アメリカの大学生 ネットとのつきあい方

マイスターです。

日本もそうだと思うのですが、アメリカの大学でも、学生のネット活用に関してあれこれと悩んでいるみたいです。

【教育関連ニュース】—————————————–

■「ウィキペディア頼み、誤答続々 米大学が試験で引用禁止」(Asahi.com)
http://www.asahi.com/digital/internet/TKY200702220331.html
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米バーモント州にある名門ミドルベリー大学の史学部が、オンラインで一定の利用者が書き込んだり修正したりできる百科事典「ウィキペディア」を学生がテストやリポートで引用することを認めない措置を1月に決めた。日本史の講義をもつ同大教授がテストでの共通の間違いをたどったところ、ウィキペディア(英語版)の「島原の乱」(1637~38)をめぐる記述にたどり着いたことが措置導入の一つのきっかけになった。
(略)
同大史学部では1月、「学生は自らの提供する情報の正確さに責任をもつべきで、ウィキペディアや同様の情報源を誤りの言い逃れにできない」として引用禁止を通知した。ドン・ワイアット学部長によると、「同様の情報源」とはウェブ上にあって多数の人間が編集することができ、記述の正確さが担保できない情報源を指すという。

学生の多くは納得したが、「教員が知識を限定しようとしている」との不満も出た。他学部には広まっていないという。
(上記記事より)

史学部の学生となると、レポートや論文を書く際にあたるべき史料や文献も相当な量でしょう。そんなとき、わりとマニアックな項目でも誰かが説明してくれている「wikipedia」は便利なんだろうと思います。

ただ、学生や研究者に限らず、普段から何らかの知的生産活動に携わっている方なら、「wikipediaの情報はあくまでも参考程度。学術的な研究の引用には不適切」ということは常識です。

ウィキペディアの創始者のジミー・ウェルズさん(40)は「慈善的に人間の知識を集める事業であり、ブリタニカと同様以上の質をめざして努力している。ただ、百科事典の引用は学術研究の文書には適切でないと言い続けてきた」と話す。
(上記記事より)

……と、wikipediaの関係者も述べています。

にも関わらず学生がレポートでwikipediaを引用するということは、wikipediaのこうした性格についての理解が不足しているか、あるいは不適切だということは承知の上で、ラクをするために引用しているかのどちらかなのかなと思います。

学部を挙げての禁止措置となると、少々大胆な方策であるようにも思えますが、歴史を学ぶ学部としてはやむをえないのかもしれません。
たぶん、禁止を検討しなければならないくらい、実際に引用している学生も多いのでしょう。

日本でも、こうした論議はそこらじゅうで行われていることと思います。
そろそろこのミドルベリー大学史学部のように、組織として方針を立てるところも出てくるかもしれませんね。

※ちなみに欧米の大学生は日本の学生に比べて一所懸命勉強しているイメージがあります。実際にそうなのかも知れませんが、その一方で、レポートや論文を販売するオンラインビジネスが盛況だったり、逆に論文のコピーペースト箇所を抽出してくれるサービスが大学向けに提供されていたりするのもまた事実です。

(過去の関連記事)
・レポートの「アウトソーシング」をする学生、それを見破ろうとする大学
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50209479.html

学生のウェブ活用に関するニュース、もう一件ご紹介します。

【教育関連ニュース】—————————————–

■「米レコード業界、違法コピー対策で大学に照準」(ITmedia NEWS)
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0702/22/news078.html
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大学のコンピュータネットワークを介して楽曲を不正にダウンロードしているとして訴えられた学生たちは、レコード業界による苦情申し立てを受け、インターネット接続を取り上げられたり、あるいは停学処分を受ける可能性が高まっている。

米国の音楽業界は全国規模で違法コピーの取り締まりを強化しており、今学年度は大学に対し、著作権侵害の申し立てを昨年度よりも数千件多く行っている。なかには、オンラインでMP3ファイルを1つ共有しただけで申し立てを受けた学生もいる。

オハイオ大学やパデュー大学など一部の大学は昨秋以降、個々の学生に対する苦情申し立てを既に1000件以上受けている。申し立ての対象となった学生に科される処分は、電子メールでの警告から1学期間の停学処分まで多岐にわたる。
(略)
全米レコード協会(RIAA)はAssociated Pressの依頼に応じ、今年度これまでに著作権侵害の苦情申し立てを送った件数の最も多い上位25大学を明らかにした。RIAAは米国の大手音楽レーベルを代表する業界団体だ。

RIAAは以前から各大学に対し、もっと積極的な対策を講じるよう要請していた。RIAAによると、最近ではソフトウェアツールが改良され、構内での違法なファイル共有を追跡しやすくなっている。

「われわれはそうした技術を活用し、各大学に構内の問題を認識してもらえるよう努めている。大学は学生に対し、合法な生活を送るためのアドバイスを与えるべきだ」とRIAAのケアリー・シャーマン会長は語っている。
(上記記事より)

これまた、日本にいる私たちにもイメージしやすい話題です。

日本でも、「Winny」等によるファイルの不正なダウンロードが問題になっています。ほとんどの大学ではこうしたソフトによる特定のデータ通信をシャットアウトする措置をとっているかと思いますが、それでもこういったソフトを不正な目的で利用しようとする学生はいるでしょう。

しかし、JASRACが不正な通信をした学生のリストを大学に提出している、なんて話はさすがにまだ聞いたことがありません。日本ではあまりここまでのことにはならなさそうです。ただ、Winnyの不正な利用は途絶える気配がありませんので、そのうち大学が現状よりもう一歩踏み込んだ、何らかの措置をとることも要求されるようになるかもしれません。
(もっとも日本の場合、キャンパスというよりは自宅でこうしたソフトを使っている人が多いような印象がありますが…)

というわけで本日は、ネットで見かけたアメリカの話題をご紹介しました。
両方とも特に目新しい話題ではありませんが、逆に言うと「なかなかいつまでも解決する気配が感じられない話題」という言い方もできるように思います。
抜本的な解決法はあるのか。ないとしたら、どのようなスタンスでこうした問題と付き合っていくべきなのか。
大学の悩みは、しばらくは尽きることがなさそうです。

以上、マイスターでした。