「インドの頭脳流出…『目指すは東アジア』」

マイスターです。

中国もそうですが、ここ数年「インド」が注目されていますよね。
人口の多さはもちろんですが、中国や日本と違って人口ピラミッドのバランスもいいから今後しばらくは成長を続ける……なんて話も聞いたことがあります。
まさに、高度経済成長の可能性に満ちあふれた国、インド。

数学力と英語力を武器にして、大勢のインド人がシリコンバレーに進出したり、世界中のソフトウェアサービスの需要をインド国内の会社が担ったりしています。

「いやぁインド人の優秀さはすごいよ。シリコンバレーでのインド人達の活躍を観ていると、日本は出遅れたなーって思うよ」

……なんて会話が、IT業界などでは行われているのだと思います。

このように、「インドは今後、日本の強力な競争相手になるだろうな」とか、「インドと日本は良い協力関係を築いていかないとな」とか思っている人は少なくないはずです。でも……今のところそういった会話にはたいてい「グローバル市場では」という前置きが付いているようです。

しかし考えてみれば、いかにベンチャーを多数輩出し新しい雇用を生み出しているシリコンバレーといえども、インド人が大勢進出進出した結果、職を追われたり、より厳しい条件で競争しなければならなくなった方々はいるはずです。

同じことが日本でも起こらないとは限りませんよね。

【教育関連ニュース】—————————————–

■「インドの頭脳流出…『目指すは東アジア』」(朝鮮日報)
http://japanese.chosun.com/site/data/html_dir/2007/01/30/20070130000021.html
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「東を目指せ(Look East)」。すぐれた英語力と頭脳で米国シリコンバレーを掌握したインド人たちが、今では東アジアに集結している。インド南部の名門校、マドラス大学コンピューター学科を卒業したバルラムさん(36)は3年前から東京で働いている。ソニーの系列会社のソフトウェア研究員だ。「インドのシリコンバレー」と呼ばれるベンガルール(英語呼称:バンガロール)で10年働いたキャリアがある彼に、日本の会社は1億ウォン(約1290万円)の年俸を保障した。彼は「今後はインドもアジアで勝負するしかないので、早めに挑戦した」と話す。日本で暮らすインド人は、この5年間(2002‐06年)で10倍以上(2000人→2万1000人)増え、東京には「インド人街」やインド式教育が可能なインターナショナルスクールが2校もできた。
(略)
このようにインド人が韓国・日本・香港・シンガポール・オーストラリアといった東アジア・オセアニアに集まっているのは、インド政府の東方政策によるところが大きい。1991年にインド政府が経済開放を行い、「韓国や日本に学ぼう」と掲げたスローガンが、今やアジア市場に「追いつけ追い越せ」という意味に変わりつつある。
(略)
韓国のテヘラン路、中国の中関村、日本の秋葉原が「インド人たちのシリコンバレー」となる日もそう遠くはないかもしれない。
(上記記事より。強調部分はマイスターによる)

シリコンバレーを席巻しているインド人技術者達が、次なる活動の地として魅力を感じているのは東アジア、つまり日本、中国、韓国なのだそうです。全員が技術者というわけではないでしょうが、それでも日本で暮らすインド人が5年間で10倍以上になったと聞くと、
「インド人にとっての次のシリコンバレーが、東京なのかな」
なんて思います。

もっとも日本で働くとなると、現時点ではたいてい、日本語を話せることが条件になるでしょう。ですからインド人技術者の皆様が、アメリカに進出したときと同じように日本のソフトウェア産業を席巻するとはまだ思えません。
しかし逆に言えば、英語と技術力を持っていることが第一に問われる国際的な仕事では、インド人技術者が存在感を発揮してくる可能性があります。「より技術力が必要な仕事」「より国際コミュニケーション力が必要な仕事」というのは、つまり人件費の高い重要な仕事です。
外資系企業やグローバル企業の日本支社なんてところだと、インド人技術者の方が上流の仕事に就くかも知れません。

(ちなみにインドが誇るエリート校「インド工科大学」は、Timesの世界大学ランキング2006年度「technology」部門において、MIT、UCバークレーに次ぐ3位。2005年度も4位で、日本のトップ大学を上回る評価を得ています。
技術者、特にソフトウェア技術者の分野においては、インドは間違いなく世界トップクラス。日本の技術者も十分優秀だと思いますが、あなどれません)

最近では日本の技術者にも「英語力」「コミュニケーションスキル」が求められるようになってきています。工科系の大学でも、熱心に英語教育を行っているところが少なくないようです。

しかし日本の大学関係者達がイメージしているのはどちらかというと、「日本の技術者が中国や東南アジアの工場に行って指導をする」みたいな、日本が世界に打って出るようなストーリーなのかな、なんて思います。
「なんだかんだいっても、日本で仕事をしている限り英語は必要ないよな」とか、「シリコンバレーに進出しようとでもしないかぎり、外国人と一緒に働くことはないよ」とかくらいの意識でしょう(技術者教育に限らず、日本の大学で行われている英語教育全般が、そういう意識かもしれません)。

確かに今はそうなのですが、上述したように今後はインド人を始め、海外の技術者やビジネスマン達がもっと「日本で」仕事をするようになるかもしれません。
日本の大企業も、優秀な技術者を常に探しています。家電にしても自動車にしてもソフトウェアにしても、海外に生産拠点を持っていたり、海外市場で勝負していたりするのが普通です。英語に強くて優秀な技術者なら、リーダー候補として欲しいでしょう。
もはや「インド人が俺たちのライバルになったら大変だなぁ」ではなくて、「確実にライバルになるな」なのかもしれません。

そうなると、日本の大学での英語教育もさらにレベルアップする必要が出てきます。
今も各大学がんばってはいるのですが、例えば「英語がしゃべれて技術力も世界トップクラス」の技術者に対抗するには、まだ少々心許ないような気もします。
少なくともトップ技術者の輩出を謳うような大学では、そのうち「高学年の授業を全部英語でやる」くらいのことをしないといけなくなくなるのかも知れません。

ちなみに「インド人技術者達が日本の技術者のことをどのように評価しているか」というアンケート結果が↓こちらにあります。

■「アジア技術者が採点する日本技術者の実力(3)インド編/Tech総研」(リクルート)
http://next.rikunabi.com/tech/docs/ct_s03600.jsp?p=000528&__m=1

これを見ると、技術力には高い評価をくれているものの、「ビジネスコミュニケーション能力」はやはりかなり低いです。
インドに限らず、世界の技術者達と協働するくらいの評価を得られるようにしていきたいものですね。

以上、こんなことをインドの記事を読んで感じたマイスターでした。

3 件のコメント

  • はじめまして。
    転職前は15年ほど情報処理産業に従事していました。私のいた企業では10年以上前から中国やインドと仕事をするようになっていましたが、当時(今は知りませんが・・・)は中国からの納品物の出来があまりにも悪く、パートナーとしてインドが残っていきました。
    また、最近までいた企業ではミャンマーからの技術者もいたのですが、彼らはとても真面目だし勉強熱心です。元々英語はぺらぺらで、日本語もあっという間に覚えてしまいます。私が親しくしていた人は1年で日常会話には不自由せず、漢字まで覚えようとしていました。本当にうかうかしていたら日本の技術者は置いてけぼりです。マイスターさんが書いておられるように「日本人が行って指導して・・」という局面ばかりではなく、これからはパートナーとして、もしかしたらライバルとして一緒に働く場で英語を使えるようにしないとまずいと思う次第です。

  • tomoです。
    こんにちは
    九州の田舎の私大に勤務していますが
    学内でも インドの留学生やインドからの
    視察団を見かけます。
    マンガ「島耕作」でも
    中国からインドへ舞台が移りました
    注目せざるおえない存在になりつつあります
    下記、九州大学でインド中心のフォーラムが
    あるようです。
    興味がありますが、業務の為いけません
    参考まで
    http://imaq.kyushu-u.ac.jp/seminar/detail.php?SRN=116

  • はじめまして。私は現在アメリカの大学院で工学を勉強しております。私の学校でも沢山のインド人を見かけます。インド人の友達も何人かいます。皆さんそろって非常に優秀です。いったん日本の外に出てしまえば、日本人とかインド人とかの区別はなくなってしまいます。そこからは技術力とコミュニケーション力が唯一の評価基準になってきます。日本人の技術者も臆せず彼らと張り合えるようになって行かないといかんのかなと思います。