっと多い。キム・グァンウンソウル大名誉教授が調査した結果だ。世界でも珍しい現象である。大学業務については全く知らない官僚出身たちが大学の本質である教育・研究発展のために何ができるか疑わしい。大学の官僚化がこれほどまでに深刻な水準なら、果たして我が大学がまともに発展することができるか。

高位官僚たちの大学占領現象は私立大でも同じだ。政府が大学を統制しすぎたため、大学は官僚出身を通じて政府とつながり、外からの風を阻もうとするのだ。多くの規制を避けて、研究費などを受けることに有利だと期待する。大学が探すこともあるが、高位官僚たちもこうした点を挙げて近付き、該当の部処たちは支援する。妹と仲がよければ妹の夫とも仲がいいというやり方だ。途方もない規制が非正常的な現象を拡散させるのだ。

大学が官僚化されれば弊害が大きい。官僚出身総長の中には大学構成員たちの機嫌を伺いながら席の保全にのみ汲々としていたり、政・官界に出る機会があれば在任途中でもやめる人が少なくない。総長を出世用の足場程度だと思うからだ。それで一部の教授は政界に顔を広げてから総長に就こうとする現象も起こる。こうしたことが頻繁ならば一生、大学や学問の発展に力を尽くしてきた教授たちの力が抜けて、大学競争力が弱くなることは当然である。
(上記記事より)

行政関係者が大学トップを兼ねる仕組みの国もあるようですが、これはどうやら違いますね。いわゆる「天下り」が、韓国では大学のトップポストで行われているようです。
公立大学はもちろん、私立大学でもその動きが見られるとのことですから、これもけっこう根が深い問題のようですね。さぞ、教職員の方々はやる気をそがれていることでしょう。
こういう課題は、おそらくそう簡単には解決しません。ただ、韓国も日本と同様、大学の競争力向上に取り組んでいますから、それを阻害する要因であるなら、どこかで誰かが断ち切らなければならないのでしょう。
国のトップが解決に向けて動かないといけない類の問題であるように思いますが、さて今後どのような展開を見せるでしょうか。

以上、韓国についてのあれこれでした。

毎回同じことを書いている気がしますが、韓国の高等教育に関するニュースは、他人事と思えない内容であることが多いです。お互いに学ぶ点がたくさんありそうです。
また、興味深い報道を見つけたらご紹介します。

マイスターでした。

1 個のコメント

  • はじめまして。
    IMDの大学教育の経済性の調査ですが日本は58位みたいですね。
    私も偉くなったら自分の総合大学ととある単科大学の統合を検討してみたいという密かな野望を持っています(笑)