マイスターです。
今日は、韓国の話題をご紹介します。
【教育関連ニュース】—————————————–
■「学力の差激しい理工系、大学が解決に乗り出す」(東亜日報)
http://japan.donga.com/srv/service.php3?bicode=040000&biid=2007021453418
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「専攻の授業を聞きながらただ瞬きだけをしている2年生たちに、数学塾にでも通って基礎を勉強してきなさいといいたいのを、我慢しているほどです」
D大学建築学科のある教授は、「微分や積分など、高校課程の数学を学んでいない学生が半分を超え、大学水準の講義をろくに理解していない」とし、「このような学生たちを、1つの講義室で教えるわけにはいかない」と語った。
S大学化学科のある教授は、「化学オリンピアードでの入賞者がある一方、基本的な公式すら分からない学生もいて、講義をしていると、自分が教授なのか中高校の教師なのかわからなくなるほどだ」と述べた。
選択科目中心の第7回教育過程で、数学や化学を選択していない高校生たちが大学の自然科学系や理工系の学部に入学し、多くの大学で学力の差が激しく頭を悩ませていた。
(上記記事より)
これまでも何度か韓国の話題をご紹介してきましたが、日本にいる私たちにとっても、参考になる事柄が多いように思います。
(過去の関連記事)
・隣の教育改革はよく見える?
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50209916.html
・韓流受験戦争の後ろにあるもの ~韓国の大学事情~
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50102792.html
・米国で理工系博士取得の韓国人、70%以上が帰国に否定的
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50275304.html
ちょっと韓国のことをおさらいしてみましょう。
大学・短大への進学率が50%を超えたということで「学力が低下した!」と大騒ぎしている日本ですが、韓国は大学進学率81.3%です。超・ユニバーサルアクセス社会です。
しかも、1990年におよそ30%だった進学率が、2004年に80%オーバーという、すさまじい上昇の仕方です。
(※数字は『カレッジマネジメント』131号による)
ただこの数字の裏には、日本と異なる事情、背景があります。
韓国では、「高等学校平準化政策」という方針が採られております。これは「すべての普通高校の入学者を抽選で振り分ける」というものです。国公私立すべての学校(普通科のみ)を学区に分け、共通試験の合格者を学区内の学校に抽選で機械的に配分するというのが「平準化政策」の内容です。
70年代にこの平準化政策を導入した結果、それまで75%だった高校進学率が91%に跳ね上がりました。すると当然、高校卒業者数も増えます。1975年から1985年の間に、高校卒業者数は2.4倍に急上昇しました。そこで、受け皿となる大学を大あわてで増やした結果、今ではこんなに進学率が高くなったというわけです。
さて、冒頭の記事に戻ります。
一見、日本と同じように学力低下に苦しんでいるようですが、どちらかというと韓国の場合は学生達の「学力格差」が問題にされているようですね。
同じ大学にいながらも、科目によって大学生レベルの学力を持つ人と、中高生レベルの人とが混在しているとのこと。
このようになる理由はなんなのでしょうね。平準化政策に加え、↓このようなニュースも見つけたのですが、2008年度入試からの話題なので、冒頭のニュースとはあまり関係がなさそうですし……。
■(韓国)「2008学年度、大学入学試験学生簿中心」
http://contents.innolife.net/news/list.php?ac_id=2&ai…
■(韓国)学生簿が論述の2倍以上反映 ソウル大06年度定期募集
http://japanese.donga.com/srv/service.php3?biid=2006091855508
どなたか、詳しい方がいらっしゃいましたら、教えてください。
ともあれ、学生間の「学力格差」に悩む韓国の大学。
では、それに対してどのような対策を立てているのでしょうか。
…あげくのはてには優劣クラス作りに乗り出したところもある。
04学年度からレベルごとにクラスを分けて数学を教えていたソウル大学が、今年から化学科目にも優劣クラスを作って、チューター(個人レッスン)制を導入することにし、他の大学でも受講資格試験や補充授業など、学力格差の解消対策を立てた。
ソウル大学自然学部は今年から、化学や物理、生物の講義を高級クラスや一般クラス、基礎クラスに分けることにした。この講義を受講したい新入生は皆、学力評価試験を受けなければならない。高級クラスの学生は絶対評価、一般クラスの学生は相対評価で単位をもらう。基礎クラスの学生は合格、または不合格(SあるいはU)だけで評価される。
また、試験や国際大会での成績などを総合して、上位5%の学生は基礎教養科目を免除され、下位5%の学生は1学期に高校レベルの講義を受け、夏休みには基礎教養科目を受けるようにする方針だ。
ソウル大学工学部は1学期に数学や物理でA(=優)の単位以上をもらった3、4年生が、新入生に個人レッスンをするチューター制を実施することにした。新入生たちは数学や物理講座を聴いてみて自分の実力が落ちていると判断したら、個人レッスンを申し込むことができる。
西江(ソガン)大学理工学部も今年から試験や高校での内申成績を考慮し、数学実力の低い生徒たちを対象に1学期には微積分を、夏休みには大学の微積分を講義することにした。物理や化学、生物科目の実力の落ちる学生たちは1週間に1時間ずつさらに受講しなければならない。
崇実(スンシル)大学は、自然科学系列の新入生を対象に数学試験を行い、受験しなかった学生には専攻基礎数学科目の受講資格を与えない方針だ。
(「学力の差激しい理工系、大学が解決に乗り出す」(東亜日報)より)
トップのソウル大学でもこれです。全国トップクラスの学生がいたかと思うと、基本的なことすらわかっていない学生もいるという状況ですから、普通にやっても授業は成立しません。
そこで、習熟度別クラス、チューターの導入、補習授業の用意といった対策を採っているようです。というか採らざるを得ないのでしょう。
高級クラスの学生は絶対評価、一般クラスの学生は相対評価で単位をもらう。基礎クラスの学生は合格、または不合格(SあるいはU)だけで評価される。
自然科学系列の新入生を対象に数学試験を行い、受験しなかった学生には専攻基礎数学科目の受講資格を与えない方針だ。
などと、思い切った対策も採られています。
日本でも現在、国立を含む有力大学でAO入試の導入が進んでおります。
韓国のような状況になった場合の対策を、早めに考えておいた方が良いのかも知れません。
そのうち旧帝大クラスの大学でも、こういった風景が見られるようになるかも知れませんね。
というわけで、今日は韓国の話題をご紹介しました。
マイスターでした。
非常に興味深いブログですね。
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